六百二十八生目 悪夢
「てかウォールさんは!?」
「あれ? そういえばトイレいったっきり戻ってこないぞ!?」
「あー……あいつはそういうやつさね。すごくマイペースなのさね。放置して来るのを待つしかあるんまし」
「ウォールさんが戻ったら、こんな1匹簡単に押しつぶせるんですが、ね!」
くっまたリーダーに見つかった!
今度は腕をふって何かを飛ばしてくる。
避けて壁に当たったら煙を吐き出した。
うーん溶解毒だね!
水で押し流す戦法は強かったがより殺意が高まっている。
いろんな手が取れるということはそれだけ強いということだ。
幸いにして私自身はそこまで警戒しなくていい。
そう私自身は。
「追い詰めたぞ!」
「待て、何か様子が変だ」
兵たちが取り囲むように3名廊下で私を挟んでいる。
そこで冷静になれるあたりがここに選ばれた精鋭ということか……
外の端にいるチンピラと比べ物にならない。
変身しているせいで睡眠みたいな精神感応系は妨害されるしやりにくい。
けれど……
頭数が増えればまた話は別だ!
私の周囲に転送陣が4つ。
私の魔法によって呼応して来た編成されしメンバー。
なんてことはない。
さっききて準備したら元気がある状態で来られるメンバーしかいないのだから。
2足のライオンで大量の武器を背負う魔物……雷神。
見た目だけは謎のボロマントをまとった第二次性徴期の女子……アカネ。
全身ピンクの宝石ゴーレム……クオーツ。
巨大でこの廊下ではギリギリサイズのロボ。ではなくゴーレム……ノーツ。
この4名が加わるぜ!
「……っ!」「下がるぞ!」
1発でヤバさを見抜いたらしい。
ついでに言うとここからフルで補助をかけさせてもらうからどんどんやばくなる。
撤退していく彼らを尻目に補助魔法と"神魔行進"を使う。
みんなに私から神力の光が繋がって各々が神力を纏ったクラスに存在ごと引っ張られる。
一時的なオーバーパワー。
存在の格が引き上げられるというがこんなスキル誰も研究したことがないので何もわからない。
少なくとも。
「……ァ……」
「す……すごい……私の中にある悪魔の力と共鳴して、どんどん、力が溢れてくる!」
「ローズオーラ様の感じがぐんぐん増してきています! ローズオーラ様パワーですね!」
「パワー充填、天井突破。バトルモードに以降」
とまあみんなには好評だ。
乱用はできないけれど今ならば問題なしだろう。
凄まじいエネルギーが迸り廊下を焼く。
補助魔法を私が自己強化を各々が。
そのあと全員が動き出したが雷神が最も速かった。
床。壁。天井。柱。
全部使って跳ね跳ぶように移動する軌跡はまさしく雷光。
そのまま雷神が対集団向きの戦い方だと見せてくれる。
「ぬおーっ!?」
「な、なにがぎゃっ!」
「ばかな、さらに速く!?」
敵にダメージを与えると加速する。
シンプルなスキルだがそれゆえに強い。
加速は威力増加も伴うしなによりそれでおわらない。
敵に違う武器で攻撃すると広域化する。
敵に連続でダメージを与えると近くの敵に追加ダメージを与える。
敵に連続してダメージが発生したさい特殊な追加ダメージが強化される。
1つ1つははっきりいって大したことのないスキルだ。
凶悪なアクティブスキルや魔法は多岐にもっとある。
しかし雷神の恐ろしいところはこれらがパッシブ……常時効果を発揮させられるスキルかつ重ねることができるということ。
いつの間にか何者の目にもとまらぬほどに加速し。
1撃が重いのにそこから光の雷撃みたいな攻撃が飛ぶ。
近くの敵が食らった先でまた別の武器が兵を襲う。
1度始まったコンボは途切れることはない。
無限に敵兵たちを襲う悪夢。
「な、なにさねっこいつ!」
「アルセーラさん、こいつ、たち悪いですよ!?」
ただひたすら通常攻撃を極める……そういった方向への極限化。
武技は華美だし便利で。
魔法は派手で有利。
スキルたちは優秀でそれのうえで彼が選んだのは確実性と常時性の暴力。
常時型スキルの1番はコレに対して効率も時間も使わないこと。
「……ッ……」
さらにいうと防御性能もあれこれ条件で増やしている。
○○の時に△△というタイプのスキルは非常に強くなりやすいらしい。
掛け算が大きいのだとか。
彼のアクティブスキルは主にあの意味のわからないほど早い軌道を制御し加速して身をもたせるのに使われる。
スキルの組み合わせ的にもホンニンの性格的にも便利な多数の武器操作にも。
ある意味彼だからこそできる凄まじい悪さを発揮するスキル構成だった。
多様で多起動な通常攻撃ほど使っていて楽しいことはない!
……そういう構成らしいのだ。
正直リーズナブルな組み合わせでやれていいコンボじゃないと思う。
もちろん私はやられたくないね!




