百五十七生目 目標
インカとふたり干しフルーツをつまみながら夜空を見上げる。
ちなみに酔わないやつだ。
酔うやつは厳重封印中。
「それでわざわざこうして話って?」
「まあそう改まって話すことなんてないんだけどな。ただ本当に、だらだらとした時間過ごしたくて。
ほら昔はもっとみんなでゆったりしていて……いや妹はいつも忙しそうにしていたっけ?」
うんまあわりと生き残るために鍛えるのに必死だったからね。
私は過去を……とは言っても去年のことを懐かしみながら話を続ける。
「まあたまにはこういうのも良いかもね」
「群れから出て、短い間にも大変だったけれどたまにはね! 大変といえばあの氷のような魔物と戦った時……」
語らい笑いあいそして静かに干しフルーツをかじる。
そんな普段の喧騒から離れた時間が私にもたらされている。
インカはほぼ同時に産まれた兄だけれど私とは違って体格は立派になり随分とたくましくなった。
けれど何時までも兄は兄のままで今も私に笑いかける。
いつも明るく積極的でとりあえずやってぶつかる精神は見習うところがある。
私は基本危険にはビビる。
負けずぎらいで私に何度も挑みそしてだいたい負けてきた。
狩りはインカが最も鮮やかでその筋肉からは想像がつかないほど繊細に一瞬で狩りを行う。
どんぐり集めなども得意だし食分野に関しては抜きん出ている。
実は群れの食糧確保で1番集めてくるのはインカだ。
魔物としては目立った点はないかもしれないが変わり者ぞろいのこの群れではインカがもっとも魔物として自然としてまっとうだと思う。
そこに私の与えた影響でやたら鍛えるもんだから野生生物ながらも筋トレをかかさない。
そんなインカが話を続ける最中にどこか遠くを見つめだす。
「……なあ、俺ってみんなと違って何か良いとこあるのかな?」
「うん?」
だからそれは意外な疑問だった。
「俺は……幼い頃からずっと妹に負けてきた。弟は芸術の才能を見つけ魔法もうまい。ニンゲンのユウレンも従えている。妹はいつの間にかこんなに多くを従えてどんどんと強くなっていく。正直あの戦いを見て、進化してたくましく硬く重く強くふるった力を見て、震えたよ。
すごく喜んで驚いて興奮して……それで俺はまるでダメだって、そう突きつけられたようだった。
あんな真っ直ぐな強さは憧れそのもので……それが妹だったのがどうしても悔しかった。俺もああなって戦いたかった」
「それは……」
なんて言ってあげるべきか。
たまたまだよ、なんて残酷なことは言えない。
それはたまたまどうにかなった側のエゴだ。
「そりゃあ妹はちょっと特別だし、強くなるのがわかるほどにいつも動いていた。だけどさ、兄弟として一緒に産まれたからにはきっと俺にもやれるって信じてるんだ。うん、信じてる。
だからまぁ、こんなこと言ってる間にも俺が出来る事をやっていつか妹にも勝てば良いんだよな! 妹ばっかりに重荷背負わせるわけにはいかないから、どんどん俺がやれることやれば良いんだな!」
「うん、狩りはインカ兄さんが1番うまいしね」
なんだか私が下手に何か言う前に自力解決してしまったようだ。
悩みは誰かに聞いてもらえるだけでなんとかなると聞いたことはあるが、ここまですんなり行くパターンもあるか。
いやそれともこれこそがインカの力か。
「悩みとか話なら何時でも私で良ければ聞くからね」
「ああ! 悪いね!」
そう言ってインカは笑った。
ああそうだ。
「グルーミングしてあげようか? 昔みたいに」
「ええ? 自分で出来るって」
「まあたまにはいいから」
私は舌を器用に使ってインカを毛づくろいしてあげた。
グルーミングだ。
小さい頃はよくしてあげたっけか。
「ようし俺も!」
「ひゃあくすぐったい!」
そうしたらやってる最中にインカにお返しをくらった。
こうしているとあの小さいころに戻ったようだ。
正直不安と恐怖でいっぱいだったあのころ。
それでも何とかやってこれたのはこうしてきょうだいがいたからだ。
存分に互いを丁寧にキレイにしてひと息つく。
うん、私はひとりじゃない。
干しフルーツをかじったらインカの味が残っていた。
それでなんだかおかしくなって。
私はとにかく今はゆっくり休むことにした。
未来は不安だらけだが。
それでも未来を考えて今を潰されては意味がない。
おはよーございます、ぐっすり眠れました。
色々とバトルを終えたしステータスをチェックしておこう。
レベルが15から20になりました!
これはまあ大行事終えたり何度も戦闘繰り返したりみんなが戦闘や狩りをした分が入っているからだろう。
"率いる者"でみんなから経験値を一部コピーしてもらえたり"指導者"で私の経験値を一部コピーして渡したりしていて巡る経験値量がぐんぐん増している。
これはかなりありがたい。