五百四十四生目 少女
私がチームメンバーから離脱したあと。
改めて今回の報酬をチェック。
まずはお金。
これはまあ……5分割なのでそれなりの額とは言えいちいちわあわあ言うほどのものではない。
得られて大きかったのはギルド信用だ。
一応世界共通の指標のランクがあるとはいえこの国で活躍できるかはまた別。
それに目の当たりにしていない相手に信用するのもまあ難しい話。
今回のは十分な戦果だろう。
オクマホもアノニマルースにくるかもだし。
あと迷宮独自の素材や洞窟にあったものたちはたくさん分け前がもらえた。
特に魔物たちの影響で変質した素材は金を出してもない場合が多く貴重。
ありがたいー。
他にもちまちま貰えたし情報も得た。
私はそれを元に次の街へ行くつもりだ。
私自身がわからなかったりただの一主観ではなんとも言いづらい情報ばかりだが……
他の面々が集めた話と私の話がアノニマルーズ本部に集積されてエリアが特定された。
私はいくつかの街を経由して……
首都に向かう。
それとは別に魔法の効率化について軽くまとめたメモも渡した。
向こうも喜んでくれたようだし。
"森の魔女"で理解する魔法の深淵ってそのままだとわりと直感的に理解ってしまうものでちゃんと言語化してニンゲン側の魔法科学ベースに照らし合わせて完成させるのって大事。
なお。
渡したメモがとんでもない情報資産を含んでいると発覚し朱の大地でものすごい貴重品として扱われ回され出すのはまだ知らぬのちの話……
私は煉民主国を旅する。
少しでも情報を稼ぐために歩きだ。
まあそこは苦にならない。
煉民主国は流れる景色も良い。
街中では炎揺らめき煙が空にのぼり。
ガラスレンガたちが壊れるその瞬間まで光り輝いている。
異国情緒溢れるとか月並みの言葉だけどすごく感じた。
そして外。
樹木資源は少なそうだけれど大地の栄養はすごく豊富で。
何が良いかって根菜類だ。
ココで取れたコンニャク芋たちは特別でコンニャクに加工して食べるとプリップリで美味しい。
何よりも食べるだけで炎のエネルギーが蓄積される。
この大陸から取れた食べ物は一時的にも炎の加護を得て継続的にとって過ごしている住人は遺伝子クラスで変化がある。
不思議な力が開花しやすかったり少なくとも火への耐性が高かったり……
無自覚に近いようだけれど子どもたちが火遊びして火傷もしないなんてことは町中の光景。
街の外ではよくそんな野菜を作っている。
後全然知らないものも実でなっていた。
小ぶりなスイカみたいなのが低木にたわわと実っていて中を割るとオレンジの果肉と緑の液体が飛び散る。
中身はなんだろう……甘いアロエ?
かおりは柑橘系にメロンが合わさっているかのようなにおいで結果から言うと甘い良さ。
めちゃくちゃおいしい。
煉民主国ではこれが名産のひとつらしくよく出る。
楽しませてもらいつつも……
道中いくつものトラブルもあった。
そのひとつは鳥車の護衛と移動をかねての時……
「いやあ、まさか冒険者でありながら、護衛ギルドの方にも属している方が、共に来てくださるとは……」
「こちらも移動しながら依頼を受けられて何よりです」
移動の時も何かの依頼を兼ねるのはよくやる手。
もったいないからね。
迷宮の依頼もメイン以外に3つくらいサブを重ねるし。
心地よい風がなびき朱竜により燃えたあとの大地がその傷跡を残しながら健やかに形成される。
何度焼かれても再度立ち上がる大地は生きるものたちにも私にも力をくれた。
何度だってやり直せると。
護衛の方はまず御者のおじいさん。
プルプル震えている。
鳥車自体は1台。
そして……
「おばさーん! また何か見せてー!」
「こら、迷惑をかけないのハコビ」
「だってツカエ、おばさんのする魔法やわざ、全部すごいんだもん! 都でも見たことないよ!」
一人は女の子でもうひとりはおばさんだ。
女の子の方は気性の荒い冒険者からクソガキとののしられそうで少し不安になるような立ち振る舞いだが……
基本的には礼儀が良い。
窓からのぞくだけで手や顔を乗り出さないあたりにそれが出ている。
おばさんはザ使用人と言った様子の人。
ツカエという名前らしい。
じゃあこの身の回りが良くて身振りもよくて年相応のはしゃぎ具合と年齢より遥かに身についた作法を感じさせるハコビという子は?
残念ながら委細詳細は伏せられている。
単なる客相手だと思って接してほしいとは聞いているけれど。




