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五百九十五生目 白兎

「おっ、引きがいい!」


 ついに見つけた。

 次の場所へ進むための扉だ。

 他の扉と違い明らかに豪勢だ。


 ただ豪勢な扉が熱により装飾がよれている。

 まるで崩れ落ちる前の栄えの虚しさを表すように。

 扉を重々しく開く。


 光の膜があるかのように先が見えない。


「えっ、これって大丈夫なの……?」


「大丈夫大丈夫、何度も入ったけど死んだことは一回もないよん」


「今回はすぐにたどりつけたけれど、前のときは時間ギリギリだったから駆け込むように飛び込んだけれど……全く大丈夫だったよ」


「じゃあ、いちばんのりー」

「にばんのり!」

「いや俺がにばんだ!」


「大丈夫……そうかな」


 イタ吉たちがもつれ込むように光の膜を通る。

 ペラさんが手招きして私と挟み込むように光の膜を通り抜ける……







 その先は雪景色だった。

 ちなみに私の初見感想は「なんで?」である。

 隣からもそういう声が聞こえてきてペラさんが笑う。


 ココは在りし日のンジャ・ログ城中庭。

 遠くに城が見える。

 空は雪雲。


「そ、外!? 間違えたの!?」


「ううん、ここで合っている。時空間がめちゃくちゃだから、ここの外はさっきまで来た中じゃないんだよね。ほら、空には飛空艇もないし、そもそも時空のうずが見えない」


「うん……本当だ!? あのモヤが濃い気配はするのに……」


 話しながらも次の封印場所を探す。

 ハウコニファーが指した先にみんなで歩……いや雪の壁があるな。

 残念ながらモヤが発生して乗り越えられないのだ。


 あと身体にモヤが回ってくる速度がめちゃくちゃ早い。


「ちょっ!? もう足までモヤがついてないか!?」

「さっき入ったばかりなんだが」

「スピード勝負だなこれはっ」


「ものすごっく早いんだよね……」


 イタ吉たちが駆け出すと共に私達も列をなしていく。

 そうこう話している間にも体につくモヤの量が増してきている。

 最大滞在時間1時間を切る速度の戦いが始まった。


『こちら司令部、ローズ、外の情勢を伝えるが今良いか?』


『今なら大丈夫です』


 静かに見えるここでは非常に怖い相手がいる。

 そのためペラさんも気をはって駆けているようだ。

 個人的にはちゃんと会いたいなあとは思うんだけれど。


『こちらが引いている戦況ながら、敵イオシクラス飛空艇の中で、前に出過ぎたやつらを遊撃隊の急襲で落とし捕虜とした。戦況に大きな変化はないものの、捉えれ方によっては向こうの勢いを鼻っ柱から折ったことになるニンゲン部隊も想定以上に優秀だ』


『おお、それは何より。空から一方的に撃たれるのだけは避けたかったですものね』


 アヅキやドラーグたちが張り切っているらしい。

 魔物隊は最初の方こそあまり目立った活躍はしなかったんだけれど……

 ソレはもともとニンゲン側と話を通してあった。


 なぜなら複合した軍が即興で連携を取るのは困難だから。

 言っちゃあ悪いがこっちは向こう以上に寄せ集めなのだ。

 さらに魔物というものはニンゲンと規格が大きく違う。


 向こうが突くスキといえばそこになるんだけれど果たしてどうなるか……

 なんやかんや軍動員3度目だからね。


『停滞気味ではあるが、戦場が動いていないわけではない。注意はされたし』


『わかった。こっちも第5階層にたどり着いたから、ココからが本番ってところ』


『了解、順調そうで何より』


 そうこう連絡している間に迂回をしていく。

 これまでが逆に戦闘まみれで進んできたため何もこないと不気味。

 あたりに散って起動していないゴーレムは戦闘型じゃなく。


 遥か昔……今では出土するしかないゴーレムたちだ。

 現代だと灰を回収してくれる。

 本来はどんなゴーレムだったのか……それを聞かせてくれる相手はここにいない。


「そういえばこれ、灰じゃあない……? なんだか冷たいし」


「雪だね」


「おっ、もしや雪、初めてか?」


「雪……これがあの!? 本物ー!?」


「時を超えているから、本物かどうかはともかくとして……いつかは雪が降ったこともあったのかもね」


 ココの土地は滅多に雪は降らないらしい。

 それこそニンゲンの生涯かけても。

 だからこそ雪が降るという瞬間はこの場所に強く記憶されているのだろう。


「……いるね」


「ですね」


「えっ、何が……」


「身構えろー! くっぞ!」


「えっ!?」


 ハウコニファーが驚きの声を上げると共に雪が思いっきりガバリと跳ね上げられる!

 突如現れたのはとても浅い雪の中に隠れ潜んでいたとは思えない魔物。

 高さがニンゲン大あるその魔物は……


「「ウサギだー!!」」


「キュ」


 鼻を鳴らされた。

 ウサギそのものには声帯がない。

 魔物のウサギも声帯がない場合がある。


 なぜ声帯がないかというと声帯がなくてもコミュニケーションが取れるように生物の過程による進化をしたからだろうね。

 つまり目の前の相手が足を踏み鳴らす行動は言語として私の脳内で理解できる。


「奴らから隠れ潜んでいれば妙な奴らよ。蹴散らしてくれよう!」

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