六百三十九生目 撤退
アルセーラたち一般人からしたら基本的には勇者が率いて討伐した形だ。
実際凄まじい強化補正入ったし彼も強かったし……
あの場では全員が限界を超えた動きをしていた。
ただアルセーラたちはそのことまではしらない。
そこまで限界をこえた状態はなかなか再現できない。
なので今私もひとりでアルセーラを相手するハメになってだいぶしんどいことを。
もちろん負けるとは思っていないが……
そんな簡単に勝てるような相手だとも思っていない。
「アタシたちはあくまで朱竜様が来るまでのつなぎさね。変身という能力を得てね!」
「クッ!」
ひと息での急速接近。
見えている避けられるという想定と実際避けられるかは別なところがあるよね。
今も針鎧で必死にしのぎ剣ゼロエネミーで反撃。
ただ今のは大振りだった。
向こうも疲れてはいる。
悪魔の力と関係ない……精神面の部分。
ならばそこを突けるかもしれない。
"無敵"の力の方針を疲弊にして……と。
蹴り飛ばして距離を離す。
向こうは立ち回りを明らかに変えてきてきている。
こっちもまだ手はあるが……
どのタイミングで切るべきか。
よく達人たちはチャンスが光って見えるという。
私はその境地にたっしてしているだろうか。
何度も剣や拳それに炎や槍を交わしつつ思う。
銃を乱射すれば相手は嫌がるが有効打とはいえない。
……むしろチャンスが光って見えるかよりも。
チャンスを活かせるか。
そこまで準備して魔法を組み立てられるかが重要か……
「さあ、死にさらしなさね! アタシの全力で、ジャイアントキリングさね!」
数十回ここだけで切り結び撃ち合い爪と牙をたてあったところで。
私は回復相手は再生。
どちらも致命打を狙うがスキがない。
しびれを切らしたアルセーラが舞うように飛び上がった。
右爪と左爪が光を纏って輝き……
翼が赤熱する。
回転する動きのさなか惑わされないように見つつ脚を止めないようにかける。
4つある魔法の撃ちどれを使えばしのげるかな……
そのときふと。
においが変わった気がした。
「ッここだ!」
影魔法"シャドウステッチ"!
彼女自身が広げた光が濃く大きく影を映し出す。
飛んでいった影の矢はアルセーラがこちらへとひと息に飛んでくる瞬間に着弾。
ひどく不安定な状態で動きを固定される。
さらに地面へと落ちて。
行き場を無くしたエネルギーが自爆した!
「う、うああぁ!?」
まだだ。
ここから畳み掛けなければ再生されるだけ。
闇魔法"オズモシス"と聖魔法"レストンス"。
互いの魔法発動タイミングをずらしてまざりあわないようにして。
どちらも浴びせる!
光と闇が混ざり合うことなく降り注ぐ光景は少し幻想的で。
あまりに重い効果を発揮していた。
「「うおああああっ!!」」
「これ、でぇ!」
「まだ……終わらないさね!」
またにおいが変わった。
背後に"ミニワープ"!
瞬時にアルセーラから大量のエネルギーが放出される。
光は爆発となって周囲を襲いかかった。
危なかった……
それを見届けてから。
思いっきり飛び込んで起き上がりに合わせ武技"叩きつけ"!
全身を使って鎧針と共に大きくなって使う。
体当たりとも言う!
しかし。
手応えは深かった。
「らァッ!」
「ギャアアアーー!!」
致命的な1撃。
クリティカルヒットとも言う。
私としては深く入ったという感じか。
吹き飛んだアルセーラは受け身も満足に取れず転がっていく。
横から来た影がアルセーラの姿をさらう。
あの舌は……
「だめですアルセーラさん! とてもじゃないけど勝てません!」
「うぉおぉおぉ……オデたちの兵、みんな、負げだ……」
リーダーがアルセーラを回収しウォールも肉体の大きさにしては俊敏に駆ける。
よくみるといつのまにやら兵士たちはみんなそこらへんに転がっている。
変身は溶けているらしい。
「……ふん、やっぱり直接戦闘させるには、リンク変身させるとリソースの消費がでかいさねえ。どうせ、大幅に戦闘でエネルギー削られて、制御液の数が追いつかなくなって全員倒れたんだろう?」
「……はい、そのとおりで。私の計算よりもかなり早く削られたのは不本意ですが」
「あんなやつらを一般に当てはめるんじゃないさね」
「……ウ……」
3体が揃って逃げていく。
ってちょうどそこに外への道が!
いつの間にやら脱出をメインにされていたらしい。
それにしてもやはり何か制御液なるものを使って他の変身体たちは維持をしていたらしい。
膨大にリソースを食うのならばまだまだ戦いようがある。
そのまま戦うことではなく兵を放っておいても逃げることを選んでいるあたり結構重そうだ。
みんなのダメージも結構大きそうだが負けたメンバーはいない。
回復しながら追いつこう。




