五百五十二生目 狂化
咆哮とはいえ竜の咆哮ではない。
私達は一瞬怯んだあとすぐにドラゴンへ駆けていく。
"観察"!
[ロガ Lv.52 比較:かなり強い 危険行動:ドラゴンロア・灼熱悪溶]
[ロガ 別の竜魔物が強制的に悪魔を使った変身をさせられた。敵味方なく自身の栄養になるもの全てに襲いかかる獣]
うわあ。
とうとう比較値がかなり強いになってしまった。
相手が悪魔だから最悪神力解放も視野に入る。
神力解放前の私からして『かなり強い』だと一般的な魔物たちからしたらほぼ無双される側だ。
私みたいに戦闘技術を必死に向上させてきたタイプじゃなくて力をひたすら上げてきたタイプね。
まあここの3名には関係ない。
私のすぐ側に遠くから飛んできたもの……剣ゼロエネミーが浮かぶ。
長旅から帰ってきてくれた。
鳥車が離れたことをチェックしてから私は銃ビーストセージを手放す。
こっそり通してあったイバラにより引っかかり力をこめて持ち上げ……
現状の実力を出し切るための準備を終えた。
あとは……
「みんなは私の補助を終えるまで、守りと自己補助を優先! 私は囮になる!」
"無敵"は使わず逆に大技を叩き込んで敵愾心を稼ぐ!
よし咆哮を上げながら私の方を見定めている。
私は3つ分の魔法枠を味方全体補助に回しつつ私自身は終わっている自己強化を使って立ち回る。
大振り爪振りが飛んでくる。
大振りなわりに早い……!
見てから避けるのは簡単だが避けきる距離が難しい。
「うわッ!」
剛爪……というよりももはや3本の大剣とも言える爪武装が私のいた地面をえぐる。
ギリギリ跳んで避けれた。
何が恐いかって振り上げて振り下ろすだけで爆砕音が地面から鳴ることだ。
あれ直激したら痛いじゃすまないなあ。
当然のように逆の前脚も飛んでくる。
ゼロエネミーを盾化して鉤爪を出来得る限り直撃しない範囲で沿わせるようにして避ける。
「ぐっ!?」
高度なことをしたというより連続で避けるのが難しくて若干甘えるしかなかっただけ。
盾ゼロエネミーは宙に浮いていたが微妙に押し飛ばされ私はそれに押される。
別に……生命力が減りまくるというわけじゃないけれど!
それでも痛いものは痛い。
距離を取るわけにはいかないので積極的に前へでつつ剣ゼロエネミーに武技を使ってもらう。
この変形がほぼノータイムで出来るのがゼロエネミー最大の特徴だと思う。
武技"ズタ裂き"と銃ビーストセージで武技"充填加速"。
チェンソーみたいな刃を回すゼロエネミーが赤い光を纏い銃ビーストセージは軽く回される。
銃から弾を……ようはイバラの棘を連射しつつ急速接近。
ちなみに通常時もこの銃ビーストセージはオートマチックに近い連射ができる。
ただ撃てば撃つほど精度が悪化しリコイルしないと明後日の方向に行く。
"充填加速"はまさしく火をふく勢いで連射できなおかつブレないうえとても扱いやすくなる。
時間が短いとは言えめちゃくちゃ強いと思うよ。
今ロガの目玉に撃ち込んでいるがやっぱりというかなんというか。
直前でシールドのようなものに弾かれつつも品質が悪化していっているように見える。
そしてすぐ顔をそらした。
狙われたくない場所はあそこか……
こいつらの王道だけど嫌なパターン。
「やっぱり弱点は目がほとんど!」
ふつうあらゆる生物はいろんな急所を持つ。
しかし悪魔憑きとしての弱点は目だけなのだ。
首を裂いても心臓をついても腕を斬り落としても結果から言えば治されてしまう。
まあ生命力は削れるんだけれど。
ただ。悪魔を倒すなら弱点の目を殴りつけ弱ったところに聖魔法で追い出すのが一番効率が良い。
ちなみに邪魔法で逆に食いかかるのも効果的だそうだ。
そして変身最大の特徴は……
「よし! これだけ強化したら俺の爪で! って硬ぁ!?」
イタ吉の小さい方が魔法で巨大化した爪でいつの間にか側面に回り込み胴を跳んで斬る。
しかし何度も光る線が通ろうとも表面をなぞるだけ。
これこそ変身の嫌なところ……
なんか硬いんだよね。
元々ドラゴンは硬い方だけどこの硬さはその上から鎧着込んだときのやつ。
金属より柔軟で皮膚や鱗よりも硬質といういいところを併せ持ったもの。
剣ゼロエネミーも"ズタ裂き"しているけれど必死に刃を廻転させてやっとなんとか通している。
こんなに硬いとは……
今まで戦った変身ってニンゲン専用で理性があったんだよね。
こっちは理性を飛ばして技や思考をゼロにする代わりに圧倒的な能力向上をしている。
そして比較値は基礎スペックガ正面からぶつかった場合の仮想値なので異様に上がったわけだ。




