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五百九十生目 守人

 ハウコニファーの祖父は言った。

 結局補佐の係が出来ることはハウコニファーを安心させることだけなのだと。


 ハウコニファーの精神状態や思考で何もかもが決まってしまう。

 隣りにいて大丈夫だと手をにぎり。

 ほんの少し力の奔流にそえるだけ。


 ハウコニファーの小指がありえないねじれ方をして一瞬にして虚空へ消える。

 代償が捧げられた。

 ハウコニファーは慣れているのだろう……ほんの少し顔をしかめただけだ。


 しかし私を握ってくる手は力が込められ一気に恐怖のにおいが強まった。

 ……あまりにも当たり前の反応。

 痛みだ。


 血が出ない。逆に恐ろしい光景だ。

 出る血の一滴すら代償に捧げられたのか。

 そしてついには力が表出される。


 ハウコニファーの全身から力が溢れ禍々しい光が出てくる。

 その光は空間を染め上げて……

 収まるとさっきまでのモヤが消えていた!


「よし……手応えが……うう」


「今治すね」


「お、おお……なんか大丈夫か? それ」


「痛いけれど、割と昔から慣れてるもん……」


 断面は何もしていないのに止血が終わったかのようだった。

 組織がくっつきはじめている。

 聖魔法で慎重に癒やす。


「あ、この魔法割と治療痛するからね」


「へ? え、あっ、ん、えっんん……!」


 痛みに関して私は速度調整しかできない。

 ここの時戻しはなんとかなったものの全体の行軍としては急ぎたいし……

 やはりまだまだ幼く慣れないから痛さがしみるようだ。


 早くやればやるほど痛くなるんだよね。







 なんとか指が治り移動再開。

 城内第一階層は道が複雑だ。

 外から見た時こんなに広くはなかったじゃないですかというぐらい歩かされる。


 実際に空間がめちゃくちゃだから広いのは確かだろう。

 それに加えて非常時の城というのが厄介さを加速している。

 対侵入者用にトラップやら一方通行やら一方的に攻められる仕掛けやら道塞ぎやらが豊富。


 正直壁をぶち抜いて進みたい。

 もちろんモヤによりなかったことにされるけれど。


「ここ、さっきも通らなかったぁ!?」


「いやいやおじょうちゃん、同じ構造同じ模様なだけでちゃんと別の場所だよ。おじちゃんが印つけているからね」


「通ったにおいもしないから、ここは新規だよ……うわっと!」


 ハウコニファーが壁の穴から狙われていたのを飛び出して弾丸を防ぐ。

 盾化させたゼロエネミーが。

 私自身は身体をバネのように弾き穴に対して足を振るう。


 足先にトゲを生やし(エフェクト)で思いっきり振り抜く。

 穴にトゲがしっかり刺さってから切り離した。

 これで大丈夫だ。


「みんな、怪我はない?」


「怪我はねーけど、何箇所からか狙われていたぜ」

「よいしょってぇい! よし、こっちも大丈夫」

「うまく刺さったなぁ」


「まったく、困ったもんだね城内は」


「また冒険者が来たら困りますね……時間ばかり使って」


「うう……あまりに戦場すぎる……」


 ハウコニファーが若干グロッキーさをにじみ出してきたがまだ動けそうだ。

 とにかく今はここから脱することが先決だ。

 ハウコニファーには悪いがさらに進んでいく。





 そこから何十分たっただろうか。

 やっとこさ閉鎖されていない階段を見つけた。

 ここを登ればさらに深部へいける。


 階段の罠をチェックして進む。

 階層が変わると纏う空気が一気に変わる。

 ……周囲が炎に包まれていた。


「うえっ!? か、火事!?」


「これ以上は燃え広がらないけれど、ね」


 ここもまたどこかの時代を切り抜いたものだと言われている。

 朱竜の炎ならこんなメラメラしない。

 一瞬でなにもかも灼くからね。


 だから人の手による炎上だと思われている。

 そして大事なのは……


「また身体にモヤついてんぞ!」

「はやくね?」

「おう、おう、体が消えちまう!」


「はしれよ〜、早くモヤの元を見つけないと、戻されちゃうからねえ」


 ペラさんが先導していく。

 先程よりも体につくモヤの速度が明らかに早い。

 色々検証してみた結果ここからは速度をかなり気にしないと戻されることが判明している。


 具体的には約2時間。

 私とペラさんだけでも相当の運を強いられたが……


「やっ! ……あっちだよ」


「わかった!」


 ハウコニファーが杖で地面を叩くと同時に広がる光でモヤの濃い場所を特定した。

 これで不安要素を確実に潰していけばいいだろう。


 ここからは単純に暑かったりやや空気が悪いだけではすまない。

 1番の問題は……

 あっ! 今においがした!


「みんな、発生した!」


「早速か」


「発生……?」


「ま、変わった敵さんでね……発生するとこちらに向かってきて襲ってくる。あ、ほらきた」


「な、なんだこの気配……!?」


 イタ吉たちが恐れおののくのも無理はない。

 先程までの敵とは気配がまるで違う。

 ひりつくようなので殺気。


 そのものが纏うオーラは邪気のように立ち昇り明確な意志を持ってこちらに刃を向ける。

 ただ時に囚われた者ではありえない反応だった。

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