五百五十三生目 火炎
感覚的に比較値が少し強いとかなり強いはぜんぜん違う。
少し強いはとりあえず殴り合ったときに痛いけど勝てる。
じゃあかなり強いはといつとまずまっすぐ殴り合ったら負ける。
前提が違うわけだ。
ちなみに無謀とか書かれている場合はそういう段階じゃなくて向こうが指先ひとつでこっちを吹き飛ばせる時のみの表現。
相手にしちゃいけない。
なので数を増やすというのは間違いなく重要な手で。
同時にそれだけでは勝てない。
こういう大型相手の時は大きな振り込み1回で誰かが当たってしまいそこから崩れるのがとても恐ろしいからだ。
強化と弱体それに情報。
全部そろえてなんとかなる。
アヅキが遠くから放つ雷撃が光り竜の身体に電撃を走らす。
ほんのわずかに怯むもののそれを振り払うように全身を横回転させる。
私とイタ吉がリーチ範囲から転がってギリギリ避けた。
「バッ!? なんだその動き!?」
「身体を捻ってから動くから転がれば避けれるけれど……懐に潜り込まないようにしないと」
「俺懐に潜り込むタイプなんだけど!?」
「イタ吉は……まあ間に合うでしょ」
口は軽く手には汗。
ぶっちゃけるとわりかし焦った。
身体を少し捻りふんばったから何かをするかなとは思ったけれど質量暴力その場タックルか。
かなり強引な力技だけれどもやられたら轢かれる。
ただ私の得意距離的に対応できないわけではない。
ラッキーヒットにだけ気をつけないと。
ドラゴンだし本来は豊富なスキルを駆使しつつ鍛え抜かれた技を自分という巨大な質量を持ってして相手を圧殺するんだろう。
けれどこれはもうそういう強みは全部吹き飛んでいる。
ひたすら最適解暴力を叩き付けてくる……!
今も私の方を見た目よりも俊敏な動きで追いかけ鉤爪で連続斬りをしてくる。
ちゃんと見ていれば避けられるものの避けるだけで攻めに転じれない……あ。魔法完了したので補助をみんなに撒く。
次の補助魔法を唱えつつもさすがにこのままじゃあまずいかなと判断。
次の斬撃に合わせて武技"空蝉の術"!
正面に敵愾心を残したまま背後に瞬間ワープ成功。
盾がないとほんとやる気起きないよねこのスレスレ具合。
けれど相手はスキだらけだ。
「"猫舌打ち"!」
もし普段から全身にイバラを生やしている奴がいたら明らかに人外だろう。
しかし技の瞬間だけ出して引っ込めれば?
それ魔法や武技っぽくないか?
そんな偽装方法を思いつきやるのが今からの方法。
イバラを出すと同時に武技。
イバラたちがバラバラに裂けつつ登場し有刺鉄線みたいなトゲがついた。
それを連続で振るいまくってこちらに気づき尾をふるおうとしたあたりで引っ込めつつ逃げる。
うん。いけるな。
使うタイミングをずらしてかつ終わり際の引っ込め時は移動に使えば問題ない。
……いきなり全身力みだし嫌な予感しかしない。
「危ない!」
私の掛け声とともに私達は跳んでその場を離れる。
そしたら背中の翼を大きく広げ大量の熱を放出した。
うわっ光も撒き散らしていて攻撃だこれ!
さらにエネルギーが高まると空へ飛ぶ。
一気に上昇し……
明らかに羽ばたく以上の力を持ってして高く位置する。
「うわマジかあいつ、攻撃を撒き散らしながら飛んでる!」
空に飛んでいるロガは翼をはためかせるたびに熱を持った光を撒いている。
接近するのはめちゃくちゃ難しくなっちゃった。
飛ぶのは構わないけど被弾がなあ。
とか思って補助魔法を撒いたら空に光が集まっていく。
「あ、竜の息吹だ」
「うおおー!! 引けー!!」
「主も回避を!」
アヅキに言われ身体を動かす。
空から大質量のエネルギーが降り注いでくる……!?
炎だと思ったけれどなんか違う!
地面に降り注ぐ光が面制圧をして地面をえぐっていく。
燃やすんじゃなく叩き潰すような息吹。
そのせいで空気ごと潰す関係により若干空気抵抗が大きい。
とにかく移動速度が遅いし反動も大きい。
ちゃんと見て走れば避けることは可能だ。
……当たったら血まみれで済むかな。
そんな嫌な想像をしつつ避けていればさすがに長い時間は判定がなかった。
10秒たたずして消えたブレスとともに上空から凄まじい勢いで突進してくる。
もし理性的なプレイをするのなら高所という利点は手放さず適切な範囲で殴ってくるけれど……
「あいつ、どんどん加速してるぞ!?」
「だんだん腹がたってきましたね」
「大胆すぎるーー!!」
光をまとった大胆なダイブ。
自らを砲弾とした突撃で地面は爆散した。




