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五百六十四生目 冷徹

 私としては重要な話が向こうから転がり込んできてくれたに等しい。

 まあそこまで私に対して依頼するあたりとんでもなく危険なことにかわりはないけれど。

 まあ乗るか降りるかでいえば。


「では、受けます」


 シンプルな答えを返すことになった。

 いい加減対人でのやりとりも慣れが生じてきた部分はある。

 こういう時さりげなく目を開いて相手の目をしっかり見定める時間を作って……あっ3つ目は閉じておく。


 相手がわかっているとはいえニンゲン相手に3つ目をやりすぎると普通に引かれることもある。

 まあ隠しているからどちらにせよ見えないとは思うが。

 それでも気持ちの問題に差異が生じるからね。


 そして上体を調整し首も含めて言葉以上に思いを込める。

 つまるところ考えなしの受託じゃなく自信の表れを。

 そして同時に思惑を感じさせる絶妙な気配を。


 こういう対人作法とも言える戦い方はユウレンがノリノリで付き合ってくれました。

 もちろん私がにおい以外で相手から情報を得るためにもだ。

 後は尾。


 正直ここまでのは自分が前世ニンゲン意識を全力で高めればできなくもない。

 問題はしっぽ!

 ニンゲンにないものなのでどうしてもこっちの意識がおろそかになる。


 ここでブンブン振っていたら台無しなので大人しくしていてもらおう。

 正しくしっぽの先まで力を入れて大人しくさせる。

 ほんの少しくねらせる……それだけでいいのだ。


「なるほど……少なくとも、嘘ではないらしい」


 ふぅーー。

 もはやここでの仕事9割は終わったと言っても過言じゃない。

 あとはチョイチョイ話を聞いて備えるだけだ。


 まあここで無責任に引き受けられても困るもんね。

 色々な意味を含めての嘘……か。

 少なくともお眼鏡にはかなったらしい。


 まあ他人視点から見てみると私の経歴嘘くさいとか魔物って時点で会話通じるか怪しいとか他様々な疑惑あるからなあ……


「信じてもらえてなによりです。バルクさん、早速依頼の方を見せてもらいたいのですが」


「ここからは、ワタシだけでは説明しようのないこと、理解の外側、語る言葉の相違が出てきてしまう。そういうわけで……彼らがいる」


 バルクが目線で指し示したのは先程から微動だにしない征火隊騎士だった。

 目線を向けられてやっとひとりが動き出す。

 バルクのとなりに座ってその気丈夫そうな顔をキリリと引き締めて。


「やあぁ、お嬢さん。ご紹介に預かった征火隊の、まあ隊長格のひとり、バレット・ラグランディアだ。ま、ひとつ宜しく」


 ああ……黙っていると雰囲気がまったくもって変わるタイプがまたひとり。








 バレットさんはとにかく話せばチャラかった。

 

「やっぱり、そこまで活躍してたらモテるっしょやっぱ」


 正直そんなこと聞いてないよということもガンガン振り込んできて。


「オレさ、征火隊に入ったのもちろんモテるため! あんたも……オレに惚れちまってもいいぜ」


 当たり前のように口説こうとするし。


「やっぱさあ、オレってイケてるじゃん? だから魔物相手にも実はイケてると思うんだよ。魔物を口説いた人だなんて御伽話の中にしかないからな。オレは女だったら魔物でも口説いてみせるさ」


 端的に言って相当うざったらしかった。


「さあ、こんなしみったれた空間からふたり抜け出して、美味しいお酒でも飲みに行こうよ。首都には来たばっかりなんだよね? だったらオススメのお店があるんだ……」


「チェンジで」


「あの……チェンジとかそういう制度のある場合ではないので……しばらく耐えてくださいますと……」


「チェンジで」


 一番キツイのは真面目なシーンなのに隣で延々くどきを聞かされているバルクさんである。

 もはや顔に汗をかいて私がここにいてくれるようにとりもつ存在と化している。

 

「ハッハッハッ! オレの魅力にやられちまったのかな? まったく、かわいこちゃんだねえ」


「真面目に話が進まないのであそこのふたりとチェンジで」


「まあ、アイツラは無理だよ。だって詳しく知らねえし」


 じゃあなんで連れてきたんだよ!!

 そう思いつつ目をむけたらひとりはさっきからずっと正答ばっかり返す魔道具の情報を受け取っているらしい動きを見せていた。

 いや怖いわあんなにチャラいのに本心しか言ってないのか。


 そしてもうひとりの征火隊。

 そちらは女性だ。

 体型はよく……私の目の前にいるような女性を好むものがまっさきに好むような姿。


 制服ごしでもわかるほどに。

 しかしてその目は凍えるようなものだった。


 なおバルクはむしろローズが「自分が世界を回しているかのような、高飛車で勘違いした英傑」のような相手ではないかを一番心配していたようです。

資料だけでは、性格の奥まで知ることはできないために。

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