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六百五十五生目 差異

 巨大化した。


(調子には乗るなよ。巨大化して、相手の神威を防ぎ、それでなお不利だ)


 もちろん。巨大戦は慣れていないしドライに任せよう。


(このジョータイでもとべるかなー? 空はまかせて!)


 アインスには相変わらず三次元把握という面で常に助けてもらっている。

 渾身の攻撃が空振らないのはアインスのおかげだ。

 特に巨大化したからには味方に気をつけないと。


 味方を巻き込んで攻撃してしまいましたーが前よりずっと洒落にならなくなっている。

 出来得る限り慎重に。かつ大胆に。

 とりあえず私が現れたことで自体は最終フェーズに入ったはずだ。


 そろそろ来るはずだ……

 私の足元にある影がゆらめき動く。

 来た!


 影はそのまま実体を伴い始めその黒々とした鱗が揃う。

 一気に巨大化し現れたそれ。

 20メートルをこえる巨体もいまやそこまで大きくは感じない。


 ドラーグだ!


「おお! ローズさん、大きくなりましたね!」


 影をつたう移動をしてきて現実世界に戻ってきたこの竜。

 ニカッと笑ったドラーグは朱竜の実子だ。

 最近までは気づかれなかったけれど。


 そして背中にまたがる1つの小さな存在。

 ニンゲンの……


「パパ……よそ見しない……ここは戦場……」


「もちろんわかってるよ! しかもママ……じゃないや(パーレント)が相手だからね!」


 少女のコロロは巨大すぎるドラーグの背で自由に動き回れる。

 サイズとしては頼りなく武器だけ長い槍が目立つ。

 しかし連携をとったときに抜群の能力を発揮する立派なドラゴンライダーだ。


『成程、どうやらしっかりと本気で我に勝ちに来ているらしいな……正体不明ながら我の神威を封じる者。我に叩き潰されやすいサイズになった蒼竜の使い、そして戯れの子。巨大な蚊蜻蛉(かとんぼ)、武器を持つ這う虫、石礫を飛ばす玩具(がんぐ)、気象を僅かに揺らす虫の歌声、他にも多数、久方ぶりに我を壊しに来ようとする者達か。なればこそ、壊す歓びがあるというもの!』


 もはやここまで来て互いに止まる理由もない。

 念話が送られてくる間にも動きを重ねる。

 補助魔法は行き渡っているから今は朱竜に戦いを挑む!


 一気に脚へ力を込めて跳ぶように駆ける……って!

 お……重い!

 重力が物凄い枷になる。


 でも肉体の使い方が普段と違うだけだ。

 その差異を意識して脚を伸ばし。

 力強く踏み込んで。


「それっ!」


 まるで赤ん坊のころみたいに慣れから入る行動。

 しかしドライとアインスが正しく補助をすることで……

 朱竜の前に来るまでにはその重々しくも移動距離は前と比較にもならないほど速い!


「ヤッ!」


「フンッ!」


 念話ではない朱竜自身の声での意気込み。

 同時に私と朱竜は爪と爪がかち合う。

 なんなんだこの重たさは!


 見た目も既に火山ではあるが……

 まさしく山でも相手にしているかのよう。

 まともに組み合うこともできず私は背後に吹き飛ばされる。


「まだ!」


 この状態では剣ゼロエネミーは補助にしかならない。

 サイズ大きくならないからね。

 銃ビーストセージも同じく。


 私の肉体と魔法で勝負するしかない。

 怪我は巨大化したときに全回復しているようだ。

 ならばためらう必要はなし!


 イバラを伸ばすとちゃんと大きい。

 朱竜と比較すればそれこそ小さいけれど……

 でも的確に打ちこめば効きそうなぐらいはある!


 巨大な相手には本数よりも太さと強力さが大事。

 4本に制限し力いっぱい触れるようにその周囲へ細くイバラを巻く。

 とはいえその細いイバラ1本1本が通常時よりも太い。


 4つの凶悪なトゲの生えた武器に前足という武器。

 後ろ足も強靭な能力を備えている。

 朱竜たちがはるかに強大でもこの状態ならギリギリ届く!


『さあ……』


 アルセーラ朱竜のほうはフォウのリバイアサンとドラーグたちが抑えていてくれる。

 後は私が朱竜を抑える……!

 朱竜は口に大きく炎をたくわえこちらを睨む。


 炎が漏れ出していて今にもこちらに向かってきそうだ。

 朱い炎の痛みを私は知っている。


『我に抗ってみせよ! その力たちを、魔王をも穿つ、虫どもの意地をっ!!』


 だからこそ私は言える。


「絶対鎮火してみせる!」


 炎が……放たれた!


 あの炎は使用者に対して燃え移るまで燃え追いつづけるというとてつもなく嫌らしい性能を持つ。

 ただわかっていれば対処は簡単だ。

 相手を無理やり戦闘のリング上で殴り合いに突き合わせるという特性なのだから。


 真正面から私を燃やし飛ばそうとする熱量と勢いを持って炎が近づく。

 私はすぐに横へ……行かない。

 ここは踏ん張る。


 大イバラを1本伸ばして渦を巻くようにし炎を受ける!

 そしてこの時に火魔法"クールダウン"だ!

 クールダウンの効果は物質の熱を一気に下げ平熱にする。


 イバラから登ってこようとする炎がかき消された。

 前までならあまりに実力差がありすぎて無理だったが……

 こういう小手先なら通用するようになったぞ!




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