六百五十ニ生目 剥奪
張り替えられた床はコツコツと兵士たちの靴音を鳴らす。
たくさんの座席が用意されていた。
前のように玉座……というか操縦桿はない。
[新しいトレンドを取り入れた。新型というのは心が躍る単語だ]
フォウが満足気な顔をして語る。
ゆっくりくつろげるスペースが用意されている……
促されて座ってみたらフカフカだ。
なんなのだろうこのこだわり。
いつの間にかモギリの男も中にいた。
モギリの男はテクテクと歩いていく。
フォウの方へ向かっていくたびにその背が縮んでいき……?
光に包まれたかと思うとフォウの帽子まで飛ぶ。
帽子の上にいくと……
……たまにのっている不思議なぬいぐるみへと化けた。
というかあの子ども受けしていそうなぬいぐるみってモギリだったの!?
知らなかった。
あのぬいぐるみも動くのか……
フォウは特に何事もないように歩き1番前の席に座る。
位置が1番前って言うだけで特に変哲のない同じ作りだ。
フォウが座り前に手を向けると一気に視界が変わっていく。
外側の壁の色合いが変化し……
外の景色が映し出された!
前はこれで宇宙を見せられて怯んだなぁ。
今回は宇宙よりも危険なものが目の前にある。
朱竜と……アルセーラ朱竜。
兵士たちが同じ目線になった朱竜たちを見て息を飲む。
それはそうだ。
2柱ともこちらを見ていたのだから。
その殺意にも似た興味の目。
それはそうだろう。
彼ら視点からすると近くからいきなり巨体が生えたのだから。
ちなみに私たち視点からすると何キロメートルもある。
今までこちらの動向を伺っていたのだろう。
周囲の攻撃もあるから動くことも難しい。
避ける気もないだろうし。
『何者だ……? 誰であれ、我に歯向かうのならば、良し。こちらへ来い』
「グゥアアアアアアァー!!!」
2柱とも熱烈歓迎だぁ……
ただ朱竜にはきっとすぐ正体がバレる。
そういうことをするのだから。
[敵に向かって加速。GO]
フォウが指を指す。
すると背後の方から凄まじい轟音が鳴り響き。
え。何?
[テイルブースターオン。一気に加速。優先目標朱竜]
フォウがログに書いた言葉と共に一気に前へ加速する。
はっやい!
前の魔王乗り物時よりも速い!?
何がすごいかってこれだけ加速しているのにそんなに揺れや加速時の圧力を感じない。
その加速をしたまま腕が振りかぶり……
朱竜が構えた腕へこちらの腕頭で殴りかかった!
『ほうっ……!』
朱竜の大枠な防御バリアを打ち抜いて腕を穿ち大気が震える。
朱竜が数歩分吹き飛んで止まる。
足をふんばりなんとか倒れずに済んだらしい。
この魔王の乗り物……リバイアサンだっけ。周囲に網の粗い結界が張られる。
小さな生き物たちなら素通りだが朱竜のような相手ならば大きく防げる。
かなり強力なバリアなはずだ。
[さらに抗神神力解放。個体名ローズオーラ]
「……え? 私?」
[そうだ。基本的にこういう神力系は、個体名ローズオーラの許可と神力補助が必要]
そうか……前の時と同じか。
フォウはほとんどの能力を失っている。
特に神力関係は。
私は自身の首飾りに意識を向けて神力を解放。
神力をフォウに渡した。
フォウは親指をグッとする。
フォウは受け取った神力を変化させリバイアサンに流し込む。
するとリバイアサンは腕を前に構えて。
頭たちが大きく開き。
『何を……ムッ』
口の全て……多分上の頭含めて開き。
蓄えた光と共に怪音を放つ。
叫び声というよりも……バリバリというようなひび割れた音?
私たちには特に何もなかったが……
朱竜とアルセーラ朱竜の周囲にいくつもの光が発生。
なんだか下がり剥がれるような感じを受ける。
『この力……まさか、魔王!? 見た目を誤魔化しても、我の目はごまかされんぞ!』
「ぐオオォーーッ!?」
[即バレた]
まあバレはするだろう。
ただ周りからしたらこれは魔装車という名前で通してある。
前確認された魔王と全然姿も違うし朱竜が言っても首をかしげるだけだろう。
「気にしなくて大丈夫、どんどん行こう!」
[それはそうしたい。しかし。この現状この能力と直接戦闘ができるのみ。さらに軽量戦闘のためにそこまで頑丈でもない。単独戦闘は厳しい。さすがに全盛期の力は出せない]
「えっ」
そんな魔王のころの力はないと断言されたところで外の方から放出される炎。
アルセーラ朱竜だ!
炎がこちらに向かってきてこちらのシールドを焼く。
さらに朱竜も拳を振るってきた。
『協力はせんが……利用はさせてもらう!』
朱竜の振るう拳から光が薄く広がりこっちの全身を捉えるように勢いが伸びて……
うちとばされる!
「うわっ!」
「「ぐあっ!」」
凄まじい揺れと共に機体全体が浮いた……!?




