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六百十九生目 撃破

 私はみんなに状況を伝えた後に来た道を戻りだす。

 炎に包まれた神域から世界の領域へ戻ってくる。

 本来ならココから外の景色は遠くに行くとモヤでどんどん見えなくなる。


 しかし……


「んだありゃ!?」

「外にめちゃくちゃ嵐が!」

「さっきよりやばいんじゃないかな!?」


「……いや、今入った念話によると、元々城外にもあった時空の渦はそのままだったのが、渦が消えたらしい。順調に勢力は削れているんだけれど……」


「ひえーっ、せっかく長年の夢であるここの攻略果たせたのに、おじさんまいっちゃうよ!? 喜べないじゃないか!」


「そんな……間に合わなかった?」


「まだ……まだ大丈夫なはずっ」


 空間がおかしくなり地形があちこち剥がれて浮き上がってるのが見える。

 そしてここから……兵たちや飛空艇が見える。

 外と繋がってしまった。


 そして外は時の内側に閉じ込められてしまった。

 嵐の外側は"千里眼"を飛ばしてもよくみえない。

 ワープ魔法は安定しているようだけれど……


 出ていったら戻ってこれるか。

 魔物軍はワープ頼りな部分もある。

 念話を……


『その、今確認した。倒れて帰っていった魔物軍は、この戦場に帰れている……?』


『まだそんなにはいないが……残念ながら、向こうからこちらに侵入できない話が上がっている』


 うぐぐ。

 それめちゃくちゃヤバいなあ。

 完全に私が干渉したほうがいい。


「それにしても、俺らがやったことは無意味だったってのか?」


「いんや、そうでもないみたいさ。ほら、あれ見てみ」


 ペラさんが指差した先。

 そこには……え。

 なに? 何が見えてるの?


「えっと……どこ?」


「俺の目が悪いから何も見えないってわけじゃなあなさそうだよな?」


「私も見えない……」


「あー……ほら、おじさん役職がら目は鍛えているから。望遠鏡もあるからみてみな」


 イタ吉が望遠鏡を借りた。

 私も"千里眼"で指す方向を見てみよう。


 遥か遠くの先。

 竜巻の部分。

 ……少しずつ広がるのではなくこちらに後退している?


「んあ、狭まってねえかあの竜巻」


「さらにいうと、時折厚さにムラができている。長年見てきたおじさんが言うんだから間違いない。あれはほうっておけば自壊する。逆に言えば……」


「お、おい! また広がってるぞ!」

「……なんだあの魔力光?」


「誰かが意図的に維持しようとしている。しかも前よりもずっと強く。隠蔽できないほどにねえ」


 ペラさんが舌なめずりするかのように視線を傾けていく。

 たくさんある光線たちはそれぞれ別のところに繋がっているようだ……

 常に見やすいわけじゃなくてすぐに紛れてしまうのは魔力隠蔽工作か。


『おそらく何らかの兵器で、渦の外周を無理矢理拡張しているみたい! たまに魔力光が見える。それと、こちらは完全に時空を歪めていた元を壊したから、向こうが次善策打つ前に兵器を叩ければ……』


『よし、すぐに向かわせる!』


 念話連絡の方はこれでいいとして……

 問題は私達だ。

 おそらくこの砦からはすぐに抜け出せるがどこに向かうべきか。


 少なくとも戦争するメンツではない。

 とりあえず本部からの指示は特にないし……


「帰ろっか、私達」


「この状況で!?」


「「えぇー?」」


「なんというか凄い割り切り方だね……」


「正直私達って軍全体どうこう出来るような能力ないから、いるだけ邪魔というか……ペラさんやハウコニファーはもう大本番完了お疲れ様だしね」


「なんというか……」


「本当におじさんたち、それで良いのかなぁ、なんか明らかにそれどころじゃないような……」


「気持ちはわかるんですけれど、やっぱり軍も作戦とかあるんでよほどのことでない限り協力的な動きを軍で訓練したものじゃないとむしろ邪魔かな……って」


 これは本当。

 ジャグナーが言っていた。

 冒険者の領分はだいぶ違うのだ。








 なんとなく納得行っていない面々をつれて作戦本部まで戻ってきた。


「駄目だな。こちらにもやり方があり、領分があり、そしてなにより民間人を守る義務がある。たしかに君たちへ任せた任務は重要なものだったがあくまで最適な一般団体へ委託した形だ。軍としての参加はあらゆる面で認められない」


「ほらね」


 みんながなんとなく残念そうな感嘆符をもらす。

 明らかに冒険ハイなだけでわざわざこんなところに飛び込もうとしているだけだろう。

 戦場に飛び込むのは冒険じゃない。


 不服そうな顔を見てか士官は言葉を続ける。


「それに……おそらくキミ達冒険者が本領を発揮するのは、この後朱竜がきてからだろう。時空の竜巻をどうにかして、それから撤退する。その時にどう動くのかが1番重要だ。もちろん誰も朱竜自体をどうこうできるとは思わないが……」


 みんなが一瞬使い捨てにされるのかと困惑が広がったがすぐに安堵される。

 やるのは確かに撤退戦だけれどそれはただ巻き込まれるだけの兵を逃がすためだ。

 肝心の方は最重要目標のためギリギリまでふせられる。


 朱竜の撃破だ。

 

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