五百二十七生目 三巴
彼らに仕組んである行動パターンは少ない。
魔炎を吐く。
全身を使った近接攻撃。
爪から放つ衝撃波のみだ。
ほかも色々様子見したがあとは行動パターンにはなく指示されないとだめらしい。
今私は片方に絞って剣ゼロエネミーを振るう。
切り裂かれても隣のやつが助けることは賢くないのと巨体なのでほぼしてこない。
もう目の前の相手はかなり削れている。
ならばもう3連"Eスピア"!
巨大な土槍が敵を穿つ。
「グオオォォォ……」
1体倒せた。
悲しげな咆哮を上げ倒れ伏す。
そして単なる墨へと変わっていった。
後1体もじわじわと削れているせいで耐久力が7割だ。
次の魔法をストックしつつ立ち回る。
『な!? 1体の臣下から反応が消えた!? 何が起きている! ええい、どけっ!』
向こうは向こうでうまく妨害してくれているらしい。
この調子ならば倒し切るのに時間もかからない。
クルクルと回りながら敵の爪を避けて跳ぶ。
向こうに早く合流したいから時間はかけたくないが……
1体になったから狭さの制限が少し開放されている。
ちなみにダメージをあまり受けず楽勝なのはオクマホがここにいないからにすぎない。
ゴーレムの主がいれば連携で知能部分が跳ね上がる。
あの時即座にスウマが撤退判断したのは正解だった。
もし2頭が器用に小柄な相手を追い詰めるように爪を振り窮地に追い込んで魔炎を仕掛け……
防ぐようにした相手を出待ちして乱打したらと思うとゾッとする。
今のスミゴンがやるのはひたすらに殴って様子を見て殴って様子を見て魔炎を吐くだけだ。
後はひたすらに耐えるだけなので私単体でも倒せる。
それっ! 土魔法"Eスピア"!
こちらも魔法を放って確実に倒す。
"ヒーリング"で魔法枠を潰さないで済むように私自身の立ち回りは慎重にする。
土槍が相手の全身を穿ち暴れられて砕かれる。
3割という致命打をこんなに楽な方法で与えられるのはそうそうないからね。
残り4割!
私はスミゴンがぐっと首を持ち上げた瞬間に接近。
「やッ!」
素早く剣をふるい足元に3連撃。
脚を動かして蹴飛ばそうとしてきたので転がり避けて……
吐かれる"魔炎"に対して上空へと跳んだ。
さっきみたいに全方位埋め尽くす炎はできないので下だけを這う。
空を舞って壁にくっつき走る。
すれ違いざまに跳んで頭を武技"乱れ突き"!
スミゴンの頭は硬いが連続で突けば外側を切り刻める。
あくまでスミなため頭が急所ってわけでもないけれど。
それでも手数を多くしたおかげで今の一連で1割ほど減った。
さすが水棲特効だ。
背後まで行き振り返るまでに距離を取り……
よし。
振り向き際に土魔法"Eスピア"!
3連で放ちスミゴンへ無情にも刺さる。
そして2体目のこいつも倒れた……
「よし!」
すごく安定して戦えた。
とりあえず自分に"ヒーリング"をして……
『ごめん! ちょっともう抑えきれない! 問題が起きて……というか、グフが来て!』
『ええっ!?』
繋ぎっぱなししていた念話から声が。
スウマからの緊急連絡だった。
私は急いでオクマホのところに合流したら。
そうしたら……
なぜか三つ巴でたたかっていた。
「グフー! オマエ、冒険者資格剥奪もんだぞ!」
「なにいってんだ今更ァ! 捕まっていたら、どちらにせよだろ! ココでてめえらを口封じすんだよ!」
『何がなんだかわからんがチャンスうごっ!?』
「そしてテメェも倒して、俺の手柄だ……!」
あのグフが縄を切って暴れていた。
うわ……縄抜けの技術を持っていたか。
それにあくまで緊急的にしばっただけだ。
トゲなしイバラを無制限に出すわけにもいかず丁寧に巻く時間もなかった。
私の武技はそんなに低くないレベルのはずだから大丈夫と思っていたのに……
多分……そうか!
私が彼を落とした時。
グフは痛がって器用に転がっていた。
あれは演技か!
手頃な石を見つけて拾い隠れてカットしていたんだ。
妙に静かだと思ったら……
なんという無駄にやり手。
みんなは私が駆けつけたことに気づきオクマホやグフから距離を取る。
「ローズさん! 助かるよ!」
「みんな、怪我は!?」
「何とかなっているけれどぉ、少しリソースが厳しいかなぁ……」
「悔しいけど、力が結構均等だったんだ。けれどこれなら……!」
ワンチが話す通り怪我そのものはみんな回復された後がある。
ただ目に見えて疲労してきている。
回復と補助へ常に気を回しているスウマは顕著だ。
よし……オクマホはともかくグフを逃した責任はとろう。




