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六百二十六生目 翼手

 必死に逃げている。

 壁際にたくさんの斬撃やら打撃やら射撃やらやられてギリギリ避けて。

 走る走る!


「逃がすな、取り囲め!」


「ウオオオ、まだ礼もしていないぞぉ、よくもブタ箱に入れてくれたなぁ!!」


 背後からめっちゃ叫び声が聴こえてくる!

 リーダーに恨まれるのは少し覚えがあるからなんとも。

 とにかく距離を離さないと。


 狭いというのはアドバンテージにもなりうる。

 こっちは集団を個人で相手しやすいということだ。

 広いところで肉壁囲まれやられるのはなかなかこわい。


 まあ今みたいに狭い隅に追いやられたらどうしようもないくらいハメられてしまうんだけど!

 狭いということは互いに利と不利がある……

 そこらへんを理解して攻めないと普通に死んじゃう。


 まず素早く地面に降り立ってから床に毒を撒く。

 尾とをイバラ化させて先についている花みたいな赤い棘から毒を放出。

 私の首周りにイバラを巻くと同じように赤い花。


 私の毒は基本的にそんなには多くでない。

 多少の水滴を少し床にばらまくのみ。

 しかし……それでいい。


 私が廊下の角を曲がるころに向こうも廊下を曲がってきた。

 そのまま私の姿を見つけた相手は駆けて。


「「うぐごおああぁぁ!?」」


 激痛で足を上げ後ろに転ぶ。

 当然最前列がそうなったのだ。

 後ろに並んでいた兵たちはいわずもがな。


 私の今抽出した毒は溶解と激痛。

 ようは毒と言われて思い浮かぶわかりやすい毒。

 転げ回る瞬間に私はターンして飛び出た。


 ありったけの攻撃をこめる!

 イバラ! 土魔法! 地魔法! 火魔法! 銃と剣ゴー!

 私の全力はいつも魔法を1枠開けておく。


 敵が大量の火の玉やら床から壁から突如生えた針たちそれに床がひび割れあいた穴の中に落ちて。

 ついでにイバラが叩きつけてきたと思ったら爆発を起こしたりもして。

 散々な目にあっている彼らに悲報はさらにある。


「あ、あ! 消えた! ワープしたぞ!?」


「何!? ワープはできないはずだろ!?」


「消えたものは消えたんだよ!」


「ちょっと、邪魔だっ!」


「バカ、こっから先は何か落ちてるぞ!」


「「ぎゃあああ!!」」

 

 悲鳴に近い声たちを聞きながら私は近くの部屋に身を置く。

 彼らに重要なのは目の前から消えたという点だ。

 ついでにまた毒も踏んだらしい。


「遠くに逃げたのか!?」


「ワープでかえられたら大勢で乗り込んでくるかもしれない!」


「体制を立て直せ! というか近くにいることも含めて考えろ! 私は別の場所を探してきます」


「アタシは……とにかく準備を進めるさねえ」


 あんだけやっても変身体たちそのものにはほぼ傷が入ってない。

 正確には凄まじい速度で自己再生している。

 面倒さが凄まじい!


 あの目以外はたいした弱点じゃないという強さを活かして不意打ちすら数で押せ押せと動き回られるのは逃げる側としては最悪。

 動く壁。

 しかも攻撃してくる。


 こうなったらどう対処するのが正解か……

 考えれば考えるほど時間稼ぎという文字しか浮かんでこない。

 ならば向こうの時間稼ぎを止めてやろう。


 女性だけ別の方向に戻った。

 変身は解かずあちこちを見て周囲を警戒している。

 おそらく彼女は周囲一定範囲内に入った存在を自動で見つけるスキルがある。


 そしてどうやらその距離は狭い。

 さっき彼女が私を見つけた時は真下付近まで来ていた。

 凄まじい能力(チート)のスキルか!? と思っていたがどうやら制限が大きい系だろう。


 そしてそれならば対処方法はある。

 簡単だ。

 まずは彼女がこちらをいないと思うまで探させる。


 ここで焦るのはよくない。

 むこうの様子が明確にかわるまで待つ。

 不意に目を閉じた。


 今だ!

 火魔法ビームの"レイズフレイム"!


「なっ!?」


 遠方から光線が飛んでくるのだ。

 そりゃあ驚いてなんとか受け身を取ってくれる。

 かなり驚いているようだが彼女の身を焦がすほどにはいかなかった。


「敵はまだ近くにいるさねー! そっちか!?」


 彼女が叫びビームが放たれた方向へ一気に踏み込む。

 高速の前飛び。

 翼をたくみに使っているようだ。


 彼女は自身の検知に自信を持ってまっすぐ突っ込んでくる。

 さらに目はせわしなく左右を見つめているのだから正直かなり感知から逃れるのは厳しい。

 普通ならば。


 しかし彼女が次に見つけたのは部屋をくぐった瞬間に横からの狙撃だった。

 銃弾針とビームの。


「ぐっ!? そこっ!」


 肉体の自己再生を活かしつつ壁に向かって反撃の攻撃を振るう。

 意外にも……と言ったら失礼かもだがショートソードだ。

 いわゆる普通の剣を腕にある手で振るう。


 種類はなんだか手元は花開いているし刃は赤く輝いているし普通ではないけれど。

 さらに壁をあっさり切り抜いた腕前もハンパじゃないんだけれど。

 ただそこに私はいなかった。


 遥かどこか遠くから射抜かれた跡がずっと残っているだけだ。

 さすがに迂闊な動きは危険だと彼女は竜の目をギロリと見回す。

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