五百九十二生目 悪化
吹っ飛んだライム。
そのまま斬り裂かれはしたもののスレスレでライムの剣がゼロエネミーと接触。
擦れるようにそのままトドメを刺されることを避けた。
普通にやっていたら剣ゼロエネミーは剣を裂いてしまう。
それを避けることができるあたりは技術の高さをうかがわせる。
もうひとりが慌ててカバーに入ろうとしたところを高速になった射撃で打ち払う。
弱い針の弾丸も20発も来れば話が違う。
剣で弾くがしのぎきれず鎧に刺さって下がる。
一方ライムのほうは私のイバラや剣ゼロエネミーを相手する羽目になっていた。
剣ゼロエネミーの連続斬りで注意を引きつつイバラで武技"龍螺旋"!
さらには土魔法"アーティストアン"で連続土槍を放ちライムの体に刺していく。
彼らは"観測"しても名前が出ない。
その代わりちゃんと中身はいる。
そして時を超えたからか異様な力を誇る。
ただあくまでニンゲンだ。
ライムは土槍たちに貫かれ弾かれ空を舞って転がった。
慌ててカバーに入ろうと無理矢理詰め込んできた背後の相手に対して影魔法!
[タンガーシャドウ 麻痺性のある影の舌を伸ばす]
低レベルだった魔法ジャンルたちは全部底上げしてある。
影から伸びた舌に見える何かが敵に伸びる。
ぶっちゃけ気色が悪い。
なにせなんだか肉厚でそのくせよく伸びて明らかに危険なタールじみたものが垂れている。
さらに相手の元へ行くと力強くスイングした。
動かせたい放題である。
気持ちの悪い舌に殴られて相手は引かざるをえなくなるはずだが……
それでも身体を痺れさせつつ突っ込んでくる。
慌てた様子を見るにロクハチか。
ロクハチは困るんだよね……
実力はそこそこある上トップクラスに頑強。
慌てても問題ない根の体力が凄まじい。
ロクハチは搦手に弱い。
今も痺れにそのまま食らっているし。
再度影を魔法で縫い付ければつんのめってころんだ。
「ハコ! 追撃よろしく!」
「もちろん、えーいっ!」
ハウコニファーが炎でロクハチを焼く。
強くなった影がさらに縛りを増した。
"同調化"の効果で細かい指示は出さずに済む。
さらにこっちはこっちで"連重撃"や"二重詠唱"の力で攻撃や魔法が2つ重なる。
2連爆破されて針だるまにされ剣を必死に弾いていても逆に大きなスキを晒す。
急いで詰めるとワンチャンス狙いの反撃をされるのはわかっているので一回壁の向こうへ跳んで移動。
においと音で方角を合わせ……
飛び出した瞬間に武技を放つ。
足を天に向けるような回転をしつつ……
「"雷電轟華"!」
言葉と同時に雷鳴が響く。
そのままライムの額に叩き込まれ……
感電し腕の収縮で剣が変な方向へ向いた瞬間に。
一気呵成と詰めて連続でイバラを叩き込む。
鎧に思いっきり拳を叩き込みたくないので短距離イバラ運用だ。
連続で打ち払って少し強めに最後回って叩き込む。
大きく跳んでいってモヤの中へと消えた。
「まずひとり!」
何度か戦って把握しているけれど彼らを被弾ゼロは難しい。
さらにチンタラしているとゴーレムも来たりする。
頬についたススを払いさっきのロクハチを攻める。
……ってうん?
念話が来た。
『悪い、そっちに何体も逃しちまった! 向こうもこちらの狙いに多少は感づいているフシがある、兵がなだれ込むぞ! 戦略的撤退をする、もう一つの作戦通り、制空権は渡しつつもちょっかいを出して思うように動かせないようにする』
うーむ空を取られてしまったか。
まあ途中から仕方ないことはわかっていた。
兵站が向こうは母艦があるので話がかわってしまった。
こちらのドラゴンクラスは超強力だが対人用に組んでいないはず。
飛空艇までだしたのはこんなニンゲン同士の争いのためではない。
おそらくはピヤア団は……そこまではわかっていない。
「ドラゴンクラスはちゃんと引けたのかな?」
『軽微的な破損を装い、撤退中だ。なあに、向こうもガチンコでドラゴンクラスとやりあいたいわけじゃあないだろう。見逃してくれている』
バレットの言葉通りならば現状向こうは戦術的勝利に浮かれているだろう。
地上では戦いが繰り返されているだろうが地上の争いは兵站を断って空中舞台を孤立させるのがメイン。
互いに死ぬまで斬り合うものじゃない。
『そっちの調子はどうだ?』
『結構引きが良くて早いよ。今の所いきなり数十体に囲まれたりしていない』
『そいつはいい! 全部片付けるまでその可愛い顔に傷をつけるなよ?』
無視した。
ハチロクは他に心傾けていて良い相手ではないのだ。
遠くからも声やら攻撃音がするので向こうは無事。
というかやばかったら連絡飛んでくる。
こないということは良くも悪くも継続中だ。
ハチロクはすぐ倒して他に向かうとか無理な相手何だよね……
「ヒャッ!?」
「うわっと!!」
ハチロクが赤熱化させた刃を2つにして回転するように振るう。
ハウコニファーをトゲなしイバラで掴んで引き離したら光がふきだすように伸びた。




