五百五十七生目 石礫
「いやズリーぞ!?」
弱点がはるか高く。
さらに2足。
飛ぶことや素早く駆け回ることはこちらに勝てないと踏んでか……
いやそんな理性はない。
おそらくは薬と変身の効果。
より戦いに勝ちやすくするためのなんちゃって進化!?
だとすれば見た目以上に。
「みんな気をつけて! 多分ここからが……あいつの全力!」
「これはまずいかもしれませんね……」
「あー! 楽すぎたとおもったよ、くそう!」
イタ吉の叫びもさることながら向こうの全力が何来るか……
そんなことを考えていたら後ろ足を大きく持ち上げる。
「へ?」
踏みしめる。
それだけで地面が砕け光の波が地面を揺らす。
ゼロエネミー!!
「「うわああぁー!!」」
もうひどいありさまだがシンプルな技。
地震を起こしてきた。
私の魔法より範囲は狭いもののえげつないほどに有効手。
アヅキは空を飛んでいて私もまあ飛べる。
後でそういう装備だと偽るとして背中から針を翼状に生やして。
多少の吹き飛ばされはしつつも空に向かう。
イタ吉たちの元にゼロエネミーが大盾になって向かう。
ふっ飛ばされているそこで受け止めて。
そして。
「振動が……吸い取られている!?」
「うわやっべ、この武器いいなあ」
「ローズの武器全体的に良すぎねえ
?」
「愛用すれば答えてくれるんだよ〜!」
私は空からイタ吉たちの声に答える。
とはいえ土系統を吸収するというゼロエネミーの能力は私が土の加護を得ている状態で私の一部を含ませたからなわけで……
言わないでおこう。
「ただまあ、これでイタ吉はほとんど動けないよね……だとすると私とアヅキで止めないと」
「あん?」
ん?
イタ吉に何かスイッチが入ったかのような声が。
「イタ吉?」
「おいおいおい、むしろデカブツほど俺の!「役割!」「だろうが!」今吹き飛ばされたのが悪いだけで、近づければなんとかなる!」
「ええー? 本気なの?」
イタ吉が隠している手……切り札と鬼札どちらもなんとなくわかる。
ただどちらにせよこの地震バリバリ状態じゃあむり。
今も上空で話しつつ殴って撃っているんだけれど。
「とにかく! この地震を一瞬どうにかしてくれ!!」
「こっちも必死になんとかやってるけど……どうかなあ!?」
「チッ、イタ吉たち、少しかかるかもしれんぞ……」
顔面ガード。
それが2足歩行になって効果的に行い出した行動だ。
理性がぶっとんでいるのに理知的なガード行動するだなんてとは思うけれど向こうからしたら攻撃も守りも同じく大暴れでしかないのだろう。
つまり両腕を振りまくって顔を守るかつこちらを叩き落としに来る。
シンプルだがそれゆえに面倒。
あと地味に振りに合わせる光の伸びがえぐい。
いきなりリーチがかわるのだ。
「ッ! 後ろに避けても意味がないや!」
イタ吉たちを空から治し迫りくる爪を避けた……はずだった。
私は瞬間的に伸びた爪光に切り裂かれ吹っ飛ぶ。
空中受身をとり回復先を自分も含める。
めちゃくちゃ早く腕を振るうわけではないもののめちゃくちゃに振るう。
そしてリーチが不意に伸びる。
するとどうなるかと言えば。
「うおおっ!? 主! これはどこにいても危険なのでは!?」
「幸い腕は2本しかないから敵に防がせるように攻撃を止めないでかつこっちも動きを止めない!」
「ありがとうございます主、私は無理みたいでぐふっ」
ああー! アヅキが吹き飛んだ!
あちらも回復しないといけない。 ここに来て手数が不利面になってきた。
これがこの世界における格上に数を向けても危険が増すパターン。
まあ元の世界でも剣と盾を持ったニンゲンたちが空から爆撃されて終わるみたいな話。
つまりめちゃくちゃまずい。
こういう時ドライの沸騰しそうな思考と私ことツバイの冷静に組み立てる思考。
それにアインスの直感。
それらをまとめてまとめて……
「よおぉーし!」
気合を入れ直し突っ込む。
幸い私の目からすれば敵の動きは見極められる。
ただ私ひとりが見えていても意味はないわけで。
優先順位!
目へ連続攻撃!
あえてほとんどの攻撃に武技を挟まずなおかつ魔法は最短型に効率化して連続放出。
「土魔法"ストーンショット"! "ストーンショット"! "ストーンショット"!」
魔法の威力向上を捨てて量産化する。
石を作ってぶん投げるという魔法で昔はこれで結構うまいことやらかしたことがある。
その時の被害者はさっき吹っ飛んで今治療を受けている。
ただこの投げている石は鉄鉱石じゃない。
もうひたっすら石。
なんの種類かも選別してない。




