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六百十一生目 休憩

 スイセンはともかくとして。

 私たちはゼクシオからやっと距離をとれて。

 全員深い溜め息をついた。


「「ハアァーー……」」


「なにあれ!? 絶対やばいって! 殺されるところだったって!!」


「キッツウ!」

「変なこと言ってたしよー」

「…………」


「あれ、自称神とかそういうのじゃなかったよね。明らかに人間じゃなかったしさあ。おじさんの希少な寿命削りに削っちゃったよ。神を名乗る相手の中でも、格別に恐かったなあ……」


「うんまあ、利用しようとか関わろうというのが厳禁の相手だったね……」


 さらっとペラさんが他にも神に出会っているあたりが気になるけれど仕方ない。

 明らかに冒険者やりこみガチ勢だし。

 深い場所に何度も潜り込んだんだろう。


 ゼクシオに関してはもう事故だと思うしか無い。


「パ・テンケ……戦場の神……」


「デウに会うだなんて、戦場から生きて帰ったら自慢できるねえ……」


「へぇー、本当に各地でいろんな名前あるんだな?」

「皇国ではゼクシオだったな」

「名前多くねえ?」


「まあ、各地に伝承がある神ゆえだよね」


 なかなか珍しいタイプだ。

 きっと常に戦場を駆ける神として親しまれ……いやきっと恐れられてきた。

 それは人々の戦争への戒めにも似ている。


 戦争は恐ろしいと。


 私達はこの建物内の廊下を進んでいく。

 たまにある部屋をくぐって見ても何もない。

 何もないということは普通の部屋があるだけで仕掛けや魔物もなにもないということだ。


「一体どこにいきゃあいいんだ……?」


「全然わからない。私のレーダーに引っかかるものもないし……」


「今までは封印位置が指し示す方向が指針だったけれど……うん。やっぱりあまり感知できない」


 ハウコニファーが光を周囲に放って探知するが何も引っかからないらしい。

 どうやらここのエリアに封印すべき場所はないらしいけれど……

 それはそれで困るなあ。


 何せ私達はこの時空の渦を完全に封印しなくすためにきたのだ。

 まだ先のエリアがあるのかな……


「どうやら、ここが最後の安全圏かもねえ」


「じゃあ休憩にしましょう。ずっと行動し続けているから、効率が悪くなります」


「さーんせえ、もうイオニムシの相手は嫌だ」

「屋内だから休むのは楽だなー」

「急いで休むぞー!」


「確かに、矛盾しているようだけれど……ここでミスしたら、大幅な遅れになっちゃうもんね」


 全員が納得したところで野営。

 屋内だけれど。

 この先はターニングポイント。


 そして戦いはこれだけでは終わらないからこそ休める時に休むしかない。

 冒険者である面々はともかくハウコニファーは明らかにいちばん消耗している。

 イタ吉たちは単に体力管理がうまいだけだ。


 ペラさんも自然に筋肉ほぐしを行い出したし私も亜空間から色々だして食事をとる。

 ハウコニファーはいかにも気丈そうにしていて1番元気なように見えるけれど……

 あれは緊張と興奮の効果だ。


「あれ?」


 ストンとハウコニファーは座ると

不可思議そうな声を出した。

 思ったように身体を動かせないらしくもじもじしている。


「あー、おじょうちゃん、体が動かないのかい。だいぶお疲れだねえ」


「いや、アタクシはまだまだ……」


「まあ、初めての大本番だからね。自分の体調管理は難しいんだよ」


「おじさんが手を使って色々やってもいいっちゃあいいんだけれど……ね、ほら、明らかにまずいから……」


「へ?」


「ああ……わかりました、私がかわりにやります」


「悪いね」


 多分ハウコニファーは気にしないけれどあまりに絵面が悪すぎる行為になるからね……

 私は爪をちゃんとトゲとして引っ込める。

 それからハウコニファーのそばにかがんだ。


「ハウコニファー、マッサージしてあげるね」


「ああ、いつものだね!」


 ……娘が孫みたいな年齢の異性の子にやるのはちょっとね。

 ハウコニファーの顔がパッと花開く。


 私がにおいの違いをもとに的確にマッサージする。

 ホルヴィロス仕込み。

 鍼灸もできなくはないし帝国仕込みであるんだけれど……子どもには……さらにいえば肉体労働初心者にはいらない。


 さて……ここかな。


「あひゅうよ〜……一回目の時より効いてるかもぉ〜〜……からだがバラバラなの〜〜」


「お嬢ちゃん色々大丈夫かい……? トリップしている気がするんだけれど。なんかスライムみたいになっているし」


「子どもって反応がすごいよね……あと、やっぱ私に教えられた相手がまた凄いのもあったからなあ……」


 最初の訓練後にボロボロなのを見かねてマッサージしたらこのマッサージ欲しさに2回目からやる気を出したレベルだ。

 私は施術を受けても餅になる程度で済む。


「つまり、それだけ疲れてたんだよ。ただ、頭はなぜかわからない時があるんだ」


「ま、おじさんも経験則的にあるねえ、そういうこと」


「なるひょどぉぉ〜〜」


 とりあえずこちらはいいとして。

 私はイタ吉たちの方を見る。

 イタ吉の好きなスパイシー肉ジャーギーたちを渡した。


「ホイ」


「ん」

「よし」

「フフ」


 これでよし。

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