五百三十四生目 仕事
私達は街に帰ってきた。
街のしかるべき場所にグフを渡して……
依頼の報告をする。
「撃退したのですね、有難うございます! これで……依頼完了を受託しました!」
オクマホの撃破でもらえた額や品物はかなりものだった。
想定より危険だったけれど撃退できたのが良かったようだ。
報酬は分けてもらい成功に対してその場でどんちゃん騒ぎをして……
「グフさんは聞いている限り、重い刑は逃れられないでしょう。いつもは冒険者同士のいざこざは多く、ギルドとして取りまとめるたり間に入ることはやぶさかではないのですが、あくまで仕事上そうしたほうが円滑というルールやマナーであり、さらには双方言い分があります。そして冒険者である以上、互いの証言に目撃者がほぼ伴わないのです」
「それはそうですけれど……」
「しかし今回は違います。前々から勤務態度に問題ありとされていたグフさんが、警察の領分の殺人未遂があったと聞いています。こちらはあなた達にも厳重な取り調べがあったあと裁判を……ただ、かなり状況が明確なうえ、なぜか最近続々とグフさんの明確な悪評が上がってきたため、余罪を含めて追求され尽くすと思います。少なくとも、冒険者ギルドはこの件を重く見ています」
そう告げられ4人はほっとむねをなでおろした。
いきなり悪評が上がりだしたというのは。
いままで裏組織の力を……ピヤア団の力を使ってもみ消していたのだろう。
それが偶然摘発され非常にピンチへ陥ったと。
自業自得だがあっけない幕切れだ。
そしてオクマホのほうはあとでわかったことだけれど……
魔炎を薄く遠くまで伸ばすことで余計な外敵を追い払っていたらしい。
わりとあの性格なため素直ではないが根はまともだった。
レベルが高いのはわりと単純に鍛え上げがすごかった。
積極的に強者に戦いを挑んでいったわけだ。
魔物はあの2体スミゴンを出された時点でかなり後手にまわることも多いはず。
よく考えるとニンゲン側にそれらしい被害はなかった。
ただ発言から探るにいつかは魔物たちを統べる城の王……魔王になりたがっていた。
放置していたら実害もあっただろう。
本物にあわせてあげようかな。
グフの子分たちは骨折り損のくたびれ儲けでアイテムを使い帰ってきたらしい。
彼らが即逮捕されることはないが……
しばらく取り調べから解放されないだろう。
私達はそれぞれ身を清めたり治療に入った。
再集合は夜だ。
まだ解散はしないらしい。
まあドタバタしちゃってたからね。
ちゃんとした話もしたいだろう。
というわけでそれまでの時間にアノニマルースに戻り私の仕事を終らせるのだが……
「「多すぎるー!!」」
「うわっ、ローズが本当に3匹!」
我が家にいるホルヴィロスの分神体がそんな声をあげる。
ホルヴィロスが見たものは……
3体に分裂した私だった。
3体の私は"魂分・同体の奇跡"によりそれぞれ大量にあった仕事をこなしていた。
書類仕事は私ことツバイの性格が。
実際に考えてアレコレ指示しなくちゃいけないのをアインスが。
ドライは運搬や整理を。
まあみんなその場でやれること全部やっていた。
「なんでこんなにおおいのぉー!」
「いや、まさか、街のみんながやる気を出して大規模な改善計画を立てるのと、役所が大きな規模で移住を受け入れる体制を整えようとするのと、海外や自国からアノニマルース自体への興味度が指数関数的に跳ね上がり続けているのと、資産運用に乗ってきたドラーグくんとたぬ吉くんと共にやっていたらめちゃくちゃ膨れ上がって、寄付あたりに回すにしてもどこにおくか……しかも私や他の方たちじゃできないことや、単純に仕事量が多すぎることも……」
「何度聞いてもなんでこんなことになってんだー!!」
もはやドタバタ大騒ぎ。
ホルヴィロスの部下たちもなんやかんや休みが重なっているのも原因で地獄みたいな作業量があった。
まあそれこれは私達が煉民主国に突入しピヤア団摘発するためには割と大事な話も多いんだけれど……
目の前の資料に目を通す。
……月組って文字が見えた。
もう帰っていいかな。ここ家じゃん。
「やるしかないかあぁ……」
「えーっと、改めてなんだけれど、みんなローズなんだよね?」
「そうだぞ、ほとんど直接話すのはツバイだけだから、こうして"私"がホルヴィロスと会話するのはほとんど初めてだが、同時にいつも会話している間柄だから気にするな」
「なんだかんだ、わたしたちとはなしているようなものなんだよ〜、みんなではなしかけているからね〜、ただ、ツバイがわかりやすいだけでね〜!」
割とホルヴィロスは困惑しているっぽいけれど面白いからこのままにしておこうかな……




