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五百八十六生目 記憶

 城の塀内側を駆ける。

 侵入者に対して容赦ない作りになっておりグルグルと動き回ってもなかなか良いポイントがない。

 なので足を止めず坂を登ったり降りたりしながら侵入経路を探す。


「この地形だと右に向かっていけばなんとか?」


「地下倉庫があるかもねえ。そこに行けたらラッキーかなあ」


「お、っといー!」


 イタ吉も手慣れてきて恐竜魔物を爪で切り崩し尾刃を持つイタ吉がノッポの額にあるビーム発射装置に刃先を刺す。

 動きが止まった瞬間にペラさんが蹴り倒して走った。


 私が太っちょを引き付けていてイバラで追い払いグルっと縛る。

 わずかな時間しか抑えれないが拘束そのものは決まった。

 急いで先へと進む。


 そうこうしているうちに空の情勢がさらに変わっていくり

 小競り合いを続けていた中で突如大きめの飛空艇が割り込んできた。

 敵側母艦だろう。


 あれが初手でいきなりデカいビームを放ってきた相手……

 情勢はあまりよろしくないと見ても良いかもしれない。

 敵が思考段階で踏んでいた段階よりも強い。


 なんとかこっちはグルグル回され続けて砦内にはいることが出来た。

 途中地下倉庫があったのも良かった。

 安全地帯なうえ補給も出来て近くに入り口も見つかりやすい。


「今回引いた乱数良いですね」


「うーん、こりゃ記録ペースだ」


「ふたりともなんの話しているの……?」


「運がイイなあって」


「な、なるほど……これで運がいいのかぁ……すでにだいぶ戦闘をしているような」


「なあに、ここまでの急ぎはついでみたいなものさ……ほら、ココからはだいぶ時戻しの進行が早くなる」


 ペラが指した体の端に微妙なもやがついている。

 これがどんどん増してきてやがては飲み込む。

 そういう環境だ。


「ここからは、時戻しの力を出来得る限り死滅で封印したいんだけれども……」


 周囲の状況。

 城内に潜入をしたはいいもののすでに迷いそうなほど広い。

 実際の見た目よりも時空の乱れで広くなっている……


 ただ拡張しているならともかくどこを抜ければどこにたどり着くかがランダム。

 正確にはある程度決まった形が何個もありそこからランダム。

 たくさんの組み合わせがあるため結局はわからないのに代わりはないけれど。


 城の中は不思議な熱量を感じさせた。

 まあ実際に炎がガンガン焚かれているけれど。

 昔の建物にしては非常に高価な風に見える。


 あとやっぱり朱の大地では珍しくガラスレンガじゃないっていうのも面白い。

 ちゃんと建築して100年耐えるようなものになっている。

 立派で頑丈かつ金のかかった作りだ。


 まさしく当時のまま保存されているからこそ。

 砂上の楼閣(ろうかく)だ。


「ここからはどんな仕組みなんだ?」


「時間制限が増してくるのと、突然時代を越えた乱入者がくるの。厄介なのは、過去の冒険者が時に記憶されていた場合かなあ」


「何十何百とココに挑むやつらはいたからねえ。そんとき、たまーに姿見だけがこの渦のうちに閉ざされてしまうことがある。そういう時を越えて襲ってくる相手も、普通に現代に生きていたりするから気にせず倒しちゃおうねえ」


 時の記憶として力が再現されるため本物より強力で厄介ではあるが気にしなくて良いのは楽。

 あとあくまで実力が補佐され記録されているだけで思考や連携は抜けている。

 安易なゴーレムみたいな単純すぎる行動で攻めてくる。


 そうこう話していたらハウコニファーが手を挙げる。


「えっと……死滅を効率的に使いたいので、そのポイントを探していい? ポイント探しするさいに少し派手に回りへ影響があるの」


「ええっと……じゃあ今なら大丈夫かな」


「わかった!」


 周囲の安全を確保してハウコニファーに働いてもらう。

 ハウコニファーは杖を高く掲げる。

 魔力が染み渡り宝珠が輝いている。


 そこから一気に地面へと杖の底を叩きつける。

 同時に鈍く低い音と輝きが(エフェクト)の輪となって広がっていく。

 一瞬で部屋の垣根を越えて遥か遠くまで飛んでいった。


「……わかった、あっち」


 ハウコニファーが指した方向に向かうことが決まった。

 それはいいとしても。

 いまので惹きつけられてきたぞ……!


「気をつけて、向かう方向から敵が向かってきている!」


「頼む、太っちょ単体、太っちょ単体……」


 一番やりすごしやすいのは太っちょゴーレム単体だ。

 守る相手がいないとうまいこといかずに横を拭うように走りぬけるだけで切り抜けられる。

 ペラさんの祈りははたして……


 ガチャリと武具を身構える音が向こうから響いた。


「だあぁーー! めんどくさい!」


「冒険者の記憶だ!」


 ここで武器を出してくる奴らは冒険者の記憶しかいない。

 見た目はまるでニンゲンの冒険者5人組だが……

 その纏うオーラと目の怪しい光が偽物であると主張している。


 というか見たことあるような……

 においの雰囲気を私は知っているような。

 そう……姿形は知っているものとは少し違うものの。


「スウマとスレイカ……?」

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