百六十五生目 条件
「ええ、僕にそんな決まりごとを作る仕事だなんてムリですよローズ様!」
ドラーグに食ってかかられるとその大きさで迫力がとんでもない。
かわいい雰囲気に合わせて牙で飾られる竜の顔は恐怖そのもの。
慣れたものだけれど。
「とは言ってもドラーグは頭が良いしかなり理性が強い。みんなが楽しく暮らすのはドラーグ自身が狂暴化しないことにも繋がらない?」
「う、うーん」
まあぶっちゃけここらへんは屁理屈でもある。
ただ魔物の中で抜群に頭が良いのは間違いなく。
頭が良いからこそ無秩序に秩序が取れている野生界では苦労していた。
「まあそこらへんは考えておいて」
「僕もドラーグさんのほうが良いと思います」
「まあ他のやつがやるより遥かにマシよね」
「そ、そうかな……?」
たぬ吉やユウレンから援護射撃が来た。
特にたぬ吉はドラーグと仲が良いから揺れている。
この調子で次々行こう。
「アヅキは調理や衛生面を宜しく。詳しいことは後でね」
「わかりました」
2つ返事が頼もしい。
衛生って何かわかっていないだろうがそこはおいおい。
「狩りの担当は……」
「俺!」
「他にやりたい人は? ……よし、じゃあよろしく!」
「ああ! 任せといて!」
インカが立候補したので問題なく決まった。
「またここでも土器を焼いたりものを作ったりして今はただ広いだけの空間も、何とかしたいなって思っているんだけれど……」
「はーい、作る!」
「先生の新作……っ!!」
最近ご無沙汰だった土器作り。
ハックが立候補しユウレンがそのハックに食いついた。
ここも順調に決まっていった。
「軍事と警備はジャグナーに任せようかな。後で聞いてみよう。あとは本当は教育にも手をつけたいのだけれど……」
「それならおまかせください。私は幸いユウレン様の小さい頃に教師としても働いていたので」
「なかなかの腕よ、カムラは」
「そうなんだ!」
まだ難しいと思われた教育も何とかなりそうだ。
いや、でもなぁ。
「ただ、そうなると少し問題が……この万能翻訳機、根本的に数が足りません」
「うん、やっぱりそこの解決しなきゃね……」
「あれそこそこ高いから、さすがにこの群れの魔物全員に配るには足りなすぎるわよ」
「主、申し訳ありません、もう1匹竜を狩って来ます」
「え!?」
ドラーグがビビっているがドラーグのことではない。
ドラーグには言ってなかったけれどユウレンとアヅキは大きな火竜を仕留めた事がある。
そのおかげで色々と調達出来ていた。
しかし万能翻訳機は今まであそこで市販していたものともらったもの十数個を組み合わせて何度も再分配し直す事でやりくりしている。
群れのみんなに配る分の確保だなんて到底ムリだがあれがなければ私や万能翻訳機を持つ魔物を通してでしか、ご近所会話も難しい。
連鎖的にトラブルが起こるのも遠くないだろう。
「まあ冗談はともかく、この群れ内でもどうにかして調達出来るようにしないとね……」
「いや、冗談では……」
「どうにかするには、やっぱり博士に話をする事になるのかしら」
「うん、この後行ってみるね」
ユウレンの言うとおりこういう時は発明者の元へ行くほうが良い。
「たぬ吉は、全体のサポートをお願い。私もやるからこまめに連絡するよ」
「あ、わかりました」
後は細かく話を詰めていった。
会議は程々に終えて早速行ってみることになる。
ちなみに私は遠征と探索係。
ぱっと空魔法で移動できるぶん楽だからだ。
「なんじゃ、今日はひとりか」
九尾家に空魔法"ファストトラベル"で移動して中に通して貰った。
自動で運ばれてくるお茶を飲みつつこれまでの経緯を話す。
「かくかくしかじか……
という感じまでが現状ですね」
「お前さん、自ら死にかけに行ってないか……?」
「というよりも必死に生きようとしたら次々とトラブルと混乱が大きくなっていく感じですね……」
私と九尾、同時にため息をつく。
私のは振り返っての疲れ、九尾のは……呆れか。
「まあ良いわい、で、大方予想はついたが何かわしに用があるんじゃろ」
「ええ、実は群れが大きくなってしかも多種族入り乱れているせいで私を通してでしか会話できない状態も多くなり……」
あの会議であった流れも伝えておく。
「かくかくしかじか……
という感じでコミュニケーションの問題どうにかなりませんかね」
「ぶっちゃけると何が欲しいんじゃ」
「ぶっちゃけ万能翻訳機みたいなのこっちで作れるようになりたいです」
特許持ってる人に特許の中身渡せという暴論でもある。
しかもお金渡すのはこの九尾に対してはほぼ意味がない。
話し相手が欲しいだけで金ばら撒くような相手だし。
「ふうむ……まあ……ひとつだけ、条件さえ飲めばやってやらんこともない」
「本当ですか! してその条件とは……」
「わかっとるじゃろ?」
……やはりか。
「実験に付き合ってもらうぞ」
九尾が邪悪に顔を歪ませ笑う。
……やはりか。




