五百五十六生目 変化
悪魔の目はものすごい動く上に向こうが狙ってくる瞬間に対処することとなる。
つまり避けつつすれ違いざまに目へ叩き込むか頭全体を範囲攻撃しなくては。
じゃあ身体の攻撃が無意味に近いのかといえばそうでもなくて。
「あ! またシールド貼って回復しようとしている!」
「わかりました、主私が止めます!」
少し攻撃の手が止むと自己回復と眼のシールド貼り直しをはかるのだ。
これが厄介。
千日手を組まれたら負けるのはこちら側だ。
「オラァ! 止まれ!」
「グオオオオッ!!」
イタ吉たちが目に切り裂きまくる。
なんとか回復が止まったロガだがお返しにと言った様子で炎を吐く。
「ちょまあああっ!!」
「俺が焦げた!」
「大丈夫? 復帰できそう?」
「まあそこはなんとか……スイッチだ!」
尾刃イタ吉がウェルダンになったので交代。
傷的にはシャレにならないもののあれはイタ吉の生命力や防御力が3体分めちゃくちゃ弱いことに起因する。
誰か生きていれば起こせるしね。
その分範囲攻撃が怖いもののそういうときの手は持っていると聞いている。
とりあえず大丈夫だろう。
ただそれも交代してこそだ。
小イタ吉たちが尾刃イタ吉を引きずっていくのを見つつ私は代わりに正面へ降り立つ。
凄まじいプレッシャーが上からかけられた。
急いでかがむと真上を炎の牙が通った。
余熱であぶられる。
いや熱い!
「熱いって!」
連続で顎をぶん殴り止めに蹴り上げる。
身体が浮くことはないものの顎は浮いた。
そのうちに逃れる。
あとは全体に電気魔法"スパークエンチャント"。
炎の通りは悪いけど電気の通りは良いと見た。
生物だからという以上に外皮に対してよく流れる。
そして目にまで流れるため結果としてダメージが増すと。
それに……
「アヅキ!」
「ええ、これが貰えれば……!」
アヅキの手甲が魔法の効果でバチバチと鳴り響く。
しかしアヅキの手甲は元々バチバチしていた。
合わさるとどうなるかと言うと。
「オーバーチャージ!」
アヅキが手甲同士をガチンとぶつけ合う。
激しいスパイクが一気におさまって行きかわりに手甲が青白く染まる。
その拳を迫りくる鉤爪に対して空に振るえば……
大気が震える。
それは腕を強烈に弾いた。
否。筋肉の収縮で結果的に弾くように逸れたのだ。
「ガオオォ!?」
雷鳴。
それも1本遠くから放った電撃とはわけが違う。
大量の本数をともなった雷。
太く多いのもそうだが長い。
電気という性質上長く続けるのは難しく……同時に長く浴びれば致命的になる。
というか今のロガみたいに焼けていく。
全身から蒸気を上げ私ですら近づくと危ないので少し離れて支援魔法やら射撃を放つ。
「こいつで、揺れろ!」
アヅキが両腕を揃えて高く飛びそのまま高高度からの突撃。
地味にロガの重力足した圏内からの攻撃なため単純な物理法則の足し算。
雷撃がかち合うように爆発しロガの身体が崩れてしまう。
まあ皮膚だけじゃなく筋肉にも明らかに電流が走っていたからね。
こわばっていた筋肉たちが一気に弛緩したためだ。
このチャンスを逃すわけには行かない。
聖魔法"ホーリースラッシュ"と剣ゼロエネミーに銃ビーストセージそしてイバラの武技。
"波衝斬"! "雷電轟華"! "龍螺旋"!
目にありったけの攻撃を与える。
もっとでかい魔法も用意しておけばよかったかなとも思わないけれど魔法って大きければ大きいほど範囲が広がってしまう。
魔法で的確に目を抉るのなら……特に聖魔法ならこれが適役かな。
"龍螺旋"の効果で爆破された目を庇うようにロガは大きくのけぞる。
「へいへーい! このままだと倒しちまうぜ!」
「あ、イタ吉復活?」
「ふう、その代わり私のリソースが削れてしまいましたが……おい、俺とかわれ」
「言われなくとも!」
「へへっ、カタつけちまうかもな」
「ロマン武器すぎんだろそれ」
イタ吉たちに言われたい放題されているけれどアヅキが下がらなくてはならないのは事実。
先程までの手甲唸りはどこへやら。
手甲は機構が一部開いて熱を放出している。
オーバーチャージの代償であるオーバーヒートだ。
ぶっちゃけしばらく性能が落ちる。
でもだいぶ敵悪魔生命力が削れ……うわっと!?
「イタ吉危ない!」
「2足になったぁ!?」
イタ吉が斬り込もうとした瞬間にその前2足は浮き上がる。
尾にさらなる変化が起きて重心が寄るほど重みが増す。
バキバキと外皮がまして行っているのだ。
先程までの機動力重視だった姿とうってかわって……
弱点がはるか高くに。
全身あちこちに盛り上がっていく甲殻が見られるしもしかしなくても第2形態?




