六百二生目 地砕
イオニムシたちの連続斬りを避けたり受けたり打ち返したりする。
やはり重くイバラはちぎれるし鎧は砕いてくる。
すぐ再生するけれど。
ただ私の肉体には衝撃が来るし生命力は削れる。
まだ余裕なうちに2体ともちゃんと相手にしよう。
なあにまだまだ人知を超えた能力であったりはしない。
あくまで魔物としての強さがあるだけだ。
「おばさんの本気……意味がわからない……というか目でおいきれない……」
「いやあすごいね。何がすごいかって、この強力な2体に対して押してるね」
「ペラおじさん見えるの!?」
「もちろん。あと、これでもおじさんの回復も同時にしているし他にも気を回してて、魔法も使うと……もはやメチャクチャな強さだねえ」
ふたりの会話を聞き流しつつ電気魔法"サブソニックスピード"で加速。
魔法を設置。設置。
よし。今だ!
「"エレクトロトラップ"発動!」
あちこちから電気の走る道が出来る。
設置しておいた魔法を使ったのだ。
なんとなく把握した動きを読んでイオニムシを雷撃の網にはめる!
ひどくビリビリと感電して吹き飛ぶ。
設置型は当てにくいかわりに高威力という付与効果がある。
私も食らったことがあるからよくわかる。
ぶっ飛んだふたりは別々の方向に行ってしまった。
片方は私だがもう片方はペラさん か。
「よし、割り込むなら今だな」
ペラさんも自身の体が想像どおり動くのをチェックして。
生命力が十分戻ったと判断して駆け跳ぶ。
来たイオニムシに対して再び刃を叩きつけイオニムシも刃を返す。
イタ吉たちの方をみてみたら相変わらず危なかっしい戦い方をしている。
体に生傷を多く負いながらもけして深入りはさせない。
捉えたと振るわれた大振りを誘いだと気付けるのは影をきったときのみ。
良く比喩表現で影を切ると言われるけれどイタ吉の場合は本当に自身の幻影……影を斬らせる。
イタ吉の影を斬ってしまえばスキだらけのところに小イタ吉が跳んで頭を踏みつける。
蹴って跳ぶと思いっきり体勢を崩した。
鋼の銀色光に濡れた刃で身体をぶった切る。
背中からざっくりと行かれたがギロリと見るように首だけ振り向く。
剣を2本の腕で回転するように剣を振り尾刃イタ吉に反撃。
しかし尾刃イタ吉はむしろ幸いとその攻撃を腕で軽く受けつつ更に小イタ吉と共にインへと詰めた。
……一瞬イタ吉が数倍の数に膨れ上がったかのように見える。
その数倍の数が一斉に斬り込みだした。
もはやイオニムシは剣や銃を振り回しているもののどれが有効打かすらわからない。
全てのイタ吉が通り過ぎた時には足跡をたくさんつけられて地面に引き倒されたイオニムシが残るのみ。
たくさんの傷が鎧に増えていた。
さっきまでいたたくさんのイタ吉はもういない。
「はぁ、はぁ……どうよー!」
さすがにノーリスクではないらしくイタ吉は凄まじい発汗と共に疲労しきっている。
減った生命力補充に今度はイタ吉たちに"ヒーリング"を飛ばしつつ。
まだ立ち上がるイオニムシをこっちのついでに流し見る。
まだ立ち上がっている……たしかに残り耐久力はごっそり減ってのこり3割もない。
ただ彼らにおそれやひるみなどありはしない。
命なき鎧の兜から凍てつく炎を吐き出した。
「しつけぇー!」
「まだ立つのかよ!」
「疲れたぞ!」
私達はこの1戦にかけているわけじゃない。
ずっと長い間戦うその1部なのだ。
対して向こうはここで尽きるほどの全力。
大前提としてしんどいのだからイタ吉はよくやっているほうだ。
再び消極的な動きでイタ吉は敵を誘う……
ローコストで動かないと少しの間はしんどそうだし。
私は目の前にいる相手を蹴り飛ばす。
2対1でもなんとかなっていたから1対1なら余裕も生まれる。
ということで攻めるために蹴りをした足をそのまま敵の頭に絡め取る。
攻撃するさいにちゃんと聖なる炎は纏えるから捉えられる。
とりあえずこのまま足を絡め腕を取り。
拘束をしてから変則的に武技"地魔牙砕"!
「イーヤッ!!」
大地の力と共に光ごと大きく噛みつく!
原始的な噛みつくという力。
そしてそのまま引きちぎるという野蛮なる行為。
光の大きな牙はまさしく何十本もの剣に等しい。
当然土属性が付与されている。
無事では済まない。
無理矢理振り払い私から解放されてイオニムシは耐久力を大きく削られ残り1割。
急いで私から離れていった。
かなわないと踏んだらしい。
武技"地魔牙砕"の恐ろしいところは私の魔物として使える武技ってだけで普通の武技なのだ。
使用に際して凄まじいデメリットがない。
武技自体のリーチとか大振りだとか必ず床についていることとかしかないのだ。
……いやまあこれはこれでデメリット大きいのかな?
神域展開で色々デメリットを打ち消せるのは楽だ。




