六百三十五生目 乾燥
さあて闇から這い出てきたアルセーラに今度はどのような戦いの決め方をしよう。
そんなことを考えつつ私の傷を癒やす。
正直戦いの途中じゃなきゃめちゃくちゃ痛い。
高速重ね回復を見せつけ再生はそっちだけの専売特許じゃないんだぞと見せつける。
"無敵"で心が折れやすくなるのは絶対的に勝利が見えなければこそだ。
ただアルセーラはまだ平気そうな顔を……うん?
「地響き……?」
「なにさ……ね……ああっ!」
私達が角から曲がってくるそれに気づいた時。
もう私達は飲み込まれていた。
津波に!
「「うわああぶぶぶ!?」」
し……死ぬ!
み……水が!
そうだ! 水だ!
現象としての水ならば……ゼロエネミー!
死にものぐるいでゼロエネミー似おねがいしたら一気にかさが減っていく。
私達は地面へと投げ出された。
「へぶっ」
ゼロエネミーが円状になり水をくるくる巻き取るように吸い取っていた。
やがて床にべったりする程度の水しかなくなり……
私は起き上がる。
痛い。
いま叩きつけられた部分もそうだが気管支が痛い。
ゲフン。
私とアルセーラが立ち上がりベタベタするのを振り払う。
そして現況は。
地面に降り立ったリーダーことカエル。
そしてリーダーに対して殴りにかかるローズクオーツ。
やっと地面に降りられてセットアップしているノーツだった。
みんな少なくない手傷を負っている……
というかリーダーのほうは再生するのでわかりにくいが少なくとも疲労はしている。
「オマエ、アタシたちのやることに賛同しないかい?」
「何?」
「アタシたちと共に……神代の大神国を復活させようじゃないか!」
アルセーラは赤熱した刃そのものを飛ばしてくる。
光が波状になってて避けにくい……!?
私は銃ビーストセージで針を撃ちまくり弾で相殺しながら少しずつ前に詰める。
アルセーラは不気味に自身を赤く輝かせながら何度もこちらへ光でできた攻勢波動を送り近づけさせないようにしてくる……
「朱竜様の朱竜様による朱竜様のためにある王国……それをここから復活させる。まずはここら一帯を過去に復元し、本来の国力を取り戻す!」
アルセーラのほうも気になるけれど私は味方の援護もしないと……
ローズクオーツは相変わらず腕を振って伸ばして切り裂いているもののなんだかかなり技術面が増している気がする。
大雑把ではなく細やかにまるで舞うかのごとく。
リーダーは舌伸ばしを使った迎撃でローズクオーツの両腕分をしのぎきっている。
「私の攻撃を凌ぐ姿、最初よりは見られるさまになったようですねぇ……しかし、お忘れかな?」
ニンゲンならば額に汗を浮かべ飛ばす程に苦しそうな顔をしたローズクオーツ。
ローズクオーツの腕振りは幾重にもブラフが込められ最終地点がおおきく想定とブレるようになっている。
それでもリーダーは余裕の表情を崩すことなく舌ではじく。
ついでにノーツは身体のあちこちから大量の水を吐き出してエアーが吹き出ていた。
乾燥中の文字が浮き出てきている……
戦いの場。
更にいつの間にかローズクオーツの周りにいくつもの水柱が立っていた。
ローズクオーツはハッとして腕を戻そうとするが間に合わない。
水柱からしぶきのように水光が飛ぶ。
強烈な威力としてローズクオーツに降り注ぐ!
「わぁ……! あれ?」
「クオーツ! 大丈夫じゃなさそうだったから横槍入れさせてもらったよ!」
私はトゲなしイバラを伸ばし巻いてから一気に引き寄せる。
しぶきたちがぶつかると激しく水の爆発を起こす。
あの中心にローズクオーツがいたらと思うとゾッとする。
「ローズオーラ様ー!! ありがとうー!!」
「わわッ、暴れないで」
イバラごしにローズクオーツを魔法で回復する。
"ヒーリング"じゃなくて"ゴーレム"でね。
生命力ならぬ耐久力がどんどん回復する。
特に何も思わず"二重詠唱"を常時使っているのは我ながらなかなか贅沢な使い方だなとは思う。
舌打ちがリーダーから響く。
「邪魔、するな!」
リーダーからの毒液!
イバラではじき落としたあと自切する。
切り落としたイバラがどんどんと溶けひろがっていく……
「この時空渦はとても都合がいい……全盛期のころまで戻してやれば、我らの大国家が復活するさね!」
「そんな、時空はあくまでその時の再現で……」
「なるほど、やはり真価を知らないようさね。少しだけ……我らの力を知らしめてやるとするさね。リーダー!」
「はいはい、援護しますよ! もう魔物づかいが荒いんだから……だが、こいつに復讐できるのならば良い機会だぁ!」
リーダーが前に出てアルセーラが下がった。
やりづらいな……
一方ノーツはエンジンらしき何かをフル回転させて暖風で蒸気を飛ばし続けていた。




