五百七十八生目 祖父
魔法陣を使うさいに大きさに関してはみんなそんなに偽装しない。
手先にだけ展開した場合それは手の後ろ側だけ守れれば問題ない射出系だ。
自分を中心に前へ放つ魔法だね。
身体を覆うように正面または背面に魔法陣を使う場合は大きなものが前方に飛び出す。
自分の身体を使って魔法陣を隠すのは大事なテクだ。
そして足元や天井。
オーソドックスな範囲魔法だ。
味方も連鎖指定して守ろう。
聖なる炎の時に魔法陣がやや疎かだったので自分を守るために波みたいな炎になった。
本来は自分共々巻き込んだほうが効率良いからそこらへんはお察しの通り。
そこは訓練で身についたと思う。
さらに大きな魔法陣がある。
範囲全体に魔法陣をひくというもなのだ。
これは変わり種だけれど大きすぎる魔法に対して外部側を守るという役割がある。
ゆえに魔法陣の形が外と内が逆になっている。
これは魔法の効果が広く拡散してしまうのを防ぐということは内側の効果は高まるということ。
魔法の中で異様に使いづらい魔法はだいたいこれを使おう。
まあ私の地震魔法はそもそも振動が外に行っちゃって危険だから使いにくいんだけれどね!
ゆえに魔法陣1つとってもかなり奥深く魔法使いが自分を守るという大事なものだ。
守るという概念を封印にした書物や……
表音しない特別な原子的文字……魔術文字を中心に抜き出して綴り現象を起こす魔法自体も。
もっと詳しい話はまた今度。
「すごぉい! 普段こんなの、教えてもらえないのに!」
「そりゃあね、本来この内容って結構実践的だから……ハウコニファーの年齢だと、もっと国語の読み書きや算数の段階だからねえ……」
「そこらへんつまんないの、もうとっくに分かる範囲ばかりで……」
天才少女だった。
そしてなぜこのような性格になったのかもなんとなくわかった。
周りの大人がバカに見えて仕方ないのだ。
それはまあこんな幼い子を戦線に巻きこむ形になった時点で言い訳もしようがない。
そしてバカには思いつつもそのバカにする態度がバカらしいというのもメタ視点を持って理解している。
だから心の側面でバカに思いつつももう片方の面で真摯に接せれる。
それがハウコニファーだ。
今日は直接彼女の祖父……ビルズブレット教皇に会うこととなっている。
ハウコニファーの封印を解くためだ。
指輪は普通には外れないようになっているらしい。
私達は神聖な雰囲気を感じる小部屋へと移された。
この部屋……においが違う。
結界……かな。
特別な結界だ。
外部と拒絶するというより内部の力が何かあったときに急激に吸い取るような。
一瞬で変化するタイプの結界だ。
中には既にひとりのお年寄りがいた。
もはや疑う余地もないほどの威厳を感じさせる服装。
「こんにちは、わたくしが彼女の祖父です」
「どうもこんにちは、お孫さんの身を預からせてもらう、ローズオーラです」
「おじいちゃーん!!」
タタタッと教皇にハウコニファーが突撃する。
その孫の姿をみて。
教皇はおじいちゃんとして破顔した。
「ハコーー!!」
「わーい!」
おじいちゃんとして孫を持ち上げ高い高いしている。
ああ……明らかに腰を気にしている動き!
出来得る限り負担を軽減しつつ短時間で終える。
そして温和な笑みをこちらに向けてなおった。
「お見苦しいところをお見せした。普段は孫に祖父らしいことをしてやれんもので」
「互いに立場があるからしかたないよおじいちゃん」
降ろしてもらったハウコニファーは教皇のそばによりそっている。
長年積み重ねてきた絆には勝てない。
ひととおり落ち着いたのかハウコニファーが指輪を教皇に向ける。
「おじいちゃん、約束!」
「どれどれ……うん、力が非常に安定している……ムダなエネルギーが発散されて……最近はよく運動や勉強をしたようだね?」
「う、うん……! おじいちゃん、後で詳しく話すね……!」
一応訴えられないラインではあると思う。
そこそこ訓練はしたけれどやはり1週間でいきなり体力はつかなかった。
しかしメキメキと上達したのは確か。
特に疲労に対しての接し方がうまくなった。
生き物は動けば疲れる。
そして疲れ方や疲れやすさというものがある。
それらをずっと思考を止めずに行うことでその時に最適な動きができるようになったと思う。
今の短所はどうしようもない。
しかし長所で短所を引っ張り上げることには成功したようだ。
あと単純に私へ向かって戦わせたというのも良かった気がする。
まだあまり触れてこなかった方向の上位者は経験の宝庫だ。
たたけば経験がバンバンもらえる。




