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百七十生目 忠臣

 カムラさんには"以心伝心"でデータを送りつつアヅキに料理と衛生を説明するために移動した。

 夜だったからかアヅキは眠っている。

 テントの外の高い所にあるくくりつけられた枝に足でしっかり掴んで立ったままぐっすりだ。

 別に急ぎじゃないし後で良いかな。


 そこから離れる。

 バサッ。サササ。タン。

 ……えっ?


「何か御用でしたでしょうか?」


 寝ていたはずのアヅキがいつの間にか私の目の前に移動していた。

 あれ? ええ?


「寝ていたんじゃあ?」

「ええ、ただ主の気配が何となく私を探していたように感じたので」

「ま、まあ探していたんだけれど……まあ良いや」


 野生生物って元々警戒のために寝ていても何となく害意には敏感なのは多いけれどアヅキのこれには驚いた。

 ハックだとグースカピーと絶対に起きない。

 むしろ熟睡しすぎて叩き起こさないと寝続ける。


「ほら、前言った料理と衛生担当の事

詳しく話をしようと思って」

「わかりました」


 料理と衛生について話をした。

 料理はアヅキも何度も作っているから飲み込みがはやかったが多種多様な種族が入り乱れている。

 そんな状態なため食べられる食べられないや単に好みが違ったりと大変。

 私たちが平気でもある種族には猛毒となるものもあるかもしれない。

 今のところは回避出来ているがアヅキも調理用部下を増やし聞き込みを徹底させるムネを話した。


 衛生は……


「――だからアヅキも羽根の手入れしたりして身体をキレイに保つじゃない? トイレもこの数がそこら中しっちゃかめっちゃかじゃあ、直ぐにとんでもなく汚くなっちゃうから片付ける必要があるんだ」

「ふーむ、それは各々が何となしにやっていてはどうにもならないのですか?」


 難航した。

 そもそも雑菌やらそこから病気の発生やら説明は難しく山積みなのをなんとか時間をかけて解説。

 この衛生面は即日手を入れないとすぐにでも悪化するだろうことは目に見えていたからだ。


 ちなみに汚れをキレイにし雑菌を落としたり清潔に保つのは聖魔法を魔法技術で改変したものが小さい魔物たちの街でも使われていた。

 おそらくニンゲンたちの街でも似たような事をやっているのだろう。

 ただしそれはざっくりキレイにするだけで細かい所は自力でどうにかする必要はある。


 この街でも似たような流れを作る必要がある。

 贅沢言うが上下水道をどうにかするのは必須事項だ。

 荒野の迷宮内は幸い沼地がポツポツあり妖精たちのところでは泉もあったことから水脈はたくさんあるらしく利用できないか検討中。


「まあ、とにかく、わからないことあったら聞いて。あと狩り担当とか他の所とかともうまく連携してね……」

「私が無知なばかりに……申し訳ありません……精一杯やらせてもらいます!」


 非常に申し訳なさそうなアヅキを見ているとこっちも申し訳なくなってくる。

 ただまあ無理難題を任せられるのってアヅキくらいなもんでもあるからなあ……

 アヅキが飛び去っていく背中を見ながら次は誰を訪ねようか悩んでいたら群れが騒がしくなってきた。

 狩り部隊の帰還だ。





「今日も大漁大漁!」

「みんなおつかれさまー!」

「おう!」


 インカの狩り部隊はちょくちょく編成が変わるし何百もの数を補うために何チームにも別れて出撃するが特にインカが直接率いる部隊はすごい。

 何が凄いかって全員種族ばらばらでそれなのに大漁だという点だ。

 インカには万能翻訳機を持たせているがそれひとつのみだ。


「インカは特に心配はいらなさそうだねえ」

「あー、妹、そのことなんだが……ちょっと良いか」


 んん? なんだろう。

 というわけでふたりで移動し私のテントへ。


 インカは結構困り顔で切り出した。


「正直このペースだとしばらくは持つけれどもっと未来……それこそ今後ここでずっと暮らしていくとなると、アッという間に獲物が枯渇しそう」

「ああ……そうなんだ」


 想定はしていたが現場に出ている者からの重い言葉。

 狩りはうまく行き過ぎているぐらいということなのだ。

 このままでは獲物が干上がるだろうという懸念。


「とは言ってもあれだよ、しばらくは何とかなるし何とかしてみせる! けどなあ……」

「根こそぎ狩っちゃうと、次に繋がらないと言う点も問題だね」

「うん? どういうこと?」


 少し難しいが"以心伝心"でイメージ図を伝えながら生態系の話をした。

 親を狩りつくし子どもを狩り尽くせばその種族は絶滅する。

 わかっていれば簡単な話だが野生の魔物がわざわざその点を意識することは無い。


「……なるほどぉ、だとすると余計になあ」

「よし、やっぱり農業もしよう」

「ん? ノーギョー?」


 酪農やら栽培は早い段階で手をつけていればその分実るのは早いはずだ。

 酪農となると多分魔物じゃあなくて迷宮外に棲む動物になりそうだけれど。

 家禽するのに向いている獣はユウレンあたりが知っているかな。

 そこらへんのムネを説明したらインカの目が輝いた。


「おお!! 自分で育てて自分で食べるのは面白そうだし、問題もどうにかなる! やってみたい!」

「うん、ちゃんとその時になったら頼むね」


 問題を解決して、また次の問題がやってきて……しばらくは忙しそうだ。

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