五百五十五生目 接戦
2021/07/12 前後が更新入れ替わっていました……この順番でただしくなりました
影の矢はあっさりと効果時間を終わらせられ弾かれる。
さらに近くのイタ吉やアヅキに対し絶え間なく攻め挑んでいる。
ただ……それだけだ。
近くにいるものを率先して殴る。
正しいようでいて私を完全放置。
おかげて遠くからチクチク浄化ができる。
「やっぱり理性が飛ぶとまともな判断はできない……ね!」
武技"雷電轟華"を放ちまっすぐ弾丸が目に飛んでいく。
目に直撃すると雷撃を放ちながら穿っていく。
けれど武技1つ程度では動きがわずかにズレる程度でほとんど止まらない。
(一方的にボコるってのはやっぱ1つの面白さはあるが、味方たちが盾はってくれているぶん、そう言っている場合でもないな)
ドライの言葉通りイタ吉はかすりダメージを何度か負っているようだしアヅキはさっき横腕振りを手甲で受けきっていた。
少なくない生命力減少が見られる。
イタ吉は3体とも生命力が別かつどれかがゼロになっても復活させられるという違反手じみた能力を持つもののアヅキはそうじゃない。
「アヅキスイッチ! "ヒーリング"!」
「助かります!」
向こうが近くの相手しか狙わないというのはこういう時便利になる。
私はアヅキと立ち位置を変わって向こうの敵愾心をかう。
よーしこっちだこっち!
(一方的なのもいいが、やっぱり戦いはこうでなくっちゃなあ!)
ドライとともに私もテンションが上がっていく。
というより上げていかないとすぐ側に死が迫っている!
単純な武技の連続振りかぶりあたりはもし目で見ていたらわけのわからない間にやられていただろう。
ただ"鷹目"で外から見ているので別。
わりと大振りなため早くても動作でバレバレ。
特に理性が飛んでるため隠す気がない。
私は安全圏を確保しつつイタ吉と丁寧に位置を調整していく。
同時に殴られる位置だとすごくもったいないからね。
あとこの間も剣ゼロエネミーがガンガン切り裂いているので相手からしたらうっとうしいことこの上ないだろう。
「ハハハハッ、ローズ! こいつ、なかなか楽しい敵だなあ! なんつーか、いやらしさがぜんぜんない!」
「まあ、ものすごく純粋な……殴り合いだね!」
イタ吉たちも楽しんでいるようで何より。
これはしのぎあい。
命の取り合いだが……
本能的な戦いの良さというものが渦巻いている。
命のかかる戦いだからこそ燃え上がるものがあるわけで。
そこに飲まれないようにしたいが否定はしない。
冒険がワクワクするのはきっとそういう未知もあるのだから。
「ハアッ!」
私の方に迫ってきた技を避ける。
地面をえぐるように爪で引っかきその地面を跳ね飛ばして当ててくるとは。
私が土の加護を得てなければ結構危なかったよ。
そう土が私を避けるように配置されていた。
相手はコントロールのきかない技なせいで土塊が乱雑にはねたのだろう。
私はスキをさらしたその顔面へと光とともに聖魔法"ブリンクスター"をぶん投げる。
光が敵の目に飛び込んだら火を伴わない爆発と光で悪魔の目が焼かれる。
「ギャオオオオオッ!?」
たしか悪魔の目は光を取り込んでいるわけではないが……
それはそれとして浄化させる聖なる光が異物である悪魔自身を焼いていく。
今近づくと暴れにあたりそうなので少し下がって。
「主、スイッチを。それと遠くから見た感じ、動きが変わってきています」
「やっぱり……ありがとう!」
傷の癒えたアヅキと交代。
火以外の魔法を放ちつつイバラで武技"猫舌打ち"を使う。
定期的に放ってきたおかげで表皮にけしてぬぐえない傷を残している。
これが"猫舌打ち"による防御性能の低下。
本来ならすぐに塞がるはずの傷たちが鈍く光をまとっていて塞がらない。
これで相手に打撃が入りやすくなる。
さらに!
「猛毒と! "拷問払い"!」
私の尾が瞬時にイバラに変わる。
そして尾の先には赤い花のようなトゲ。
ここからじわりと猛毒がにじみ出る。
一気に伸ばし乱雑に振るいまくる。
"拷問払い"は敵にかかった状態異常や悪化量に対してボーナスな打撃を走らせる。
今は重力と防御能力低下で意外に大きめのダメージ。
そして。
「グウウオォウ!!」
「よし、毒だ!」
私の尾でさっきから毒を撒き散らし挿し込んでいたら状態異常に猛毒が追加された。
こうなったら後でもう一回"拷問打ち"だ。
段階的に威力が跳ね上がっていくの良いよね。
とは言え追い詰めたのかと言えばノーとなる。
3匹での総攻撃回数は30を超えているものの生命力はまだ4割ほどか。
しかも有効打はほぼ悪魔の目ヒットである。




