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六百四十八生目 喝采

 倒して発熱を絶ち彼らの肉体で熱を処理させる。

 そのためにあまりに過剰なエネルギーを削りきらないといけない。

 そしてアルセーラ朱竜はともかく朱竜は神威で必勝が強く有る。


 もちろんどちらにもあるものの朱竜の方はより強いだろう。

 まあどちらにせよ克服する手を打たねばならないけれど多分なんとかはなると思う……

 そして。


「例の、魔装車というものは、いつ投下するかです」


「魔装車とやらの準備はもう済んでいるんだろう?」


「後は投入するタイミング……最も効果的なタイミングで行わねば」


「確か向こうの必勝能力そのものを麻痺させるのでは? では、早速投入したほうが……」


「そうはいかねえってことなんだよなぁ……」


 ジャグナーが頭をかきながら話に割って入る。

 まあ『魔装車』の性能を聞く限りいざ兵たちが乗り込めるときのほうがいい。

 熱を浴びずに思いっきり攻められる瞬間のほうが。


 つまり戦力の最大投入。

 その時になったらぶつけることで不意をつける。

 それが朱竜の納得に繋がるかどうかは……少しわからない。


 ただ虫ケラのような小さな生き物たちだからこそ。

 神や魔王すらも食い破る時がある。

 それは1つの力だけじゃないからと見せられたらいいけれど。


 話はそこらへんもまとめられ形になっていく。

 もはや決めた話だからまあ既定路線ではあるんだけれど。

 この土壇場で決まった既定路線だからね……


「では、コレで本作戦の話を終了します」


「さあ、本番である。本艦が作戦の要の1つなのは間違いないが、この局面、もはや1つの崩壊が全ての崩壊を招く。朱竜神に刃を向けるなどという奇特な状況だが、朱竜神もそれを望んでおられる……朱竜神に打ち克つ力を見せ、我々ムシの矜持をみせつけ認めてもらおうぞ」


「あと、ローズ殿」


「は、はい!」


 いきなり話振られてびっくりしたぁ!?

 完全に会話を受け側の気持ちでいたから話すことなど何も考えていなかった。

 むしろこれ本当にうまくいくのかと頭を悩ましていたのに。


 立って前に出るよう促されおずおずと歩きでる。


「アノニマルースこと魔物軍、ひいては諸君らの活躍は非常に目覚ましい。特に、魔王を討伐した実績を陰らせることなく、第一の作戦を完全に行使し、さらに敵のたくらみを事前に見抜いた。魔装車もそうだしな……ぜひ、ひと言頼みたい」


 あ……アドリブ!

 どうしようか……

 こういう時に限って頭は働かない。


「その……ニンゲンも魔物も、大いなる神からしたらあまりにちっぽけな存在だと思います。けれど、だからこそ出来ることだってあると見せて、こんな状況ですが、世界を救いましょう!」


 ワッと拍手がわく。

 なんか良かったのか……な?







「よし! だいぶちまちました展開に飽きてきていたんだ! ここからぶちかますぞ!」


 ジャグナーと共に船の上に出る。

 重厚な結界に覆われたここからは多少結界により光が歪んでいてもかなりの良い景色だ。

 下さえ見なければ!


 ついでに横側も正面もなんか危ないし!


「ここで全戦力を1つに集められるのは、多分かなり調整しても1回だけ……みんなのことは信頼しているけれど、自分にやれることが少なすぎてもどかしいなぁ……」


「そうは言っても、既にここまでかなりの冒険してきて、さらに広域化した補助魔法かけまくってるんだろう? 十二分すぎるぜ。俺はずーっと戦場の現場であっちこっち走り回って、どうにも決め手がないままだったからなぁ、なんともまだまだ消化不足だ」


 ジャグナーの言う通り私は広域化した魔法をこの飛空艇からばらまいている。

 なにも自力ではない。

 この飛空艇がそもそも戦術塔または戦略塔の役割を持っていて特定の位置からなら軍用の広域魔法として扱えるのだ。


 戦場に回復とか補助を撒くとそれだけで準備が整うのが早くなる。

 やらない理由はないからね。

 私は手持ち無沙汰になって率先して行っていた。


「この後が決め所になる……私もあの札を切った時にどうなるかわからない部分あるから、そこがこわいなあ」


「そこはなるようになるだけだ。戦場は生モノ、事前に知り得たことだけで進められることはないぜ。それと、ローズの魔法、あまりに効果がしっかりとしていて強い割に、身に入り込むような自然さだからクセになるやつが多いんだ、あんまり他のやつらの職を奪ってやるなよ」


「そうかな……って何その魔法レポート!?」


「まあ、俺はそう感じるという話だ。やっぱさあ、慣れるとわかるんだよな、質の違いが。聞いていないか? 他の兵たちから、ずっとあの時の魔法のほうが良いって言われるんだぜ」


 なんなんだろう。

 私の知らないところで私の魔法がそのような評価を得ていたとは……

 複雑な面持ちになりつつも加速していく飛空艇に乗って進んでいくこととなった。

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