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六百六生目 一発

 塔の内部も大きいためいくつもの部屋がありそこで誰かが仕事し暮らしていた。

 その名残のみが残されている。

 全ては戦火によってのみ消されていく。


 戦いが済んだ場所というのもなんとなく不気味だ。

 どちらの戦力も尽きていて。

 誰かがそこの死体たちから動き出すんじゃないかと錯覚する。


「ひやっ!?」


「どした? 今の所なんもなさそうだけど」


「今、あそこの体が動いて……!」


「ああー……子どもには刺激が強い絵面よなぁ」


「ビビんなよー、手ぇつないでやるから」


「あ、ありがとう……って爪ぇ!?」


「へったくそだなぁ、ちゃんとショキュウ掴めって」


 肉球のことだ。

 ハウコニファーはイタ吉の爪に軽く串刺しにされつつも今度こそちゃんと握る。

 大丈夫流血沙汰じゃないよ。


 そんなちょっとしたやりとりがなんだかとても微笑ましくて。

 このおぞましい戦場においても失ってはならないもののような気がした。

 ハウコニファーが心なしか少し安堵していた。


 私たちはさらに進んで塔の最下層。

 明らかにモヤが濃い。

 塔の出入り口が塞がれているせいか特にそう感じる。


 私はイタ吉と代わってハウコニファーと手を繋ぐ。

 先程は大きなダメージを受けたハウコニファー。

 心の安寧という点で言えば環境は先程に負けずとも劣らずなひどさ。


 静かであればいいってもんでもない。

 けれどイタ吉のケアのおかげか。

 それともハウコニファーの覚悟が固まったのか。


 揺れる心は抑えられにおいの中にちゃんと向き合うようなものを感じた。


「死滅の名にて命ずる! 我が身を散らし、おぞましき身を蝕む力を封じよ!!」


 朗らかな宣言。

 それと共に手首から先が消えてなくなる。

 私はそちらの手をすぐにとって治療をはじめた。


「せ、成功……!」


「やるじゃねえか!」

「消えたぜ、モヤ!」

「これで安心だなぁ」


「いやあ、おじさんも途中からヒヤヒヤしちゃったよ。だいぶ不安定だったし、モヤはしつこいし。またあの大ダメージ封印をしなくちゃならないかとねえ」


「ハウコニファー、気分は?」


「さっきよりだいぶましいでででで」


 よし元気そうだ。

 痛がっているハウコニファーガ逃げないようにしつつ再度手を生やす。

 あとは……


 このモヤがなくなり夢の跡から移動するのみだ。






『……お! やっと繋がった! ローズオーラ、そちらとの連絡が急に途絶えたぞ。時空の乱れが原因か?』


『あ、そうなの? そちらに変化は? こっちは今、大きな時空の乱れを封じたところ』


 帰り道の途中まさかの念話があった。

 どうやら外と念話が通じていなかったらしい。

 これまではそんなことなかったから油断していた。


『そちらは順調なようで何よりだが……こっちは戦況が大きく動き出している。地上の兵器戦が本格化しだした。本当はもっと遅延をして、時間を作るつもりだったのだが、向こうはかなり本気で来ている。すまないが……』


『うん、1発で、ってことだよね。』


『そうだ』


 向こうも初見攻略を無茶振りだとわかってはいる。

 わかった上で命令するしかない。

 それにしても展開が早い……


 こちらのおおよその作戦は鉄壁籠もりに見せかけた雷撃戦だ。

 魔力結界や物理的な障壁それに地形を用いてひたすらに敗走(・・)をする。

 とにかく互いの死者を限界数まで落とす。


 今回ホルヴィロスの手助けは前半……そう前半は少なくとも期待しない。

 ホルヴィロス前提で突っ込んで死んで生き返る戦法は色々な面でよろしくないからね。

 そもそも相手を軒並み殺すかこちらが軒並み死ぬかの戦いは犠牲が大き過ぎる。


 アノニマルース軍は緊急避難装置が鎧についていて大打撃と共にアノニマルースに送り返される。

 前は私が戦略塔にいる必要があったものの今回は誰かが戦術塔にいればなんとかなる。

 そう改造されたらしい。


 ただ征火隊や敵はそうもいかない。

 命がけだ。

 落としたイオス級戦艦も全員が全員捕虜として生き残ったわけではないだろう。


 とにかく被害数だけを競う戦いは誰にとっても得が薄い。

 ゆえに今回は最近この世界で流行りだしているらしい戦法が取られた。

 ……基本大規模戦闘であればあるほど電撃戦が好まれてきた。


 出来得る限り速く攻め入り出来得る限り早く略奪し出来得る限り早く敵将を討つ。

 特に敵将こそ崩せば総崩れになったからこその戦法だ。

 ただこちらの世界現代でも変化してきているそうだ。


 まず敵将崩しが総崩れの原因になりにくい。

 軍は本格的に司令部を組みまた頭が失われたときの対策も組み込んである。

 昔は家と家の対決だったため上の家が死ぬことに大きな意味があったけれどもはや今は組織対組織。


 結局とるべき首が多すぎて総力戦になってしまう。

 当たり前だが雷撃戦は長期間の運用には脆い。

 昔は守るには3倍の戦力が必要だとかも言われはしていたようだが。


 戦力そのものの膨れ上がりや兵器の大量導入がものごとを多く変えてしまった。

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