五百三十三生目 帰還
危険な技。
それは私の脳裏に記憶がある。
ダークフレアという能力だ。
てっきり魔炎のことだと思っていたがあれに関して私の脅威ってほどでもないし……
そしてスミを媒介にした炎魔法だった。
つまりダークフレアではない。
「みんな、なにかやばいのがくる!」
おそらくみんなにとって即死級の技。
土魔法"クラッシュガード"を唱えて全員分使い捨ての鎧を得る。
オクマホは素早く私達から離れ8本の腕や口に力を集める。
嫌な予感がしてとにかく全力で防ぐ用意だけする。
多分この力は……!
『喰らうがいい、俺の最大威力! ダーク……フレアッ!』
凄まじい勢いでビームが放たれる。
それは私達の前で止まって集積し……
一気に光の塊となる。
光の塊はどんどん収縮して周囲の光すら吸い込み始める……!?
まるで闇が生まれるような。
「離れてー!」
スウマの叫びでみんな正気に戻る。
思いっきり背中を向けて……
跳んだ。
同時に収縮した光が収まり突如爆発が起こる。
それは奇妙な爆発。
鈍く低い音が響いた後目視できるような速度で爆発が迫る。
爆発は世界の色を無くしていく。
まるで影の世界みたいに。
地形を破壊せず空気の破裂と色だけが変わり。
私達を飲み込んでいく……
「「うわああぁぁ!!」」
声すらかき消えていく。
やがて爆発すら景色が消えていき……
ハッとすぐに気がつく。
今一瞬私の意識がとんでいた。
これは……全身が痛い。
私達の前にゼロエネミーが大きな盾として変化し覆っていたにもかかわらずこんなにダメージが……
みんなも結構苦しんでいる。
どうやら最大の衝撃波は"クラッシュガード"で防げたけれどそのあとの余波にやられたらしい。
やれるかなと瞬時に判断して土魔法"ミノライゼーション"をグフに飛ばした。
身体を瞬時に石化させる魔法……
本来は自分に使って大技を無効化して受けるためのものだ。
しかし一応敵にも私ならやれる。
……抵抗されなければ。
今グフはノビているので抵抗も何もなかった。
石になって平気だったようだ。
石ごと砕くような大変な攻撃ならどうしようかと思ったが……
見ていた限り地形じゃなくて生体を狙って殺しにきていた。
そういったタイプの危険な爆発だったんだろう。
「みんな、とにかく回復して立て直そう……」
「ゲホッ、ケホッ……あ、あいつはどこに?」
私とスウマが回復魔法を放ちみんなが苦しみ悶える。
全員生きているようだ。
まあ逃げ切れたのはスウマの判断が早いからだ。
あたりは煙がひどい。
土煙じゃなくてスミのようだ。
スミのせいか相手の位置がにおいでぜんぜんわからない……
慎重に奥へ奥へと進んでいく。
スミは黒い霧のように。
手探りで進み……
やがて壁が見えてきた。
そこは壁がひび割れて何かが当たった跡。
それに……
「うえあうあぁ〜……扱い、きれない……」
下側にある影はオクマホがノビた姿だった。
オクマホの技は自爆技だった。
正確に言えば大海で使うもの。
大海で使う時周囲にスミをまいて隠れられつつ反動で一気に戦線を離脱するという凄まじい技。
派手な予備動作も光の収縮も目くらましのため。
本来は逃げ技なのに考え無し……というより追い詰められて放ってしまったようだ。
「それじゃあ、オクマホの処理は任せて大丈夫なんだね?」
「うん。私がオクマホを送るのに良さそうな場所を知っているから、ワープさせたよ」
まあアノニマルースのことなんだけれど。
向こうには話を通してあるしオクマホには"無敵"を通してある。
多少は一悶着あるだろうがそこはいつもどおりだろう。
その先彼がどうするか……アノニマルースから出るのも含めて彼次第だ。
グフのほうは……どうなるかなぁ。
オオルは生傷の痛みを抑えつつ土埃を払いグフの元へと向かう。
「どっちかっていうとこいつが問題だな……オクマホを討伐したって証はいくつか持って帰れるし、グフを連れて帰る方の気が重いよ……アイテム使って帰っても、まちなかを背負ってあるきたくねぇー」
それはまあ……そうか。
グフを倒したはいいものの今でも完全にノビている。
縛り付けて"無敵"通してと最低限のことはしておいた。
「じゃあ、帰りは私の魔法ワープで行きましょうか。その前に採取できるものはしていく方針で……」
「「ええっ!?」」
みんなから驚きの声が飛び交いアレコレと常識外だのありえないだのやっぱすごいだの言葉が飛び交う。
忘れがちだけど転送魔法系って人数や距離でだいぶ変わるんだよね。
迷宮から脱出するためのアイテムがあるからそれを使うけれど街での移動が大変だからね。




