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六百五十八生目 親情

 親子喧嘩は拳にもこもる。


「なんでそうなるまで放っておいたの!」


『目的のために生きぬ神など、死してる者と同じ。故に、我は交わした契約を果たすため、自らの目的を果たすため、その時の最適な手段をとった。それだけだっ!』


 想いと攻撃がぶつかりあう。

 ドラーグは朱竜の背後をとり背中の穴や関節に連続で弾丸のような黒い球たちを放っている。

 的確に弱点を撃ち抜く弾丸や動きは背中の彼女……コロロが完璧にコントロールしているからだ。


 しかしそこに朱竜の尾が下から襲いかかる。

 横に避けたところを身体をひねられ今度は口からの炎。

 燃える炎はドラーグの弾丸たちすら打ち消す。


 ドラーグはコロロに導かれるまま体勢を変え猛攻の姿勢から安定の姿勢へと変える。

 コロロが魔法を唱え……

 ドラーグの正面に大きな毒々しい色の壁が出来る。


 壁に炎はぶち当たると同時にドラーグが前回転しながら突っ込む。

 毒の(エフェクト)をまとい炎をもまとったドラーグは。

 翼を開いて止まるとどちらも霧散した。


 なんという力と技……!

 毒液だけではドラーグだけでは受けきれないから。

 それぞれを組み合わせて防いだのか。


 毒はおそらく膜のようになって熱はすぐに放熱してしまうタイプなのだろう。

 燃えやすい割に燃え続けるというか。

 しかもそのさい外にだけ熱が行って爆発もしないよう繊細に。


 何よりドラーグはよく見ればなんども傷を負った跡がある。

 今のでもそうだろう。

 毒をまとい火を受けるのにノーダメージでは通せない。


 私はドラーグやリバイアサンに回復を飛ばしつつ私は出来得る限り余波を受けないよう立ち回る。


「うう、そうなる前に、誰かに相談とか……できないか……」


『フン、我の問題をそうやすやすと他者に渡すものか……其れに、これは絶好の機会なのだ。長年、神からしてもそこそこの長い間の問題に、蹴りをつけれる聖戦ぞ。誉れなる戦いに、命をかけた者たちに、ここまで全ての出来事に、ドラーグ貴様だけの感性だけで汚すな』


(パーレント)……僕は……」


 ドラーグが言葉を詰まらせる。

 朱竜がもっと力と暴言で来れば反論できたのだが。

 それはあまりにも落ち着いた念話。


 一番近いのは子に向ける……言葉。


 それに朱竜の言うことがそのとおりだとすると……

 朱竜はもともと逃げ隠れせず引き受け叩き潰す性格だとはわかっていたが。

 それは思ったよりも深いレベルでのものだったらしい。


「まさか、自分を悪に……むしろ、復讐相手に? 自分が神だとしても、向かってこれる口実を作れるように、これまでやってきたことの責任を負うみたいに……!」


『我は逃げん。魔王は貴様ら虫が、虫たちだけが戦い勝てた。多くの命を摩耗し、力を使い、余裕を削るこの戦いで、我がその責務から逃げて、どうして魔王との戦いのように、神をも超える力を見られると思うか!』


 私たちは一気に攻め立て朱竜は防戦一方となる。

 リバイアサンがアルセーラ朱竜と殴り合っているから余裕がある。

 さらに耐火能力を魔法と装備で得た兵やみんなが一気にアルセーラ朱竜へ攻め立てていく。


 防戦とはいえ吹き飛ばす拳と炎でこっちめちゃくちゃ怪我をするんだけどね!

 とはいえ回復が間に合う速度。

 そこまで無理攻めしなくちゃ破綻しない。


 朱竜は非常にどっしり構えたファイトスタイル。

 逆に言えば1手で状況がひっくり返ることは……


『だが、各々の思惑や、事情などもはや二の次だ。このように愉しめる戦いなどそうそうない。命の投じあいを楽しめ! 魂を震わせたものこそ永劫の輝き! 我も愉しませてもらおう、貴様らも楽しめ』


「何をしようとッ、"猫舌打ち"!」


「パパ……パパは、おじいちゃんのこと、下げて見てる……」


「え!? そんなことはないよ、だって、あんなに大きくて恐ろしい(パーレント)を、下に見ているなんて!」


「パパは……おじいちゃんがかわいそうで……つらくて苦しそうで…、それに負けそうで……死んじゃうからって……でもそれは、ちょっと違う。それはいわゆる……ナメすぎだと思う」


「それって一体……えっ!?」


 話している間も互いの手は止まらない。

 武技"猫舌打ち"により多数先端が枝分かれしたイバラたちがフック状のツメトゲで相手の表皮と鱗を削り剥がす。

 嫌そうなモヤみたいな(エフェクト)が発生し防御性能が落ちたのをチェック。


 すぐに武技"拷問払い"を使う。

 太イバラが弱点の部分を執拗に狙い連続で打ち払う!

 朱竜ももちろんただ耐えているわけがない。


 迫りくる4本のイバラたちを順次焼いたりうち飛ばす。

 そして私本体へと踏み込んできて。

 大きく振るう拳が私を捉えた。


 ギリギリ直撃は避けたが……

 拳からはやはり広い範囲への(エフェクト)が放たれ。

 思いっきり吹き飛ばされた!

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