五百六十一生目 征火
そう。
首都までは平和だった。
首都までは。
「ナニコレ」
煉民主国首都。
経済的主要と政治的主要を兼ねた都市で当然規模も最大。
そんな都市は出入りもチェックも激しい大都市のはず。
それなのに私はこの鳥車を迎えるためだけにずらりと並んだ一団。
そう1つの門まるまる使った一般人を排除する出迎えだった。
大統領の出迎えというより王様の出迎えと言うよりコレはまさしく……
「どうしたの? おばさん」
「え? いやあ、なんだかこの鳥車を迎え入れるだけですごく厳重だなあって」
「そうなのかなあ、結構いつもどおむがっ!?」
「ま、まあ、今回は騒動がありましたから、厳重なのかもしれませんねほほほほ……」
あわててツカエがハコビの口を塞ぐ。
鎧と剣を着込み銃と礼服を着込んで両脇を固めるようにズラッと並んだ一団がいつもどおり……ね。
この国は民主国であり王政ではない。
色々改善点はありそうだが大統領制度で選ばれている。
そしてまあ大統領が出入りするときこんな厳かなことになったりはしない。
王様なら王様で盛り上げるものだ。
今この場は不気味なほど静まり返っている。
鳥車の動く音が響くくらいだ。
100余名の隊列に見守られつつも私は歩き。
何も言わないフルフェイスヘルメット兵士たちが付き添ってきた。
え……めちゃくちゃ怖いんですが私離れたほうが良い?
またこういうときにいるのがハッタリ騎士とかじゃなくて明らかに力持ってますよアピールが強い騎士。
本当に素晴らしい騎士は戦う前に戦意をくじくという歩く"無敵"みたいな存在と言うけれど実感する。
ここにちょっかいかけてくるチンピラいたらそいつらとその実家と親族と村全部に同情する。
もちろんそんな大事故は起こるはずもなく特別っぽい鳥車格納場までやってこれた。
あれほど厳かな雰囲気があった門前も解放されてかわりに私達の回りに10名くらい騎士がいる。
フルフェイスってこんなに圧があるんですね。
「ええっと……私は……」
「あ、おばさん! それじゃあありがとうね! ドラゴン! スレイ!」
「あはは……じゃあね」
「報酬のほうは、ギルドに預けてありますですじゃ、それではサヨウナラ」
「ほんと、あなたで助かりましたよ! ピヤア団に対してやることが増えたので、これで失礼します」
御者さんそれにツカエさんもどこかへと去る。
そして今だ私を取り囲んでいる騎士たち……
「えっと……」
ガシャンッ!
「うわっ!?」
正面のひとりが鎧の一部だろう音を響かせる。
すると全体が突然動き出し大きな刃……ではなく全員が帯刀している小剣をだす。
そして統一された奇妙な動きをしてからしまいこみそのまま去っていた。
私は変な汗が出て固まるしかなかった。
ええとぉ……
何?
ちなみにあとでわかったことだが尊敬する相手に対しての敬礼だった。
口を使ってほしい。
そして私はすぐに冒険者ギルドに行くには疲れすぎていて宿をとり施錠してアノニマルースへ帰って今に至る。
戦闘そのものよりも私は何に巻き込まれたんだという気持ちに疲労した。
厄介事なのは確定している。
幸い肉体の怪我ではないのでホルヴィロスのお世話にならずゆっくり休んだら治った。
根は引きずっているがその解消のためにも冒険者ギルドに向かわないといけない。
アノニマルースの作戦本部も大局の話は曖昧なので伏せておくことが多いし。
聞けば推測は教えてくれるだろうけれど直接聞きに行くのがいちばんだ。
というわけで。
半日たって朝になり冒険者ギルドが開いてから首都に再度来た。
煉民主国の王都。
昨日があまりにおかしかっただけで今日は騒がしく賑やかに戻っている。
政治的な意味合いだけではなくお金の流通拠点でも有るここではどこを向いても商売看板が見える。
街を歩むだけで声が聴こえる……
「昨日のあれ、本物の征火隊ってマジかよ!?」
「王都前の門と、道中の大通り、どちらでも出張してきたらしいよ」
「みた? 門前の整列! きれーだった!」
「敵の賊と戦ったらしいけれど、大立ち回りすることになって、全員は捕らえられなかったらしいな……征火隊を持ってもしても捕まえられないなんて……」
「でも征火隊なら大丈夫でしょ!」
「だな!」
……随分民衆からの信頼が厚いようで。
征火隊……また知らないものだ。
普通の騎士とは違うのかな?
そんなことを考えつつここの冒険者ギルドへやってきた。
……めちゃくちゃデカいし黄色レンガブロックもこんな豊富に……
黄色レンガブロックは高級な灰からしかできないのに。




