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五百九十六生目 時間

 通称ウサギの魔物だがサイズはニンゲン大とキュートの差分からはみ出ている。

 それ相応に見た目もふてぶてしくひとを選ぶ目つきをしている。

 同時に後ろ足は凶悪そのもの。

 撮影用にウサギのコワモテセリフを訳す。


「そんなこといってるの!? ウサギさんなのに!?」


「実際こわいウサギさんだよお。あの脚から繰り出すピストンキック、速すぎて見えん」


「私も避けきるのは難しいと思う……しかもタフ。脚も早い。このままじゃね」


「このまま?」


 ハウコニファーの疑問はともかく早速散る。

 面倒くさそうにウサギが動き出した。

 ただ瞬間的な加速がえげつないので何の良い要素に繋がらない。


 私たちは取り囲むように移動し各々武器を振りかざす。

 単純な囲んで叩くという最強戦法。

 ただ。


「甘い!」


「ぬおあ!?」

「へぶっ!?」


 イタ吉が2匹吹っ飛んだ。

 今私もかなり危なかった。

 目の前に迫ったのを跳んで避けれた。


 ハウコニファーはもともとリーチ外でペラさんは私と共に跳んでいる。

 小イタ吉1体はなんとか間に合ったらしい。


「今の予備動作小さいねぇ……!」


「何度かやってみたけれど、本当に直接相手にしたくない……!」


 私とペラさんの意見は同じ。

 しかしペラさんだけ投げナイフを投げつけて私は攻めない。

 かわりに魔力を一定の波長で放つ。


 この波長……何の害も及ぼさない。

 ハウコニファーみたいな機敏なものが気づくだけだ。


「うん? この魔力……なんなのおばさん?」


「この後のお楽しみかな……とにかく距離を取ることに気をつけて!」


 ウサギの弱点らしい弱点は中遠距離の貧弱さにある。

 魔法はあるにはあるようだけれど回復が中心で攻撃が不得意。

 もっというと蹴りの強さに重きを置いているから自然に選択肢から消えていったのだろう。


 ついでにダッシュ蹴りやら飛び蹴りがあるので遠距離だろうと安心できる要素が少なかったりもする。

 ただ私達が囲みペラさんが仕掛けている限りまずそちらを優先してくれる。

 回転足払いを避けれた私達は距離を保ちつつ先制攻撃をする。

 投げナイフが毛皮に滑りながらも傷をつけていく。


 ただ浅すぎるのかウサギをいらつかせて脚を踏み鳴らすぐらいの効果しかなかった。


「どう!? 遅れた?」


「大丈夫です! 時間を稼ぎましょう!」


「急ぐんじゃなかったのかー?」


「今は少しだけ、ね!」


「ほう?」


 イタ吉に声掛けしつつ私も火魔法"フレイムボール"を量産する。

 剣ゼロエネミーが飛んでウサギの脚と斬りあってしのぐ。

 銃ビーストセージはイバラでうまく操り武技を含めて射撃を重ねた。


 そもそもごく稀にしか降らない雪に対応した魔物だとは思えない。

 おそらくはこの時代そこらへんにいたのだ……ウサギが。

 灰に潜み蹴りで穿つ恐るべき魔物が。


 その証拠とも言えるように私達の牽制攻撃たちを素早い身のこなしで避けて後脚の蹴りでそらし前脚で受け止めている。

 明らかに戦い慣れしていた。


「多少はやるか。だが……」


 吹っ飛んでいったイタ吉たちも戦線復帰して斬りかかる。

 尾刃の一閃に合わせて刃を上から踏みつけ。

 そのまま大きく飛ぶことで小イタ吉たちの追撃をかわし。


 そのまま身を翻して柔らかい腰を捻り身を投げ出して着地する。


「「ぐえっ!?」」


「ありゃ!」


「イタ吉!」


 2匹分のイタ吉があっさり体躯により踏み潰されてしまった。

 プロレス技みたいなので仕留められたイタ吉たちを私達がすぐにウサギに対し攻撃することで避けさせ解放。

 くっきり雪の跡に形が残った。


 ペラさんは爆弾に火をつけ投げつける。

 私はイバラで"猫舌打ち"の準備。

 イバラが細分化されトゲが引っかかり引き裂くように生える。


「かき乱して!」


「いくよー!」


 ハウコニファーがここで仕掛けた。

 杖から魔法を放つと大きく空から光のように光線状の炎が何本も降り注いでいく。

 最初は避けたウサギもさすがに連続で降り狭められてがんじがらめに捕らえられた!


「んぐっ!? し、痺れる……!」


 ウサギの動きが明らかに鈍った。 爆発にも当たるし私のイバラを半分も防げなかった。


「敵を邪なるものと仮定し、その行動に使う力を灼く……そういった力だから、今!」


「いや……これでもう大丈夫!」


 ……突如。この場に時間の乱れが走る。


「え?」


 ハウコニファーの疑問符声すらあたりに響くように。

 急にこのエリア内だけ異様な遅さ(・・)となる。

 かわりに瞬くようにどこからか跳んできた影が飛来し耳障りな魔法の音が響く。


 気づいた時にはウサギがひっくり返るほどのダメージを受けて倒れた。

 モヤがあたりに散らばり時が戻る。

 

「な、何いぃ!?」


「またおまえか。それにツレも多いな」


「お……お? ローズ見てえな奴らが!?」


 それは妖艶な美しき三つ目の魔物と言うべきか。

 2足で立つまるでホリハリーじみた姿の魔物たちがそこにいた。


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