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五百六十九生目 答案

「不落要塞の完全破壊……でしょうか。時がもどるらしいので、破壊前に戻ってしまうと」


「そうだ。そして時を戻すのに使っているらしい力の源は外からですら観測可能なほどに凄まじい奔流を生み出している。もし朱竜様が完全破壊に成功して吸収したら……星に大穴があいて沈むような、盛大な爆発になりそうだ」


「ええ……」


 星に大穴が空いて焼き払われる地上。

 海は吹き飛び蒸発し大陸尽きぬ神の炎に包まれる。

 うん最悪の未来だ。


 ちょっとあとで本当に蒼竜は詰める。

 あいつなら私が知るまで知らないふりしているやつだからね。

 最悪パンチする。


「とまあ想定の1つがその話。次にお待ちかねぃ! ピヤア団の話さ」


 そうだ。

 後回しにされたがまとめて聞くということでピヤア団の話をすることだった。


「では、もうあんまり伏せて話す意味はないと思うので……なんで、ピヤア団は各国の政府基軸と冒険者組合など、とにかく有力そうな場所に入りこんでいるのですか? いくらなんでもあまりにひどい暗躍ぷりだと思うのですが」


 私の話に部屋内の空気が今度は微妙なものが流れ出した。

 代表するようにバレットが初めて見た顔で苦笑いする。


「いやあ、ストレートにくるね……ところでローズさん、宗教は何を?」


「え? いやとくに……あ、でも、幼い頃に神だと教えられた虫がいました。朱竜ぐらい大きいんですよ」


「え? あ、う、うん? まあめちゃくちゃ気になるが……とりあえず大丈夫か。朱竜系宗教派閥は、うちが一番古くあると言うのは話したとおり、そこからたくさん枝分かれした」


 かなり困惑されてしまった。

 それはともかく話を進めるという意思が最初より断然あるようだ。

 むしろ距離置こうとしていないか。


「フォンダター派が最も古い……ですからね」


「ああ。ただな……実はフォンダター派も最古じゃない。フォンダター派はその名をもらい受けた別れ身らしい。それは、元の派閥から膨らみに膨らんで、大きな分断を生んだあと闇へと隠れた……世間一般ではそんな歴史は残っていないが、我が征火隊の秘匿された歴史に記されている。その名もなき団体は、後にピヤア団と名乗りを上げたと」


「……えっ!? ピヤア団がここで!? まさかピヤア団って宗教団体なんですか!?」


「元の形はそうだ。今では何もかも失っている。あれらがどのような理念であれ、長年の時を経て変わりきっちまっているからな……それなのに、あらゆる中枢に潜り込む手腕の持ち主が台頭している。なんとも頭が痛い話だよ」


 女性の征火隊さんもなんだか痛そうな顔をしている。

 まあとんでもないネタだよね。

 言ってしまえば先祖の恥……または傷。


 こういう時気の利いたセリフ1つ出てくればいいしなんなら気付けなければ幸せだっただろう。

 ただそれよりも続きの言葉が早く出た。


「ただなんの因果かピヤア団側も、なぜ自分たちが癌になったのかは記録をとっていたらしい。いやむしろ……記録を取るために癌として動きまくっているとも言えるか。奴らはあらゆる歴史、記録、そして積み重ねからの開発を、外に持ち出した。朱の大地外に、だな。それが1つめの大きな目的。たくさんお仲間も出来たろうな、朱の大地で歴史を残すことは困難で、表立って海の外に頼れば、不利な立場になるのは明白。そもそも外からのやつらはすぐに朱竜様に焼かれちまうからな。間を闇に仲介させることにより、スムーズにことが運んだろうよ」


 うーむ……

 ゾッとする(こわい)ゾッとしない(感心しない)な……


「全部焼かれるから、外で保管したい……けれど、外で保管すると利用されるから、協力組織みたいなところを利用する……あまりに非合法な合理的さですね」


「実際、オレたちフォンダター派ですら多くの資料を失って虫食い状態なんだ。特にあらゆる現物が失われているのは痛すぎる。宝石剣みたいな特別な武具も昔は数多く合ったしいが、大半はすでに喪失しているしなぁ、ま、オレとしては今を生きる麗しのコたちがいればなんでもいいんだけれど」


 ぶ……ブレないな……

 当然冷たくなった女性の視線を受けて話題は軌道修正される。

 というか宝石剣……ここでも無くなったという話が出てきたなあ。


 もしかしたらもう朱の大地にはないかもしれない。


「ま、国やおえらいさんたちは腹の中では何を考えているかはともかく、互いに利用しつつ利用された。痛い腹だな、もし細かく探ろうとすれば国際問題になるだろうし」


「そ、そうですね……」


 うん……身に覚えがありすぎる。

 めちゃくちゃ襲撃されたからね……!!

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