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五百七十四生目 猫面

 ナイフはまるで竜の翼のようだった。

 この小ぶりに巨大で強烈な力が閉じ込められている。

 刃と柄の素材が一体化していてなんだか美しい。


「これはね、ちょっとばかし悪い武器なんだ。昔悪さしたドラゴンがそのまま閉じ込められたと伝えられていて、死んだ今でも無理やり復活しようと暴れる。けれど、悪さの力って困ったものには偉大でね……こういう力押しの時にはとても有効なんだよなぁ」


 ナイフと言えどそれはあくまで相手を穿つ武器。

 重ねれば両手で握れるほどの柄はある。

 ペラさんは落下品が下に刃を向ける。


「ヒュドラ!」


 ヒュドラとかいう声に呼応したかのようにナイフが唸る。

 それはこのナイフが本来の凶暴性を取り戻したかのようで。

 両手で持っていたのは暴れ狂いそうなナイフを抑え込むためだった。


 暴走するかわりにナイフから大容量の黒ずんだ液体が排出される。

 ベースカラーは紫。

 まさしく毒。


 量が凄まじくもはやナイフを飲み込むほどの滝。

 そして発射と言ったのは落下する速度より早いから。

 奔流が境界線に突き刺さり。


「うわっ!?」


 目潰しのような閃光と共に壊れる。

 強烈な攻撃なら壊れるらしい。

 そして上空に穴を空けるということは新たな時間を流し込むということ。


 ……一気に空気が色濃くなってきた。

 このまま降下する。

 いや降下している。のか?


 上下左右の感覚が曖昧になっている。

 5感がきかない。

 時が乱れる。


 唯一私をつなぐ紐がペラに繋がっているのだけは見えた。




 その後私は何度もこの遺跡に潜り込むこととなる。














 別の時。

 それは突然だった。


『やあ、無事入れたようだね!』


 やっと連絡がついたよ蒼竜め。

 自分から協力要請だしておきながら全然連絡網を開こうとしないのはなんなのか。

 長命のもの特有の時間感覚だなあ……


『で、だいたいこっちの様子は手紙で送ったとおりだけれど』


 色々聞きたいことが増えた……祖銀それに蒼竜。

 ツテを活かすときだ。

 あちこちに質問し底から得られた情報で今なるべく高度な精度で情報を確立させようとしている。


『まあ、アイツに関しては面白い点が結構あってね、おそらくアイツがあそこまでエネルギーを貯められているのは――』


 私は各地に会話をし。


 そんなことをしつつとあるところへ足を踏み入れる。

 遺跡で死にかけたからちょっとつらいけれど言ってる場合じゃないけれど。

 私単体で死んでも別に最悪復活出来るけれどペラさんいるしなあ……


 それに死んで復活は正直気持ちのいいものではない。

 何か大事なリソースを失っている気がするし。

 実際に神格がやや落ちていたのは気の所為ではないだろう。


 いわゆる……デスペナルティというやつか。

 時間がたてば治ったけれど。

 どちらかといえば不快度のほうが高かったので死に慣れを起こせないとは思う。


 ただ時を戻る方は感覚が違うらしい。

 死ぬ。いつの間にか全快して外にいる。

 なので気絶の親戚みたいな扱いをペラはしていた。


 ちなみに記憶は時を戻らない。

 どうやら外部の私達はだいぶ異質な扱いらしくて扱いが特別。

 詳しい仕組みの解説は多分研究者たちが明らかにしてくれるだろう。


 それよりも今来た場所の話だ。

 ここはとある大きな建物。

 城ほどではないが近辺の建物に比べ大きく壮大で……何よりその門はすべての者へと等しく開かれている。


 ここは朱竜教教会。

 その中でも本部と呼ぶにふさわしい巨大施設だ。

 なかでは様々な派閥があえてひとまとめにいる。


 ここの派閥は色々あるが朱竜教の総本山となるべく存在する。

 まあ総本山も何も1年程度で毎度焼き払われているんだけれど……

 ココは誰でも入れて違いも説明してくれるし必要ならば各々案内もしてくれる。


 しかし私の目的はそこではない。

 もらった身分保証書を見せてフォンダター派の方向へ進む。

 立派な炎を象った祭壇をすり抜け奥へ。


 明らかに生活空間らしいところの廊下を抜けつつ……

 最終的に中庭へ出た。

 そこではこの環境下に珍しい花園。


 ひと目見てわかった。

 めちゃくちゃお金と手間がかかっている。

 もしかしたら他大陸から持ってきたものかも。


 その中に佇む女の子がひとり。

 ブロンズの髪にシルバーの目。

 私を見つけてふと微笑む。


「御機嫌よう、ローズオーラさん」


 ハコビはすごくお淑やかに微笑まれた。


 誰?


「えっと……」


「ウフフフ、ハウコニファーです。ハコビ、と言ったほうがよろしいでしょうか?」


 いえそういうことではなく。

 もちろん誰かというのはわかっている。

 ただ猫かぶりを超えて別側面を叩きつけられめちゃくちゃ困惑したのだ。

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