六百四十七生目 会議
朱竜を討伐することとなった。
アルセーラ朱竜と共に。
朱竜はむだな暴れはせずに待っている。
アルセーラ朱竜は手当り次第攻撃を仕掛けていて非常に危険だ。
当然兵力は優先撃破目標にあたるアルセーラ朱竜へ向けられる。
幸いなのかなんなのかピヤア団陣地で暴れているけれど。
ただし朱竜の方は自爆の可能性が高く早く力を霧散させねばならない。
生半可な威力ではなくまさしく最高クラスの。
アルセーラ朱竜のほうに戦術級魔法の隕石が落下しているのを見届けつつ私は飛空船の方に乗り込んだ。
リーダーやウォールとはわかれた。
彼らはアルセーラ朱竜を止めるべく指示にまわるらしい。
まあ私も虎の子まで連れて行くわけにもいかないし。
ドラゴンクラスの船はとても巨大でなおかつ私でもパスをもらわないと入り込めないほどに結界が厳重。
素直に空から近づいてチェックしてもらい入った。
あとピヤア団の飛空船はいつの間にかいないなあと思ったら撃墜報告もないらしい。
つまりあのアルセーラ朱竜の中だ。
なんという吸い込み能力……
ただこれ幸いとしてこっちの飛空船が前に出せるのは良い。
中は外から見たときよりかは優雅に広々とした感じではない。
なにせこのサイズながら軍船だ。
強固な作りかつ兵装を詰むため大広間なんて優美な場所はない。
そのかわり非常に計算され尽くした動線がひかれている。
どの物がどこを通りどれだけのニンゲンがどこへ回るのか。
通常時戦場時非常時全部細かく練られていた。
私もきちんと動線に従って移動する。
目的地は会議部屋だ。
「まずは、ここまで行えた多くのものや、ここに集まった者たちに感謝を」
ニンゲンの船長がそう重々しく告げる。
ここに集まったメンバーはみんな中核をになつメンツばかり。
私は岩熊のジャグナーそばによりそった。
「もはや重要な案件に関しては全て話を回した。ここで行うのは、これから行う本作戦の最終確認と通達である」
「では、ここからはワタクシが」
船長さんが場を締めて引き続き参謀さんが地図を使い解説していく。
……これからの作戦は2柱にのみ焦点を絞ったものとなる。
まず人員たち。
アルセーラ朱竜に有効なものたち以外は全員撤退した。
ピヤア団側はゴタゴタしているがリーダーたちの指揮権が戻り次第なんとかなる予定だ。
主にこちらへ兵力を割かなくても良いという風にしてある。
こっちもピヤア団を追撃しない。
互いに警戒はするが敵視するのはアルセーラ朱竜のみだ。
あれは正気が無い割に恐ろしく強くて洒落にならない。
今も大きな魔法雷がアルセーラ朱竜におちたものの深く効いた様子がない。
まあ肉体が大地みたいなもんだからね。
海が近ければ大津波で襲いかかったりもできるのだが。
定期的な大砲砲撃。
対人ではなく対壁や対兵器のものをガンガン利用していく。
アルセーラ朱竜の体に火の手があがり実はよく見ると魔物兵なんかが取り付いている。
飛び込んだものや足がなくて動きが鈍いのを狙って足元から登っていったもの。
超大型の存在は私たちからしたらどうしても体の各所に弱さを抱えている。
"観察"のようなスキルを大量人数と兵装によって使用し我々のような物理的に小物がどこを攻めれば良いのかを割り出してある。
「とまあ、ここまでは良かったのだが。現場付近は異様に高温らしい。高温に耐えられる魔物でなければ接近しての戦闘は困難とのことだ。ゆえに、現場には高熱耐性を持つ者たちが向かっている。幸い、熱に関しては下がった魔法部隊が元々朱竜相手に想定し、熱を低下させる魔法を準備していた。これは順次現場に届けられる予定だ」
本当は死のダメージを身代わりにする弟のハックの能力が欲しい物の今回ハックは参加していない。
私の魔法は貸し出しているので土魔法"クラッシュガード"を各々使い1撃だけでも致命傷を防ぐ。
さらに火魔法"クールダウン"に相当するいくつかの魔法で自身の受ける熱を大きく減らし突撃するらしい。
ちなみにアルセーラ朱竜と朱竜本体を冷ます作戦も一応やりはしたが……
データを見た面々が苦い顔をして取りやめとなったそうな。
曰く『これが出来るのならば、星を冷まし氷に閉ざすことが出来る』
または『天の星が氷の星に一瞬でもなるほうが確率は高い』
とのこと。
どれだけなんだよ。
もちろんある程度はざっくりと諦めさせるために言った言葉だろうけれど。
つまり現実的ではないと。
逆に熱は本体の活動能力を低下させることで著しく下がっていくのもチェックされている。
霧散とはいったが本当に熱を全部逃せば燃え盛る大地になるだけなので……
実際は発熱そのものを断ち彼らの体で熱を使用しきってしまうのが狙いになる。
つまり恒温動物の発熱の能力がよりコアにあるのが彼ら。




