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五百七十二生目 斥候

 先の民であるおじさんと情報交換を始めた。

 おじさんの名前はペラ。

 ラの発音が難しくて表記しづらい。


「おおっ、ローズオーラ!? っていやあ、界隈で有名人じゃないか。いやあ、おじさん感激だな、こんなところで有名人に会えるだなんて。しかもおんなじタイプの技術が有るんだ。共通点が有るとうれしくなるね〜。ほんと、遠くから見たら背景だもん」


「ペラさんもまるで満腹の草食動物みたいでしたよ。ただ……有名って?」


「外の大陸情報、確かに一般的に手にはいれづらいとはいえ、おじさんくらいになってくると、ツテとコネでなんとか出来るようにもなってきてね……魔王を退けた英傑さんともなると、もっとパット見でわかるかとおもったから度肝は抜かれたけれどねえ」


 互いにまるでののしってるような単語で褒めていく。

 もちろん褒めている。

 互いにそれがわかる役柄というのもあり一瞬で打ち解けた。


 それにしてもすごいツテだ。

 私でも海外の情報というとだいぶ限られてくる。

 斥候と言っていたけれど情報収集のプロなのがまさしくといった様子。


「それで、この要塞についてなんですけれど……」


「ああ、やっぱり聞きたいよねえ。まあこう見えておじさん、そこそこあの要塞には潜っているからさ、わかってることならどんどん言うよ、そして願わくは……あれの完全攻略! だなぁ」


 嬉しそうな顔をしてペラさんは要塞に手を伸ばし……掴む。


「結構、思い入れが?」


「まあ、数年は挑んでいるからね。思い入れもたくさんあるさ。まあまず大事なことだが……この要塞は空からしか入れない。さっきの渦が邪魔しているかねえ。それに、上から入ってもその後一定時間内に出ないと強制的に追い出される。ただ、時間が巻き戻るらしくてな、もし致命傷や死んでもいつの間にか外にいてたすかる。あの中でだけは、自分の命は安いな」


「えっ、時間は戻るとは聴いていたんですが、そこまで戻るんですか」


「ああそうよぉ、時間内に出ないと回収したものもおじゃん。その代わり使ったものも戻るがね。おかげで死にながら探索するハメになる」


 なんだろう……こういう仕組みのやつ前世でもあったよね……


「でも、そこまで突入できるのならば結構なんとかなるんじゃないのですか?」


「それが困ったところだねえ……まず、要塞内は時間の流れが無茶苦茶になる。突入前は安定しているけれど、おじさんみたいな不法侵入があると一気に場の時間が乱れちゃって、具体的に言うと空間の繋ぎすらバラバラだから、地図が役立たないというか……そもそも外から見た景色とだいぶ変わるのよ。そのせいで、上から入れたら楽なのに、侵入可能なのは常にその渦すぐ近くの地面だけだったなあ」


「えぇ……なんなんですかそれは」


「おかげで探索しがいはあるんだけどねえ。それと、奥地へいけば行くほど人でどうにかできるような時間制限じゃなくなってさ……いまその突破方法を探しているところだよ」


「なるほど……なんとなくは掴めてきました」


 さらに情報はいくらか足されていく。

 中にいる魔物は大雑把にいるところで決まっているらしい。

 ただ魔物とは言っても全部特殊だ。


 まず魂なきゴーレムたち。

 ……いや普通はゴーレムに魂はないんだけれど。

 あとはるか昔に迷い込んだままなぜか定着したらしい獣たち。


 時をあやつる力を持つそうであわれな囚われものたちとは一線を画す。

 この特別な場所にあてられて変化してしまったのだろう。

 私もワンチャンス変化を受けれるのかな……?


 城の中でも建物内に入れば獣の比率はぐっと下がりかわりにゴーレムの比率はぐっと増す。

 ただ時間軸が狂っているのかたまにアーマーを着込んだアンデッドのようなものたちが襲ってくるらしい。

 さっきまでいなかったのに時間の渦が小さく起こるといきなりいきり立ったやつが来る。


 ただ一説にはアンデッドではないらしい。

 というかめちゃくちゃニンゲンっぽい。

 ニンゲンでも死んだところでまた復活するので正しくゾンビアタックされるそうだが。


 なのでペラが遭遇した中でおそらく同一人物たちはピックアップリストに載っている。 

 購入したのであとでじっくり見よう。


「その奥が未知数なんだよねぇ〜、傾向と対策は踏めても、時を戻す原因対策ができなきゃ、数十秒で戻されちまう。で、今おじさんは何か解決アプローチの方法がないかあちこち見て回っているわけ」


「だいぶ助かりました、私がやるよりずっと丁寧なまとめ方だし……それに、もしかしてペラさん、UVW帯のランクではないですか? なんとなくただものではないような気がした」


「お、鋭いねぇ、実はおじさん、こう見えてランクWでね、ちょっとだけ頑張らせてもらってます」


 ひえっ! 人類国宝!

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