六百三十二生目 連射
リーダーは全身から毒をにじみださせる。
水はあくまで小手先でこちらが本場だと。
主張激しくするかのように。
「誰が道具で武器ですか! 確かに私達はローズオーラ様に使われるためにいます。けれど、一個人として認めてくれているのです。こんな迷惑なことをして、しかもそんな口の悪いことまで言って!!」
「フン、私の知ったことではないですよ。あなたたちの処遇なんて……興味があるのは、あなたたちの破壊によって、仲間たちがどのように思うかだけですね。安くないんでしょう、その体!」
「肯定。1点ものと高額複合金属」
「ああ、もういやらしい目で見て! ゆるしません!」
やがてふたりは互いの肉体を伸ばす……
私は当然のように彼女の前に来ていた。
アルセーラ。
疑惑の名前。
そして今回騒動の中心。
もはや逃げることはできないか……
「あなたが、アルセーラだね」
「……? なにさねいきなり」
「キミの名前を、この先の場所から聞いたよ」
「この先は、先程確かめに行かせたときに、不思議な空間が広がっているだけで何もなかったと聞いているさね。要領をえないねえ、ちゃんと言いなさんな」
やはりあの記憶上映は朱竜の虚像ありきで再生されていたらしい。
何もチェックされていないとしたら……
「この先で、1回だけ見られた情報がある。朱竜が王として座っていて、ひとりのユニ・スクレット……勇者部隊が、神使になるところだよ」
……雰囲気が突如変化した。
さっきまでの構えや余裕のありそうな顔つきが変わったわけではない。
だが今明確ににおいが引き締まった。
緊張……または興奮。
「どういうことさね……」
「その名は、アルセーラ。顔は違ったように見えたけれど、キミとおなじ名なのは偶然のようでいて……何か似た気配もある」
「なるほど……とぼけても無駄というわけさね? ま、長く、永く生きていれば顔程度変える技術は簡単に、雰囲気から、体格まで変えて……潜んできたさね。全ては、この日のために」
直剣の構えが変わった。
ある意味懐かしく。
そして私達にとってずっと見てきた剣技。
少し戻ったところにいる手慣れた正規兵たちがする剣の構え。
腕が翼なのに翼手みたいなのでよくやる……
私達の間に華美な言葉はいらないということだろう。
私も剣ゼロエネミーを呼び戻し銃ビーストセージで武技を使い高速連写の構え。
私もイバラを伸ばし針鎧を纏い……
衝突だ!
「ハッ!」
「ヤアッ!」
互いに距離を詰める手は持っていた。
前に前進しながらの遠隔攻撃。
向こうは大岩を飛ばしてきて私は銃を連射しつつ火魔法"フレイムボール"。
相性はあまりよくなかったが火魔法が燃やす力はかなり良かったらしい。
紫炎とも言える神力開放モード時の威力はえげつない。
前カカシに投げたら焼けて灰がなくなった。
蒸発したのかはたまた溶けたのか……
そんな常識外の火力ゆえガトリング連射はできないもののそれでも数発撃てる。
1発2発と撃ち込み壊したところ向こうも岩をはさんで何かしていたらしい。
というか"鷹目"と"見透す眼"があるからなんとかなるだけで視界が奪われるのは非常にこわいことだ。
私がタメて置いたのはここでじゃんけんに勝つことでもある。
向こうとこちらはもはや歩いても10歩もない。
跳んでいる今ならそのままぶつかる距離だ。
しかしそれは行われなかった。
彼女の腕が……つまりは翼が赤熱している。
「ハァッ!」
翼から光という形を持った熱風が放たれた!
風系は対処しにくいスキルや魔法だとよく言われる。
それこそ隙間風で身を削られるような。
フレイムボールをあえて正面地面に叩きつければ赤紫の火柱を上げる。
熱風と火柱がぶつかり合って消滅しあう。
私は息をとめてそこに突っ込んだ。
向こうは予想通り羽ばたいた影響でブレーキがかかってほんの僅かな時ただ浮いていた。
「っ!?」
私は牙を噛み締めながら巨大化しグラハリーのように全身甲殻と大きさの重みによるタックル。
ただひたすら質量をのせた近接攻撃は下手な爪よりも遥かに上等。
「ガッ!?」
「あの時のアルセーラなら、なぜ過去に戻そうとするんだ!」
そしてそろそろ仕込みも限界だし……派手に使おう!
私は全身がしっかり乗って深く入ったと理解してからアルセーラから離れる。
壁に叩きつけられたところで私は距離を取る。
重みで壁を破壊し埋まりそうなところで。
「炸裂!」
「なっ……」
アルセーラの体があちこち光を伴う。
あれは先程までちくちくと光線を当てたところ。
あの火魔法の真価はビームであることじゃない。
任意の時に爆発させららるということだ。
もちろん時間制約や限度はある。
それを踏まえても強い力だ。
私の着地とともにアルセーラの全身が一斉に爆発!
大爆発という表現がぴったりな全身超大爆発をモロに喰らって。
アルセーラは吹っ飛んでいった!




