五百三十八生目 出会
スウマとスレイカに合流できた。
女性組は冒険者なりの小洒落た格好をしている。
防具のないラフかつ夜の雰囲気に合わせたものだ。
スレイカに至っては和服ではなく洋服なので一瞬誰かと思った。
「ふたりともオシャレだねー!」
「ありがとう……」
「うい! ローズさんは最初からオシャレだし、そこまで必要ないかな?」
「うーん、だけど私は格好が少し浮くかなあ」
ふたりは自分のためのオシャレ力が結構高い。
冒険者は冒険者なりの事情で強い装備で固めていった結果オシャレを犠牲にしなくてはならないことが多くなる。
私のはともかくとして。
だからこういう場で発散するのだろう。
私もおしゃれするかなあ。
「じゃあ、先に服をみようか?」
「いや、すぐに着替えるから大丈夫!」
私の手持ちでもっとも夜のおしゃれに近いもの。
それは……空かな。
私は瞬時に脳裏に術式とイメージを走らせて次の瞬間には私の服装が変わる。
それは空に舞う美しさを切り取ったようなドレス。
青色を中心に整えられ布地は不可思議な輝きを秘めていて。
見るものがみれば多くの素材を用いて魔力をまとっているのがわかる。
なにより空系属性の能力を跳ね上げるのだ。
つまり空魔法やら時空魔法あたり。
能力的な話で言えばめっちゃ強い。
なのでこれも冒険者としての服なのだが……
おおっぴらに他人へ見せるのはこれが初だ。
黙っていればよさげな雰囲気のきれいな服にしか見えないだろう。
「「えっ!?」」
っと驚かれる間に着替え完了。
元々長いたてがみを活かして髪のようになびかせる格好。
額の目隠しはそのままに。
帽子もドレスに合わさっている。
裏では着崩れないようにとか帽子とばないようにとか複数の仕組みがあるけれど表には見せないおしゃれコーデ。
なぜここまで自信満々かといえばいつもの服屋さんが全身全霊で仕立ててくれたので文句あるはずもないありがとうございます!
「どうですか?」
「早着替え……!? それもすごいのですが……きれいな服ですね……この布、一体どれほどに深く厚く……すごい、糸が……」
「ちょっ、ちょっと! それ市販品じゃないよね!? かなり魔物や迷宮素材が練り込まれているように見えるよ!? 一体これ1着でいくらしたんだろう……」
「あはは、ふたりともありがとう!」
褒められて割とうれしい。
これでおでかけ準備完了だ。
私はふたりについていく。
「男性組は?」
「やつらなら、男連中呼んで今頃酒場でパーティー開いているよ。グフ被害者の会メンバーも集めたんだってさ」
「すごく騒がしいので……わたしたちは、ちょっとおしゃれなバーに、行こうかと……」
「それはいいですねえ」
冒険者としてどんちゃん騒ぎは……ありだ。
ただ割と酒の席で男女分かれることは多い。
ニンゲンたち流で互いに気を使わせないために。
まあ酒が入ると割と色々あるからね。
下ネタとか。恋バナとか。
あと酔ってるとあとで割とシャレにならない騒動が起きたりもするし。
もちろんチームで飲み食いしようって時もあるのでそれはその時だ。
私達は互いの民間所属ギルドチームの話を交換する。
向こうは100人近い大所帯で多数の街に渡って常に活躍しているそうだ。
すごい。
「……というわけで、ローズさんがどんどん移動するなら、わたしたちのギルド、虎阜龍に会えるはずです……」
「みんなに知らせておくから、便利に使ってねっ!」
「ええ、ぜひご縁があったら」
そんな社交辞令をかわしつつ。
私達は1つのこじゃれた店へと入っていった……
店内はこの炎ばかり焚かれる煉民主国にしてはかなり落ち着いた雰囲気の場所。
不思議な気持ちになる……
なんなんだろうこの妙にそわそわするのは。
私達は奥へと進み静かな店内に座る。
バーのマスターは少し奥で作業しているようだ。
こちらに気づいて向かってくる。
「こんばんはー、おじゃまします!」
「あの……おすすめを……」
「はい、ただいま……」
「へぇー…………ん」
私とマスターは固まる。
なぜならば。
見覚えのある角。
見覚えのある顔。
見覚えのある姿……
「「あっ」」
青い瞳は驚きに見開かれた。
蒼竜ーー!!
私と蒼竜は互いにすっ飛んでカウンターの向こう側へ行きふたりから見て物陰に。
「なんで蒼竜がここに!?」
「いや、それはこっちのセリフだよ。ローズは普段、バーになんてこないじゃないか!」
圧倒的に小声で互いにキレるしかない。
もはや引いたら負けまで有る。
詳しい話は後でするとして……
私達はふたりは無言でうなずいた。
とりあえずこの場を乗り切る……!!




