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百六十生目 帰還

「あの時は戦いしか無いと思っていた我としては、今こうやってローズ殿と話し解決しているのは不思議な感じだ。

 だが、死体を積み上げる以外のやり方を学べたのは良い機会だった。心から礼を言わせてもらおう」

「あはは……まあ私以外はだいたい話しても分からないし、それは仕方のないことだから気をつけてね……」


 言葉が分からない以前に捕食者が敵かよくわからない物体としか見られないだろうからね。

 "無敵"と"ヒーリング"の組み合わせバンザイ。


 一方赤蛇。

 赤蛇の身体の傷もそこそこ深く傷つけたのだが治っている。

 理由を聞いたら……


「あいつらがいつの間にか勝手に霊草を採ってきてな、食ったらだいぶ治ったよ。その代わりにあいつらがボロボロになっちまって……まったくそれだと意味がねー」


 そう言う赤蛇は迷惑そうな、でもありがたいようなそういう顔をしていた。

 守るべきだと考えていた相手に守られた形になったから故だろう。

 苦笑いしながら赤蛇側の話も聞かせてくれた。


 赤蛇はむしろ最初はどうするかと恐ろしい強さの私からみんなで逃げる方法を考えるか一矢報いるかと考えていたらしい。

 しかし赤蛇の仲間たちはそうではなくただひたすらおぞましい力に逆らうのは危険と訴え平伏しようと勧告したそうだ。

 かなりビビってしまったらしい。


 いやまあ実際は初見殺しの押し付けをしただけで2回目やったら負けそうだけれども。

 それは相手の知らないこと。

 恐怖の大王が攻めてきたぞというノリで大混迷を極めたそうだ。


 そこで1晩かけて落ち着かせなんとか話を纏めて結局はこうやって話し合う結果になったようだ。

 赤蛇は赤蛇自身はそこまで賢いとは考えておらず代表的な立場ではあるものの実際どうするかは裏で蛇たちと決めるらしい。

 幸い連絡は彼らのスキルで現在も電話のように念話がつながっておりリアルタイムでやり取りが出来ているようだ。


「まあ今までの内容を聞くに何とかなりそうだな。こっちは最悪刺し違える覚悟で来ているのに随分とのほほんとした提案なこって……まあ黒蜘蛛には油断は出来ないがな」

「私たち自体も頼まれて調停にきたようなものだし、私はここでの活動を認めてもらうのが1番ですからね」

「我は我の群れを守るだけ……ローズ殿が間に入るならばこそよ」


 そもそもこの2頭は万能翻訳機が無ければ言葉は通じ合えない。

 今日マトモに話あえたぐらい互いに言葉を交わせる事は無かった。

 というか言葉交わしても"無敵"と"ヒーリング"組み合わせ効果が無いと多分敵としか見ない。


 そのため力での決着しか無かった面が大きい。

 一度双方の群れを落ち着かせてから話し合わせれば調停可能な落としどころが見つかるのではと思っていたとおりだった。


 彼らは結局群れを守りたいだけだ。


「……かくかくしかじか……というわけで良いですね?」

「ああ、我は問題ない」

「俺の方もそれで大丈夫だ」


 細かいことはともかく決まった内容はこうた。


 1、形式上3つの群れは同一化させる。実態は3つの群れとして継続させるが内乱は起こさせないしそれぞれの群れ内の移動は自由とする。

 1、形式上私ことローズ含む数名がトップとして動くものの実態は今まで通りで良い。黒蜘蛛と赤蛇はそれぞれの群れを治める役割にはなるがローズはその2頭を配下としつつもその2頭の配下への指示権は持たない(というより持てない)

 1、個々での捕食や争いは自由ながらそのさいには群れとしての戦いには一切しない。あくまで全て同一の組織に所属している扱いであり大規模な戦争は禁止。


 難しいことは省いてこんなものか。

 形式上と実態が離れる事にはなるがそのほうが良い。

 形式通りにこの数をまとめようとしたら大変な事になるからね。


 そして同じ群れとして私たちも含む事により自動でここで暮らしても良いという事に。

 彼等が支配していた広大な縄張りは、一応他の魔物はいるものの私たちもこの縄張りが使えるようになった。

 これで私たちはこの迷宮で暮らせるわけだ。


「それじゃあこれからはよろしく!」

「ああ、よろしく」

「宜しく頼む」


 大きな2頭と小さな私の群れはこうして巨大な1つの群れになった。





 会談し終わりなんとか纏まって一旦私が話を持ち帰るために解散となった。

 少し歩いていたら上空から大きな魔物が近づいてくる気配。

 見上げて見たらタカだった。


「おーい、そろそろ俺を元のところに返してくれないかー?」

「うん? あ、あの時はありがとう、お疲れ様! 良いよー帰って」

「おう! っておいおい、忘れたのかよ、俺は魔法で連れこられたから帰り道なんてわからないぞ?」

「あ……そっか」


 タカは空魔法"ファストトラベル"で直接連れてきたんだった。

 それにたとえ帰り道が分かっても迷宮の出入り口はタカにとっては小さいだろう。


「あ、帰る前にちょっといい?」

「ん? なんだ?」

「今のところこの近くで暮らす気はない?」

「うーん、まあここの空気は気に入ったがわざわざ縄張りを離れる理由にはならないな……」

「そう、また気が変わったら教えてね」


 タカが迷宮近くに居座る間はニンゲンが寄らなくなる。

 それは良し悪しあるから……いつかはどいてもらわなくてはならないかも。

 まあそれはその時だ。


 タカを空魔法"ファストトラベル"で迷宮外の山頂まで連れて行き別れる。

 さあてしばらく忙しくなるぞ。

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