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六百十生目 既読

 戦場の神が来てしまった。

 ええと……"観察"?


[ゼクシオ Lv.255 比較:無謀だ]

[ゼクシオ 戦場の神の一柱。あらゆるあらそいに対する想いや概念それに散る命と砕ける音によって構成されている。戦場で突風が通った後首のない死体が増えていたら、それはゼクシオのせいかもしれない]


 む……無謀だ!

 意味のわからない能力を見た。

 そしてやはり戦場の神らしい。


 私が"観測"するの自体を何も気にしていない。

 そりゃそうだろうココまで隔絶した差があればね。


「ええっと……それで、おじさ……わたくしたちに何か御用が……?」


 ペラさんが聞きにくいことを切り出してくれた。

 ペラさんからしたらいきなり神を名乗るやばいやつとエンカウントしたにすぎない。

 私やイタ吉ならなんとなく察せはするけれど。

 それなのに言い出してくれるなんてすごい度胸。

 さすが冒険家ランク最高位……


「用向きは、2つ。まず……貴公らは戦の兵ではないな……兵の気が感じられぬ……ここは戦地だ、戦の場に相応しくないものは、帰るがよい……」


「あ、あの! まだやることがあるんですすみませんなんでもないですごめんなさいころさないで……」


 ハウコニファーが一気に言葉をかけて自分でしぼんで涙目になっている。

 それをゼクシオが見て……

 特に何もなかった。


「我が前に立ちふさがる兵でない限り剣を振るうことはない……やりたいことなども知らぬ……戦場(いくさば)の気が紛れるというだけだ……そして。第2のことだ」


 神として不遜に。

 実力通りの威厳で。

 なにより下々の心など一切理解できない態度だ。


 さすがに前ニンゲンオブジェ的なものに熱意とかの方向で評価していただけある。

 まあニンゲンではないしね……

 生物かも怪しいよね……


「第2……」


「第2は、そうだな……戦場に呼ばれ、我はここにいる。しかし……」


 ゼクシオは顔を見回して。

 再度こちらを見た。


「ここはどこだ? 我の求める戦場は……先程の合戦もなんだか触れられぬものだったが……」


 神様。迷子。





「……とまあ、ココは時に囚われた場所なんですよ。戦場があるとしてもここの外ですし、ちょっと外でも大人しくしていてもらったほうが……」


 私達はなんとか伝わるように説明した。

 こっちの事情はともかくまさか相棒のカルクック的な神にめちゃくちゃに連れ回されて誰も何もわからず迷子になってここまで来たとは思わないでしょ。

 最強の迷子だよ。


「ほほう……時と空間の歪みにより、永遠の戦場が生まれているとも。それもまた、戦い」


 嬉しそうにおっしゃってるなー!

 変に機敏が分かるようになってしまった。

 しかしまた今度は深くため息のような動きをする。


「だが、戦いの先がないのは、戦いではない。戦いは日常の中に組み込まれてはならない。日常こそが、戦いに備えるための時なのだから」


「あ、アタクシたちは、その戦いをおわらせに来たんで」

「ほう」

「うひゃあ!?」


 ハウコニファーは素っ頓狂な声でビビる。


「戦いを終わらせる、か。それもまた、戦い。そこに我が相棒は惹かれたのかもしれぬな」


「……その相棒さんは話さないんですか?」


「相棒は、我が半身。共にあり、我の力の化身でもある……故に話す力はない。かわりに、我を戦場へ導き、戦場を駆けるものだ」


 要はあんまりコントロールがきかないのか……

 不随意筋みたいな扱いだなあ。

 心臓まわりの筋肉みたいな扱い。


 騎乗されているカルクック的な半身はただボウと立ち尽くすのみ。


「それにしても、だ。時と戦う者たちよ、我にその顛末をみせよ。おそらく、我が半身はそれを見届けに来た」


「んあ? 手伝ってはくれねーのか?」


「我は戦場の神……戦いを見届ける者。故にどちらが勝つかに加担せぬ。我の前に立ちふさがる者のみが、我の敵だ」


「ちぇっ」


 さっきイオニムシを倒してくれたのは単なる偶然だ。

 なんなら私達がイオニムシと戦っていたらずっと見守っていたかもしれない。


「じゃあ、仕方ないし進ませてもらおうか」

「それと」

「はい……」


 会話のテンポが噛み合わない……!


「ぜひ戦いの話を詳しく聞きたいと思っている神の……情報を集めている。身の細い我のように2足型で、我より小さい……そして、顔や周囲に花を咲かせていたと記憶する。そういった神だ」


「いやあ、わたくしたち見ての通り小市民なんで、生きているかみさまに関しては5大竜さまくらいしか……」


「そうか。邪魔をしたな。ゆくがよい、戦う者たちよ」


 ペラさんが謝るようにしていると何か満足したのかゼクシオはその場から退いてくれた。

 ……頭の中で高速で神々のネットワークに【会話部屋】で接続。

 自前の部屋を作ってから部屋に入室させるのをスイセンだけにする。


 その隔離室を確保してひとこと。


[もし、剣で敵を両断しつづける、戦場を駆ける神に心当たりあるのなら、煉民主国で話を聞きたがっていたよ]


 少しして既読した後があった。

 そのあとしばらく返事が帰ってくることはなかった……

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