五百八十七生目 封滅
スウマとスレイカ。
前に私と組んだ冒険者だ。
ココにも挑んだことがあるのか。
他のメンバーが違うあたり大きな民間ギルドに所属しているならではか。
もしかしたら野良パーティーかもしれないけれど。
意味をなさない言語が矢継ぎ早に繰り出される中私達も構える。
「しっかり倒すしかない! ハコは下がって!」
「うわわわ」
「はあぁ〜、ここで引きが悪くなった……」
「とりあえずボコりゃいいんだろう?」
「おらおらおら!」
「もういっちょ!」
イタ吉たちが高速で撹乱にまわる。
ペラさんは冷静に敵の出方をうかがっていた。
敵が非常に単純な動きをするというのは……
まずしらない3名がそれぞれの武器で大きく身構えて光を輝かせる。
スレイカも2丁拳銃をくるくる回して大技の構え。
スウマはチェーンのついた鉄球を大きく振り回しだした。
そう。
みんな大技マシーンになるのだ。
「避けてね! そのあとスキが大きいから!」
「うおおう!」
イタ吉は斧持ちが跳び縦回転して地面に叩きつけているのをヒヤッとする背後避けをして……
「遅いなっ!」
ダガーが一瞬でたくさんの光と共に身体を貫こうとしてきたのを他のイタ吉が偽物の分身でまどわす。
「そこだっ!」
尾刃イタ吉は果敢に大剣使いに飛び込む。
大剣使いは派手なエフェクトをまき散らしながら武器の重さよりも素早い振り。
身を削るような避け方で実際に朱もわずかに散る。
しかしトドメの大振り時に大上段になった。
素早い蹴り込みを入れて浮かし武技を強制中断させる。
そのまま強烈に蹴り上げてから……
尾刃の方で4度も切り裂く。
武器の力も込められているため火力はとんでもない。
相手は防ぎきれずにさらに大きなスキを晒してしまう。
そこに対して一瞬でイタ吉たちが集まり跳ぶように切り抜ける。
重く早い首への斬撃が大剣使いに重傷を与えた。
ドッと倒れ伏す。
おおー。
まさに必殺。
私が見ない間にまた違う技覚えてるんだなあ。
そしてスレイカの銃弾は花開くように飛び私達全員を追尾する。
華やかな光を纏ってはいるがエゲツない力を感じる。
「弾幕だ!」
私は大盾化したゼロエネミーを展開して下がる。
ハウコニファーを護りつつペラさんの方を見た。
どうやら何か悪いことをしているようだ。
「悪いねえ、それいただき!」
ペラさんがマントを翻し光がきらめくと弾丸華の一部が大きく欠ける。
おかえしといった感じでそのなくなった一部がペラさんのそばから放たれた。
まさしく攻撃の能力を強くしてそのままお返しする能力だ。
弾丸が一斉にスレイカへと向かい身体に当たって穿つ!
血が吹き出るかわりにモヤがあたりに散る。
スウマはヒーラーながらその1撃攻撃力が高い。
完全に勢いが乗った鉄球はさながら回転刃のようだった。
触れるものを傷つけ止まらない勢いで迫ってくる。
弾を全部受けきってからイバラを伸ばす。
伸ばしたイバラが鉄鎖の部分に入り込み砕かれ……
さらにイバラを伸ばす。
連続で絡まればさすがに変な食い込み方をして。
回転が痺れるように止まる。
「今がチャンスだよ!」
「オラァ!」
「おっけー」
イタ吉たちやペラが突撃していく。
スウマ記憶体を蹴り倒してくれたあとは私も一気呵成に殴り込む。
火魔法"フレイムボール"を放ちつつ……
「アタクシも、そうれ!」
ハウコニファーが杖からビームを放って敵を焼き払っていく。
これも火系統聖付与魔法の一種らしい。
ハウコニファーはギフトの影響かこういう変わった魔法が得意なのだ。
乱戦になればまた同じ大技しか使わない敵は楽だ。
とにかく徹底的に動きを潰せばいい。
というか治さないヒーラーって……
そこから何十秒たったか。
剣ゼロエネミーで斧使いが跳んで回って地面に叩きつけた上から斬る!
背から腹を裂いてそのままモヤになり消えた。
「これで最後かな」
「また次が来るからね、急いでここを抜けよう」
「走れはしれ、置いてくぞー!」
ドロップ品は不思議な石だ。
交戦しつつ案内に従って進むと不思議とモヤがみえるほど濃い目になってきた。
視界はそこまで悪くない。
「ハコ、もしかしてここが?」
「うん、一番効き目が濃そうなところ」
「じゃあ、ちゃちゃっと終わらせようぜ」
ハウコニファーの掲げる手には5つの指が細く弱々しく。
そして指それぞれに制御の指輪がついていた。
反対側の手を私の方へ向けてくる。
「おばさんお願い!」
「回復魔法も用意しておくよ」
ハウコニファーの手を取り力を込める。
行動力の循環に干渉して整えていく……
体内に封じられた莫大なエネルギー……捉えた!
「いくよ!」
「それ! 死滅の名にて命ずる!」
小指の指輪が外される。
「我が身を散らし、おぞましき身を蝕む力を封じよ!」
ハウコニファーが叫ぶとともに力が荒れ狂う。
力が乱れないように導いてはいるが……
結局はハウコニファー次第なのだ。




