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百六十二生目 風護

 ユウレンは私の目の前で骸骨たちに魔法記述を呪術用化粧用具で書き込んでいく。

 ちなみにこの骸骨たち、イメージとしては『呪われた怨念たちが集って生者を求めさまよう』系統のイメージがあるのだが実際は魔法像(ゴーレム)系だ。

 土と岩で作るのが基本のゴーレムだがこれは死者の骨で作られる。


「怨念とか執念とかそういうのを浄化しつつきれいにして、モノになって協力してくれるようにお願いするのが死霊使いよ」


 そうユウレンは言いつつ骸骨たちに複雑な魔法記述本を参考にしつつ書いていった。

 もちろんその分邪悪な術を持って魂を縛り上げる非道な者もいるが、それは悪者としての側面であって通常の範疇とは遠いそうだ。


「それじゃあカムラさんは?」

「師匠作だから細かいことはわからないのだけれど、死者をベースにしつつも1から擬似的な思考や心も作り上げた存在ね。正直かなり趣味の粋よ」


 死者という点以外は肉もあり髪もあり振る舞いも紳士的なカムラさん。

 ただ労力を作るという面からするとカムラさんはニンゲンのような心をもたせるのはかなり趣味色が強いそうだ。


「カムラは確かに死者の魔物だけれども誰にも縛られず執事として働いてくれているのよ」

「あれ、そのお師匠さんに命令で縛られているとかじゃあないんだ」

「それだと擬似的な心がちゃんと動いているとは思えないって、師匠の趣味でそういう縛りもないわね」


 ちなみに現在カムラさんは事前に設計しておいた通りにテントをはるべく万能翻訳機を持ってあちこちで指揮している。

 これも単なる隷従れいじゅう型では難しいだろうとのことだった。

 ふーむ、死霊使役ひとつとってみても案外色々あるんだなぁ。





 お昼頃になったので修理に預けたスカーフを取りに空魔法"ファストトラベル"。

 門から入りアライグマの修理屋の元へ。


「こんにちはー出来まし」

「ああ! 来た! ちょ、ちょっと、待ってて!」


 ん?

 慌ててアライグマが店奥から顔を覗かせたかと思ったらそのまま引っ込んで行った。

 少し待っていたら物音と共に刻まれた風切り羽根が目の前に置かれた。


「こ、これ貰っていいかな? 修理費こみでチャラで良いから」

「え、良いの? 私には使いみちが無いしどうぞ」

「良し!! あっと、これが依頼品ね!!」


 ガッツポーズするアライグマに渡されたのは染柄は前のを再現したものだ。

 だいぶ高い再現率だと思う。

 問題はこのスカーフから感じる気配。


 悠然としていて覇気をまとい身につけるのすら躊躇いそうなおぞましさ。

 それと同時に私を求めるような力強く引かれる魅力。

 入り乱れた風がこの場に吹いているかのようだ。


「自信作だよ! ここでつけていくかい?」


 アライグマの店員に首に巻いてもらう。

 首周りに身につけた時の第一の感想は……


「風を首に巻いたみたい……」


 わけがわからないだろうがそれが1番しっくり来たのだ。

 優しい風が首まわりを撫でたようだった。

 すぐにしっくりくる着心地になり落ち着いた。

 ええっと"観察"っと。


[風羽のスカーフ 特殊な羽根を素材として織り込んだスカーフ。高い防御性能の他に着用者は風の加護を得られる]


 風の加護は私の土の加護と同じようなものだった。

 ようはこれがある間は風も友達ということになる。

 なるほどもしやあの素材はかなり高価で使えるものでは……?


「このスカーフは自信作だよ! 最大限力を引き出せたと思うよ。前のは普通なスカーフみたいだったけれどこれはトクベツな力がある!」


 二回も自信作言った。

 よほどらしい。


「ええ、なんとなく実感できます。ありがとうございました!」

「またうちをヒイキにねー!」


 まあ端材でタダにしてもらったからこれもWin-Winというやつか。

 このスカーフは頑丈らしいから今度は壊れないと良いな。





 空魔法"ファストトラベル"で戻り作業を続ける。

 骸骨以外は4時間ほど労働すれば限界を迎える。

 これは私たちがニンゲンと違う点が多いせいもあって仕方がない。

 ちなみに1日4時間である。


 また問題は食事だ。

 衣食住のうち衣類は魔物がほとんどなのでそこまで問題にならないし住居もそこらで寝れば問題は少ない。

 ただ食事はガッツリいる。


「ただいまー! 狩ってきたよ!」

「ありがとう! 即席メンバーでもなんとかなった?」

「問題なし!」


 インカ率いる狩猟班が狩ってくれるものが生命線となる。

 魔物が豊富な荒野の迷宮内や普通の獣も多い外界は効率的な狩りの場所と化している。

 地形は私が把握し情報を渡しているので問題なく狩れるわけだ。


「みんなお疲れ様、インカの指示はどうだった?」

「楽しかった!」

「直感的に動けて楽だった」

「いつものうちのリーダーよりもうまいかも」


 口々にインカの事を褒めていてインカは胸をはっている。

 なるほど大所帯で狩りに向かったが問題はなかったらしい。

 やはり狩りに関してはインカに任せれば良いか。


 荒野の迷宮に入ってすぐくらいに遭遇し仲間になったハイエナたちも狩りのメンバーとして働いて貰っている。

 彼等はどんな食糧でも回収し食べてくれるし狩りの成功率も良いらしい。

 今後にも期待だ。

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