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五百四十五生目 小鳥

 ツカエおばさんとハコビという少女。

 そしてプルプル震えている御者(ぎょしゃ)おじいさん。

 そんなメンツで首都までの道のりを歩んでいる。


 とりあえずハコビに何かしてくれとせがまれている……

 ハコビに対しては今までもあれこれ技を見せたりはしている。

 簡単な魔法や武技でも喜んでくれるのでこちらとしてはやりやすい。


 それじゃあ次は……


「鳥さんを出してみようか」


「本当に!?」


 私は火魔法"フレイムバード"を唱える。

 本来ならこの魔法発動後徐々に巨大化かつ高威力化しながら空を飛び的に向かっていく。

 今回はアレンジだ。


 私は神域スキルをいくつか持っている。

 そして神域に達しているものはマニュアル操作が可能。

 細かく中身を分解してその要素だけ扱えるのだ。


 今回は"分神"に該当する力を使う。

 命を込める。操作するが該当する。

 命とは言っても胎動する生命というわけではなく一時的に借り物の命を得るだけ。


 これと操作するをくっつけたあと魔法の内容にくっつける。

 借り物の……操作可能な命。

 これでコンピューター制御のついた"フレイムバード"の出来上がり。


 いつもより丹念に時間を込めて組んだ両手を開いて放つ。

 生み出された火の小鳥はパタパタと空を飛び出した。

 ちなみに魂はないからこれ自身に命令を越える動きはないが借り物の命があるためすぐに消えない。


 軽く頭上を飛び回って小鳥のまま鳥車の窓と並走しだす。


「ひえー! 火が飛んでるー!!」


「おっとっと、どうしたんだい、慌てることはないですじゃ」


 鳥車の前から声が聞こえてくる。

 鳥車を引いているカルクックと御者のおじいさんだ。

 おじいさんはカルクックが何を言っているかはわからないが慌てたのを察知して機敏を手綱を握り直している。


 プルプルしているのに動きが今めちゃくちゃ早かった……


「見て! 見てツカエ見てよ! コレどうなっているの! アタクシ、習ったことない!」


「ええ……!? 今度のまたどうやって……アレは確かフレイムバードだとは思うけれどそれをベースに……」


「何をブツブツ言っているのツカエ? ほら、鳥さんがこちらにきたわよ!」


「ああ! ハコビ、知らないものに触っては!」


 ハコビの少女が火の小鳥に腕を伸ばす。

 火の小鳥はハコビの上にゆっくりと止まった。

 腕の上で羽づくろいをしている。


 火は現象なので魔力以外の重みはないし火も燃え移らない安心仕様。


「ねえねえおばさん! このこ飼いたいー!」


「うーん、残念ながらそれは難しいかな……これは私の魔法アレンジで、少しずつだけれど私から魔力を取り続けているんだ。つまり、魔力が断たれると消えちゃうー!」


「ええー!」


「ほら、わがままいってローズさんを困らせない。すみませんね」


「……あ! 魔力があったら良いんだよね? だったら、魔力の供給先って変えられないかな?」


「えーっと……少し手間がいるけれど、できるかな。けれど、供給先をハコビに変えてもずっといるのは難しいかなって……」


 理論上はできる。

 操作自体も結局は自己判断任せにするしまさしく小鳥くらいの思考と学習でよければできる。

 ……とはいえインコみたいにめちゃくちゃ賢い小鳥になったりはしないけれど。


 しかし忘れてはいけないのが行動力の存在。

 行動力は普通削られている間は復活しない。

 休まないと治らない力だ。


 なので私なら平気だがハコビに繋げ続けるのは無理だ。


「大丈夫、それならなんとかなります! ねえ、ツカエ?」


「……ええ、まあ、炎の魔石をエサ代わりにするのですね? でもそれだと……いや、この魔法、よく見ると異様に効率化されている? だとすれば計算を考え直して……」


「その通り!」


「あぁー……そんな手が」


 確かにふつうやろうとしないだけでやれる手立てだ。

 私の"フレイムバード"程度の維持消耗なら石ころのような火魔石でなんとかなるだろう。

 もちろん使い方としてはとても贅沢だが……


 ただ彼女のような明らかに他と違う感覚を持っていそうなタイプに何を言っても意味がないだろう。


「ハコビ、もし、譲ってほしいものがあるときは?」


「……はっ! その、ローズさん。もしよろしければ、この小鳥さん、お譲りいただけないでしょうか。お金の方は、なんなりと」


「いや、お金は良いんだけれど! その、本当に大丈夫? あくまで魔法だよ? 普通の小鳥さんのほうが良いと思うけれど……」


「断然! こっちのほうが! 良いです!!」


「そ、そう、それならどうぞ……」


 めちゃくちゃ鼻息を荒くして断言されたら断るすべもない。

 正式に火の小鳥はハコビのものとなった。

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