表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1742/2401

六百五十生目 初陣

 朱竜の弱点とも言えるいくつかの部位。

 可動部のスキマや構造上穴が奥に続く耳や背中の火山口と顔口。

 ちなみに頭はだめだ。


 有効打になるのは脳を揺らすほどの1撃であって多少刺す程度では逆に強く弾かれる。

 というわけで今当たった攻撃はそういうところじゃない。

 例えば首の顎下。


 下からの砲撃があたりエネルギーが衝突。

 中和され明らかにその周りだけエネルギー熱量が落ちている。

 つまり熱が冷めて煙があちこちから上がっていた。


『我に痛烈をわずかにでも与えるか。ただの無謀ではないらしいな』


 ワッとあちこちで歓声が上がる。

 まるでもう戦いに勝ったかのように。

 たった1度無傷で防いだだけ……それでも奇跡的だ。


 今まで朱竜にかなうものなしとされてきた。

 故に戦闘をまともに1度もしていなかったためこれまでは壊されるばかりだった。

 技術や力量の上げ幅もまったく足りてはいなかったし。


 そして神に認められた。

 これほどまでに喜ばしいことは信徒にとってないだろう。

 だからこそ……この時冷静な顔をする面々が重要なのだが。


「総員動け! 次点装填、そして回避運動!」


『全力で叩き潰すことで、キサマら虫けらの力に答えよう!』


 当たり前だが今ので終わりではない。

 そして同時に……

 何度も朱竜の大きな1発を耐えられるようなことができるはずもなし。


 全員固定砲台にならないように移動を開始する。

 言葉が飛ぶのは早くそして相手を上回った。

 直撃ではなく余波や流し受けそれに弾きであればまだ耐える余地が大きい。


 次の攻撃は拳を固め……

 そのまま地面へと振り下ろす。

 すると拳が空から落ちる隕石のように(エフェクト)を帯びて。


 凄まじい勢いで手よりも巨大な範囲の地面への叩きつけ。

 更に余波で大きく吹き飛んだ!


「さっきの……アルセーラ朱竜に対してやった……」


「怯むな、全員攻め続けろ! でなければ勝機はつかめない!」


 もはやいまのでどこにどのぐらいどう被害が入ったのか。

 そんなこといちいちチェックしている余暇などなかった。

 船長の声と共にどんどんと砲撃が撃ち込まれ朝空を輝かせる。


 魔法も充填され英傑と名高いような兵たちは各々の武具をまとい突撃していく。

 幸い朱竜は本気で逃げ回ることはしない。

 それは負けなのだろう彼の中で。


 ならば巨体は逆に速度に縛りを受けているようにしか我々小さな身からするとそう見える。

 まあこっちも範囲から簡単に逃れられるとは思えないんだけれど!

 それに朱竜の性格なのかせかせか動こうとしない。


 1撃1撃重く決めに来るタイプだ。

 こっちは全力で連続に弱点を当てに行かねばならないけれど……

 あと朱竜は先程から王者として負けないためか弱点を執拗に狙ってくる攻撃に対しちゃんと炎などで防ぎつつも受けてくれている。


 それこそ翼で覆い隠したり身体をねじって弱点からそらせばいいのだが……

 とにかく攻め続けてきている。

 炎を吐き殴り蹴る。


 まさしく殴り合いを所望のようだ。

 こっちが命を張る分の駆け引きはしてくれるらしい。

 だからこそ……札を切るタイミングがくる。


「そろそろ兵たちも準備できたか?」


「ハッ。さらに、飛空艇炉も充填が終わり熱循環も理想値です」


「ここが決まるかが全ての勝敗を決めるのだな……」


 船長が緊張を押し隠すように呟いたのを聞きつつ私も移動する。

 当たり前だけど私はいるだけ民間人ではないのだ。

 むしろ朱竜の大きな動きを見きれた後に動く必要がある。


 まあもちろんそれは朱竜の攻撃を受けるなんていう危険なことを引き受けてくれた兵士さんや征火隊のおかげでもある。

 存分に活かそう。


 外に出たら飛空艇の様子を遠くから見る。

 最初の威光で光らせていた機体は……

 今や灰と傷と焦げで傷だらけの戦隊となっていた。


 やはり朱竜の攻撃を受けるのに軽減は限度がある。

 私も存分に休ませてもらったし……

 まずは合流だ。


 地面の方に向かいなんでもなさそうな区域へ神力と気配を念の為消して行く。

 今やみんなアルセーラ朱竜に耐熱をもらって向かっていっている。

 私も行きたいが……


 そのままたどり着いた先には数人の魔物兵たちと。


[個体名ローズオーラ。待ちわびていた]


 ……フォウだった。

 フォウの帽子には生きた蛇のような電車のような模型が乗っていた。

 節……というか連結ごとに目がギョロギョロと覗かせ活発状態だ。

 普段は眠るようにおとなしいから余計目立つ。


 頭から背中にかけてところどころに生えた角棘はその存在感を放っている。

 前はこんなんじゃあなくて改修してからこうなった。


「おまたせ。準備ができたから、早速使うことになりそうだよ」


[初陣。もちろん任された]


 ログにフォウのメッセージが……魔王の証であるメッセージが書き込まれ。

 そのとってつけたような目はにっこりとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ