六百二十一生目 採掘
道中の敵は的確に不意打ちで仕留めてきた。
道を辿られないようにあえて無視したところもある。
全滅が目的ではないからね。
たどり着いたのは時空竜巻のはじっこ……がこの上にある崖。
地図上でもなかなか隆起していてここにわざわざ展開する軍はない。
不利だし。
もちろん互いに偵察程度はいるけれど軍的な価値はこの嵐があるせいでぐっと下がった。
なので夜はほとんど身の回り安全をとり異様な変化だけ起こらないか見ている。
というわけでこんばんは突撃おやすみなさい!
[スリーピング 淡い月の光が睡眠状態に陥らせる]
影魔法の1つ。
空から飛び降りて地上に落ちるまでに淡い光がこの場に野営している面々に降り注ぐ。
何かをしようとする前に気を失ってくれた。
本来なら1ポイント隊制圧してもすぐそばの隊が気づく。
しかし夜中なのとメイン戦地から大きく離れた場所なのも合わせ気付ける範囲にはいないようだ。
見た目もゴロツキを武装したようなやつらで明らかに真面目さを期待されていない。
まあ……数時間はなんとななるだろう。
そのまま私は近くの味方偵察隊に連絡し。
安全を確保してから魔法を通せるかチェックしまくる。
銃ビーストセージを取り出して4足バージョンで空のドレスを纏った。
赤に近い桃色の飾りがなびく。
やることは地道だ。
わかりきった作業をやるだけなので……
崖に向かって強めに探知してそのあとに空魔法でワープを空発動させる。
手応えでいけそうな場所を探るという手だ。
よくいうワープが不安定な場所というのはこれがシッチャカメッチッヤカな安定性で頼りにならない。
明後日の方向にワープするのは本当にやめてほしい。
うーん……たしかに外に出るのはなんとかなりそうだけれど。
帰ってくる方向性の空間に障害が大きい手応え。
特に時間を左右してバラバラに組み込む仕組みが厄介だなあ。
ただまあ……読み通りここらへんなんとなく不安定さが抑えられている。
つまりワープを通しやすい。
ここら物理的に竜巻が地形により発生できずなおかつ魔力照射光を近くに当てられることがない。
ほっとかれた土地は1番時空嵐のウィークポイントになっているという予想は正解だった。
地道に移動してチェックして……
うん!?
突然飾りの時の針を編んだものが強く反応しだした。
光を帯び特定の方向を指すかのように長い体を伸ばして指している。
こっち?
時の針飾りに引っ張らられるように移動する。
少しの距離と角度を逸れたら今度はグインとさらに指し出した。
……隆起した地面に。
まさかのここほれワンニャンかなー?
だったら強力な地魔法の出番だ……
[オペレーションディグ 地面を操ることで掘ったり盛り上げられる]
この魔法は派手に相手を潰したり大地を盛り上げ挟んだり大地を生み出したりみたいな派手さはない。
そのかわり土地を掘るということが出来る。
これはすごく説明しづらいがようは……
「とりあえず掘るか」
魔法発動。
大地に干渉して私の前にある陸地がモリモリと形状を変えていく。
穴を真正面に通す。
そのために大地はえぐれ。
えぐれた分の土が外の横に盛り上がり。
押し込まれた大地たちは崩壊など起きようが無いほどに安定してとどまる。
私が進めばどんどん穴が広がり洞窟に。
洞窟は進んでいってトンネルに。
やがては地形貫通するだろう。
地形を変える。
それがこの魔法能力だ。
掘るのに行動力消費が馬鹿にならないから効率化や加護を得てないのならば対策必須だ。
私は服違いでもバンバン掘り進んで行くけれど。
この安定したトンネル状!
魔法なので細かいことを気にしなくても勝手に適切な感じになる。
最適化は私が事前に調整しておいた。
崩落事故や騒音とは無関係。
水脈にだけは気をつける。
水脈に当たるのを避けるにはニンゲンだとかなり苦労するだろう。
私は魔法と身体能力を活かして脳内マッピングしたとおりに進むのみだが。
おっと……さらに時の針が隆起し光が明滅しだした。
反応が過敏になったところで魔力探知して空魔法の反応を見てみる。
……うわっ。
なんて理想ポイントなんだ。
というかこの神の力が揺れるような感覚……
龍脈が近い。
確かに龍脈が近い場合特別に全体的に良くなる。
簡単に言うと普通の魔物でも能力が跳ね上がる。
私ならば……
もはや朱竜に隠す意味はないから神力を使おう。
私は首からさげたお守りに力を集中する。
あっさりと神としての力が解放された。
よし……これなら。
私が前方に向けて空魔法"ゲートポータル"を放つ。
光で出来た輪が放たれ大きくなりトンネルギリギリのサイズまで拡張して完成した。
これでゲートAが完成だ。




