六百六十一生目 時裂
朱竜は地面に向かって炎を吐く。
その炎は地面にそって広がっていく。
地面に近いのでドラーグとリバイアサンは難なく浮く。
地上組の兵も地形や物理障壁の裏に隠れることでやりすごせる。
何せ炎は自然に地形へ溶け込むのだ。
まるで別の相手を狙っているかのように。
「フンッ」
そして多くの想像は当たっていた。
朱竜がその太くなった腕を1つ振るう。
すると各地で赤熱した大地の岩がトゲのように飛び出した!
「ガッ!?」
「パッ……」
[機体損害軽微]
「「ギャアァーッ!!」」
各地から悲鳴が聞こえ背筋がゾッと冷たく走る。
ドラーグは身体を大きくふっとばされたさい翼を1枚ふっ飛ばされ錐揉みしながら落ちて……
すぐに復活する。
部位をふっ飛ばされると私の魔法では近づかないとちゃんと治療できない。
ドラーグは自身の行動力を浪費してでも翼再生を優先したらしい。
すぐにコロロが回復薬をかけて生命力と行動力を癒やす。
彼らが使ったのは希少な濃度5割以上の高級品。
コロロはこういう時使うものを間違ったりためらったりはしない。
リバイアサンは体や腕が何箇所か打ち抜かれたものの平然と陸に立つ。
欠損部位はすぐに戻った。
生命力は削れたが致命打を受けなかったらしい。
悲鳴を上げたの突如足元がせり上がりしかも赤熱していた面々だ。
ある程度岩の発生位置はランダムなのかちゃんと大本命に当たったところはない。
それでも飛び出た数は数十。
巨大なためどこかが引っかかり燃え上がって突き上げから地面に落とされ爆発。
あたりに避けづらい現象……!
しかも地形としてそのまま残っている。
ドラーグやリバイアサンが蹴り壊したりはしているけれど赤熱してなくても朱竜の盾になる。
しかも別に朱竜はまた炎が生える。
厄介だ……!
アルセーラ朱竜の方はとにかく近くにいくと上半身のラッシュの下半身の噴出が邪魔。
さすがに転げ回ることですぐに立ち上がっちゃったし。
「グ……オオオォォ!!」
「うわッ!」
私の方へいきなり吠えてきたと思ったら連続で切り裂いてきた!?
しかも脚が多いせいで踏み込みが……速い!
剛爪の動きを見きれず少しずつ傷をもらう。
うぐぐぐ……想像どおりにまだ体が動かせない感覚。
引いた時にどうもワンテンポ間に合わない。
これドライやアインスが裏で叫びながらやってくれているからなんとかなるだけで実際はハズレ効果のほうが大きいのかもしれない……!
回復は"ヒーリング"で間に合う。
じわじわ自分を癒やしつつ大きく跳んだ。
そのまま背中から針の翼を展開する。
う……浮いた!
さすがアインス。
1発で成功。
(どんなもんだい!)
(いまので注意を集めた。来るぞ!)
ドライの発言で私は魔法構成を練り直しつつうまいこと飛んでくれるのを祈る。
ちょっと操作感覚がまだ曖昧だ。
いつもの高速飛行ができない。
そのかわり浮遊から下降は十分に行けそう。
骨だけの上半身をアルセーラ朱竜がこちらに向け。
大量の脚で地団駄を踏むと身体から強烈な熱が発せられる!
熱は塊となってまるで溶岩塊のような光となって私に襲いかかる。
上空でイバラを使って迎撃する。
イバラは複雑に周り緻密な防御を作った。
貫通されないようにとにかく細かく弾く。
ああ数が多い!
イバラがだめになる!
というかずっとやってるせいでこのままだと普通に貫通される!
こんなときこそ時空魔法!
[ブレイキングファング 時空のひずみを生じさせ生まれたエネルギーで、引き裂く]
発生地点はもちろんアルセーラ朱竜のところ!
アルセーラ朱竜の上半身。
アルセーラの像があるあたりで空間が突如力と音を立てて歪む。
……範囲でかいなあ。
"見透す眼"でみているけれど。
魔法で出来た歪みは空間にありえない負荷がかかる。
そして負荷のせいで近くにいたアルセーラ朱竜ごと。
まルデ内圧に耐えきれないひび割れのように時空が裂ける!
空間が裂けるのとは別にさらなる時の狭間向こうが見えるこの魔法。
空間が避けた時に同時に時間が戻るらしく何事もなかったかのように回復する。
しかし喰らった方はその限りではない。
「ゴ、コガオオオオォォ!!?」
嫌がるような悲鳴とともに骨に引き裂かれたような傷が残る。
所詮不死体みたいなものだからこレで怯みはしてくれないが。
一応"二重詠唱"だから2箇所もえぐったのに。
もう一回攻撃だ!
闇魔法"サンセッツ"そしてさらに!
[エクスフロージD 闇の爆発が敵の周囲に纏わりつき起こる]
通称エクスプロージシリーズ。
闇魔法のエクスプロージはまずは黒の光球体が生まれる。
私はイバラがなくなってしまい身を捻って避けつつイバラを再生させる。
でも熱い! 毛皮焼ける!




