六百一生目 結晶
聖なる炎が味方全員に付与された。
「それを使えば通るはず!」
「ついでに俺の力もつけてやる!」
小イタ吉たちが2つのイオニムシたちを牽制し最初のイオニムシの銃撃をペラさんがかわす。
手すきになった尾刃イタ吉が床にその尾を刺すと……
鋼な光の刃が大量にイオニムシの踏む床たちから生える。
硬い銀色の傷が敵を切り裂く!
「よっこいしょ!」
「そして当然俺たちは当たるわけない!」
「おおー、いいねえ。おじさんはこれかな!」
ペラさんがイタ吉たちとかわるように両腕に何かをつけて突進した。
腕には赤白い炎を纏いながらも不思議な物質的ではない刃を持った2振り。
拳の上から短く太い刃が伸びている手甲タイプの武器だ。
本来鋼鉄の刃が普通にある場所にはまるで風が吹いたかのような独特な作りをした刃が。
さらにそれを覆うように風の光で出来た刃に白炎もついてオトク。
見ただけで明らかに属性ダメージは盛りに盛っているだろう。
腕を振るえば牽制の武技で斬撃の光が飛ぶ。
細かく複数に分かれていた。
敵は剣で弾きつつ防御を固める。
ペラさんがそのスキに接近すれば懐に刺しこんでいく。
接触するたびに強く燃え上がる。
イオニムシが露骨に嫌がり大振りで払おうとしているあたり良く効いているらしい。
「よっこいしょ」
スタミナが切れるあたりで離脱してペラさんの後退を私の銃ビーストセージ連射で支援しつつ……
闇魔法!
[サンセッツ 吸着力のある闇の球体が空から襲う]
イオニムシのいる場所が急に暗くなり空を見上げる。
そこに黒い大きな球体がどーん!
3体もろとも巻き込む。
散って逃げようとしたようだけれど引っ張る力が働いたからね。
闇の黒い球体が潰された跡に出てきたのは床に足をめり込まされたイオニムシ。
結構なダメージが入ったはずなんだけれど顔色が変わるわけではないからなあ……
……よしよし。
"観察"したらみんなの攻撃で生命力はちゃんと3割程度削れている。
「ちゃんと効いている! 手を緩めないで!」
「「おうよ!」」
「時間もないことだしね……!」
「問題は、まだ明らかに攻撃の実力を発揮していないってこと……」
銃撃や斬撃は見せているものの気配の強さとは別にまだ消極的。
……3体がそれぞれに散った!
さらに明らかなほどに剣へとエネルギーが集いだしている。
それは先程まで鎧の隙間から溢れるばかりだった冷たい炎そのものだった。
駆けてタメ……放つ。
単純ながらその威力は見てのとおり。
斬撃が光で少し伸びて空を切り裂き。
そのまま凍てつくように闇と炎が侵食し結晶化していく。
地面に走ってやってきた!
「「おわっ!?」」
「やべっ」
「ひ、広い!」
「ハコ!」
私はハウコニファーをトゲなしイバラで連れて空へ逃れる。
他のみんなは!?
イタ吉たちは壁や天井に逃れたらしい。
ペラさんは……
脚に結晶が地面ごとついていた。
さらにいえば今の攻撃で傷を負ったらしく生命力がまあまあ減っている。
すぐに回復魔法を飛ばしつつイバラを伸ばす。
すでに安定化はしているらしく近づいても何もならない。
さらにもう1体が斬撃を放とうとしているのを横目で見つつ。
イバラで縛り上げて結晶を壊す……!
パキパキとすこしずつ音が鳴り出したところで唸り声をあげつつペラさんが足を捻り持ち上げる。
やっと結晶が壊れた!
今度こそ急いでペラさんがその場から脱して新たに飛んできた斬撃は私のイバラが受ける形になった。
イバラが結晶で覆われてどんどん迫ってくる……!
自切して急いで体勢を立て直した。
適当に攻撃魔法で相手の体勢崩しを狙いつつこちらの体勢を整える時間をつくる。
大盾化させたゼロエネミーにハウコニファーを護身させて私自身は跳んで前衛に行く。
イタ吉たちは食らいはしなかったものの斬撃を警戒してあまり前に出られない。
「多分、連続で放つにはエネルギー不足のはず……!」
剣に纏った炎たちはだいぶ薄まっている。
腕が4本で銃やら剣やらゴテゴテもっている最初の1体は私には向かわずにフラフラしている。
ああ……あれはヤバいな。
「イタ吉!」
「おおおう!」
「魔物使いが荒い!」
私の方に来ないやつはイタ吉に任せる。
波動斬撃も放たず私にも来ない時点で次の仲間を増やす気マンマンだからね。
"同調化"で伝えたいことを伝えてこちらの対処をする。
剣の振りが横薙ぎに首狙い。
これをのけぞって避けると2体目が跳んでくる。
こいつの刃を食らうわけにはイカないのでのけぞったまま身体を捻って回転させることで避ける。
「うわっ」
「なあにあれ……」
そのまま転がってから体勢を立て直し周囲から来る連続斬りに対してこちらも足を止めずイバラや鎧化トゲで受けつつ打ち返す!
残念……どうやら結構賢いらしく魔法を打たせないつもりだろうけれど。
こちとら冒険者だからね!




