六百五十七生目 親子
ドラゴン級という大きさのカテゴリは伊達についたわけではない。
その攻める様すらも同じ。
主砲はコアの排熱すら使ったまさしくこの船で切り札。
1発限りがほとんど想定された使い方。
しかし撃てばその威力は……
『バカな、この集まる力は我を……!』
「朱竜そのものだって、積み重なる力に変えられるんだよ!」
純粋な破壊エネルギーが渦巻く。
大船は1本の光を道筋に見つけた。
一瞬細い光が朱竜のそばを通り過ぎる。
次のとき急に光がネガポジ反転したかのように色合いが歪み。
「僕も、ドラゴン……ロア!」
ドラーグの咆哮と共に放たれた光の奔流が船から放たれる光の奔流と合流。
全てをかき消すようなドラゴンの咆哮が今戦場に放たれた!
光はあまりに大きく直線上に撃ち抜き朱竜とさらに。
「曲がれっ……!」
私が空魔法"ベント"でほんの少し手助けするように曲げた先。
動こうとしていたアルセーラ朱竜に直接当たる位置へ。
朱竜の半身とアルセーラ朱竜が吹き飛ぶ……!
朱竜は今気づいただろう。
いつの間にか身体をチョロチョロしていた兵たちがいなかったと。
直線上にアルセーラ朱竜もいたと。
そして。
直前まで思いもよらなかっただろう。
朱竜をはじめとする大神クラスを研究した砲撃をニンゲンたちが扱うなどと。
これが積み重ねた歴史の力だ……!
ビームというよりもはや指向性のある大爆発に近い。
だから着弾時に爆発したりはしないが……
何もかもを消し飛ばすかのような威力。
1歩間違えれば私たちも巻き込むようなギリギリの展開。
私は燃えているイバラの炎を"クールダウン"で消しつつ次の魔法詠唱をしておく。
展開先読みして魔法をとなえておきうまくハマったときほど良いことはない。
光が消え失せるとドラゴンクラスの飛空艇は大口を開けたまま旋回行動を見せる。
……あれが弱点なんだよね。
オーバーヒートを起こすのでしばらくコア部分は露出しっぱなしだし船の性能はガタ落ちするらしい。
さらに燃費が悪く燃料もめちゃくちゃ使い対都市なんかでここまでうまく決まることはそうそうない。
それこそイオシクラスの飛空艇を飛ばされて乗り込まれそれどころじゃなくなるか大口開けた瞬間に砲弾撃ち込まれ誘爆か。
あと費用対効果的にただのロマン砲ともいえるらしい……
額は聞かなかった。
空飛ぶ国家予算の時点で嫌な予感しか無いのだから。
ただ今こういう対巨大災害には効果てきめん。
光が消えあたりに静寂と砂煙だけが残る。
ここでやったか!? なんて言えるほどに柔い相手ならばよかったんたわけだけれど。
もうもうとあがる煙の中でゆらりとうごめく影。
影が尾を大きく振るうだけで煙が霧散する。
……朱竜ははたして健在だった。
アルセーラ朱竜は……
「ゴオォガオオオォボオオ!!」
『直撃は、古き正気のない我には荷が重かったらしいな』
そもそも朱竜だって平然としているように見せているだけで片膝はつき当たった半身は鱗がえぐれたくさんの熱量と煙を吐き続けている。
全身まともに当たったあげくまともな受け身もとれなかった代償は大きい。
アルセーラ朱竜は全身の肉体が原型をとどめていなかった。
なんというか……
もともと崩壊しかけていような体が化けの皮を剥がされかのような。
上部は溶解された巨大な建物のよう。
骨組みが痛々しくむき出しになる。
中途半端に肉が形作り何か気味の悪い音と共に泡立ち再生しようとしているのがより痛々しい。
さらに四肢が下手にもげたせいか腕がさらに生えてこようとしていたり脚らしき節が地面に伸びていている。
そして私が少しくだいたアルセーラらしき青いヒト型像。
小さく存在感は薄いがヒビの入った部分が大きく割れだして光が凄まじく放たれている。
アレもしかしてアルセーラ朱竜のコアみたいな部分なんじゃあ……
『どうだ!? 朱竜の野郎をぶちのめせそうか!?』
『いや……』
「親、なんとかして、平和にその、解決する方法とかないの……? 力を落ち着かせるだけなら、もっとやりようがあるんじゃあ……」
『腑抜けの愚息よ、この状況で悩むのはドラーグ、貴様程度だ。それともやはり、貴様ら虫は神の庇護下で生きねば、魔王を打ち倒すことはただのまぐれだとでもいうのか? 我は今、多くに対する驚異となっている! それを討ち倒し、進むこと叶わぬと?』
「そ、そうは言っていないけれど……だって! もうそんなにボロボロで! こっちもたくさん危ないことをして、誰も得しないよ!」
『貴様の思考を全体化するな。少なくとも我の問は、我の命を賭ける理由がある。そして、我の力はもはや長らく大きなコントロールが困難となっている。星空へ流すにしても、大地から空に突き抜けることの力は、今使おうとすれば崩壊する』
ドラーグと朱竜が親子喧嘩だ……




