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五百六十八生目 謎掛

 頭を柔らかくして常識を疑う。

 言うは易し行うは難し。

 事前に『この世界では不思議なことがたくさんあるんだなあ』という土壌がなければうけいれられないことも多い。


「お、いい感じに飲み込めているねえ。だいたいはほうけているか言葉が耳の外で弾かれるかどっちかなんだけどな。それこそ魔王を相手にするにはそのぐらいが必要か」


「……それで、死滅の力を持って追い出されなくするだけじゃないですよね? 何かを破壊するって」


「ああ、護衛して奥地まで潜入、その先にあると観測されている核を死滅で破壊、あの城を現代に戻す。それが最終目標だ」


「うーん……」


 聞けば聞くほどそれがどのような効果を発揮して世界を救い……

 同時にピヤア団や朱竜が襲ってくるのだろう。

 危険な場所を潰すぐらいの話に聴こえるのだが。


「ま、これだけ言われて納得するやつはいないだろうな……ピヤア団のヤロウが目指しているのは、ンジャ・ログ城を中心として遥か古代の神話を復活させることだ。だが、まだこちらはかわいい。朱竜様の目的はこの城を破壊して中に溜め込んだ莫大な力を吸収……その力を持ってしてついには星を焼くことかもしれん。朱竜様との対話は不可能だが、状況証拠を集めることはできたからな」


「ええっ!? いきなりそんなデカい話を!?」


 突然情報量の塊になった。

 というより今まではこちらの処理が追いつくかを見ながら話していたのか。

 行けるとおもってアクセル踏み込みやがった。


「ハハハッ、他人からこういうのを聞くと思うことは1つ、『うさんくせえー、どうせ嘘がデマじゃないの?』だな」


 一応魔道具は正当を返している……

 ただこれは世の全てにおける本当を指し示さない。

 複雑化すれば曖昧になるし本人が知らなければ嘘も本当になる。


 逆にいえば。


「何かそれなりの、根拠があるんですね」


「まあな、細いことは資料にまとめてあるから、そちらを読んでくれ。大きいことは……まず朱竜様の方。我々の名前を見てもわかるように、火とは人を焼くもの、それらを征してでも人を守るのが我らの役目、火の象徴を信仰しつつも、その火に身を焼かれぬようにする、適切な距離を保つのも役目。ぶっちゃけ言うと朱竜様をめちゃくちゃ監視しているし、データを集めて予報して人々を守る大本元やらせてもらってまーすよ」


「あのとんでもない予報能力……こっちの国でも見たことがないとおもったら、やはり大手がしっかりとバックアップして行っていましたか」


「本来この国、この大地ではそういう積み重ねはあんまりできないし、やらない……燃やせれるからな。まさしく特別ってわけだオレたちのような宗教派閥は。確かにデカいわけでもないし強いわけでもない。ただ、古くから続いたというのが重要な要素を持っている、というだけだなぁ。朱竜様がどんどんと狂っていっているの観測できるくらいは」


 露骨に部屋内の空気が悪くなった。

 出来得る限りバレットは朗らかに軽く話している。

 ただ空気が悪くなった原因は明白。


 私以外朱竜教なのに朱竜的に不愉快な話だからである。

 だが同時に会話が止められることもない。

 ある意味簡単な話だ。


 現地でずっと観測し続けた者たちにとって変動はあまりにもおおきかったのだろう。


「行動が変になっているのは知っての通り、しかし重要なのはこっちのデータ……今まで観測されていたエネルギーと周波数のデータが近年は乱れに乱れている。魔王が再度倒されたあと顕著になった。最近に至っては爆発寸前というかぁ、まさしく噴火前の火山、朱の大地を焼き尽くすような力。それなのに不自然にためこんでいる、自爆でもするつもりなのかというほどに」



 私がぞわりとして思い出したのは例の悪夢。

 最近はあまり見なくなったが……

 昔からつきあいのあるすべてが燃えた夢はまだ終わってなかったのだろうか。


 手元に見せられたグラフ……良く整理できている。

 長年やってきたうえで身についたのだろう。

 神をはかる(・・・)という不敬にも等しい行為を。


 まあ私は性格知ってるしそれでどうこう思うようなヤワなタマではないけれど。

 ここの空気が色々言いたいこと丸めね飲み込んだようなピリピリになるのは致し方ない。


「なんなんですかこれ……こんな不安定な状態になるほど力を溜め込んでいる……? なんで……」


「さてな。神の思し召しまではさすがに……しかし朱竜様は何度か過去行ってこなせなかったことが2つあると観測されている。1つ目は魔王に勝てなかったとされること、有名な神話でもある……しかし、もうひとつある。ここまで聞いたなら分かるんじゃあないか?」


 謎掛け……というわけでもないか。

 今までの話を整理すればわかるはんいなのかな。

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