六百三十一生目 応酬
銃の連射。
しかも小脇に抱えて雑に歩きながらずっと撃っている。
弾薬が常に機体に吸い込まれるよう飲まれていき絶えない。
ついでに弾薬はノーツの肉体自身からベルト状に出ている。
はたして弾薬切れという概念はあるのか。
正確にいえばある。
あれは私の針銃と同じだ。
重さもデカさもだいぶ違うけれど。
ノーツが行動力で消費して弾丸を生み出しているのだろう。
つまりこう見えて高度な通常攻撃。
私も針を生み出す程度ではそんなに消費しないからな……
散々敵の変身兵士たちを穿ちぶっ飛ばしている割に効率がよすぎる。
昔より遥かに威力が増しているものの連射と爆発しないという点で質が違う。
前の銃は銃で使えば昔より遥かに威力が高いだろう。
さっきから遠隔攻撃を向こうが試みているけれど無惨なことに撃ち落とされている。
魔法攻撃も射撃されるか腕ではたき落とされるか……
なんともまあ相手にしたくない組み合わせになったものである。
私も相手にしたくない。
対策は思いつくというのと戦いたいは完全に別なのだ。
そんな隙間ない攻撃飽和をして逃げればどこから雷神の武器がランダムに降り注ぐ。
貫通する弾丸から少しでも逃れようと部屋内に隠れれば1体ずつアカネが狩り上げて。
ついでに私もオマケで戦闘しつつ変身解除させていけばなんだかボコボコにできている。
ただ……
さすがにずっとうまくはいかないか。
雷神はステップを繰り返し踏み込むたびに衝撃波を生む。
そして今度は鎌を振るって……
「ウオオオオォル!!」
「……ゥ……!」
突如割り込まれた巨大によって受け止められる。
その巨体は先程のウォールという魔物の……はずだ。
変身をしていてその姿は大きくかわっているが。
まず愚直に大きく重そうになっている。
鎧のような甲殻たちは分厚くなり禍々しく変貌をとげている。
足はそれらを支えるように大きく蹄が輝いていた。
そして自慢の牙はいまやその有り様が歪められ正面を向き噛むまでもなく射殺そうとしている。
イノシシの牙はナイフのように鋭くそして細かいギザギザがあるという。
これがなにを起こすかといえば出血を狙えるのだ。
私は"ズタ裂き"を使えば狙えるが彼は全身に生えているトゲが傷つけてくるものみな裂く。
雷神が対峙したのはそんな相手だった。
他のメンツと比べて変身にそこまで差異がないけれど『純粋に今のママ強くなったほうがよくない?』という思考が透けて見えるようだった。
「……厶……」
「……ウ……」
「おや、良い相手じゃない!」
静かな対峙が始まりそうになった時に乱入者がひとり。
いや正確には周囲に兵は数名いるけれどあちらはあちらで忙しそうだし。
アカネがマントをまた全身に羽織って近づいてきた。
「ちょうど雑魚ばかりで飽き飽きしてたの」
その顔は狂いに染まる。
それでもなお本当の『狂い』を知っているからか。
まるでぬくいぬくいと内の狂気すら飼い慣らして。
笑顔はこれから起こる本当の戦いに向けてか。
全員が一斉に攻める1歩を踏み出した!
「うーん……やっぱり」
ローズクオーツは悩ましげな声を出した。
ローズクオーツの振る腕は非常に凶悪化して敵をなぎ払い続けている。
しかし彼らは不満らしい。
「ノーツ、撃破数は……」
「撃破数、ゼロ」
「決め手がまったくないですね……ローズオーラ様だよりです」
「援護徹底」
つまり倒せないというのが不服だったらしい。
死ぬほど無力化している時点で問題ない気がするんだけれど。
ただまあ気持ちはわからなくない。
結局千日手になるだけだからね。
時間を伸ばせば伸ばすほど不利になるし。
朱竜も来るし……
しかしそれらが杞憂だと思わせる力というのはある。
「警戒」
「へ? あ、ああーー!!」
いきなりの洪水。
2体とも……というか何人や何匹か巻き込みながら廊下を流していく。
最初はノーツだけは耐えていたがだんだんかさが増してきて足が浮いて。
ゆっくりだが流されていく。
そのままどんぶらこどんぶらこ。
「あぁーー……!」
「確保」
「あ! た、助かりました……!」
ローズクオーツが腕を伸ばして必死に耐えていたところをノーツが問題なく回収した。
ローズクオーツの弱点として常に浮いているから踏ん張れることはないんだよね……
ノーツの肩上に乗ることで安定したらしい。
そのまま流してきた張本人と対峙する。
水の中から水を足場にして上がってくる何か。
というよりここまでちゃんとした水技を使えるやつなんて限られている。
リーダーのカエル魔物だ。
ムダを削ぎ落とし新たなる力を得た彼は油断なくローズクオーツに向き合う。
ノーツは足場状態なので割愛。
「散々暴れてくれたなぁ……私はあなたたちのような野蛮な奴らが、本当に嫌いなんですよぉ……あんたたち道具の主たちも嫌いですが、まずは武器から潰しますよぉ……!」




